ストレス社会を生き抜くためのメンタルヘルスケア③

ストレス社会を生き抜くのに必須なのが,メンタルヘルスケアです。ということで,メンタルヘルスケアの基礎についてまとめておきます。

ストレスを受け止め,対処する力

 これまで,ストレスとは何か?(ストレス社会を生き抜くためのメンタルヘルスケア①)ストレスにさらされるとどうなるのか?(ストレス社会を生き抜くためのメンタルヘルスケア②)を取上げました。

 このシリーズの最後は,私たちは,ストレスにどう対処すればいいのか?について取上げます。

ハーディネス

 大きなストレスにさらされても,健康を保てる性格特性をハーディネスといいます。ストレスをソフトテニスのボールに例えましたが,ボールそのものが丈夫で,押してもへこまないのが,ハーディネスです。ハーディネスには,さらに3つの下位概念が存在します。それぞれの(英語の)頭文字をとって3Cといいます。

①コミットメント

 周囲の出来事を自分の人生や課題に深く関与しているという感覚があり,有意義と感じ,関心を持てる。

②コントロール

 自分の行動が物事の結果に良い影響を及ぼすと信じ,積極的に働きかける。

③チャレンジ

 人生の変化やハプニングを挑戦や成長の機会ととらえる。

レジリエンス

 過大な負荷,逆境,困難にさらされても回復できる力をレジリエンスといいます。これも,ボールで例えると,ボールの弾力性やしなやかさがレジリエンスです。レジリエンスを育む要素として,次のものが挙げられます。

①自己肯定感

 ありのままの自分に価値があると感じる。

②自己効力感

 課題に直面した時,自分なら解決できるという自信

③感情コントロール

 その時々の状況に応じて,自分の感情・思考・行動を適切に制御する。

④人間関係

 他者とのつながり,周囲と良い人間関係の構築

⑤楽観性

 今は,今の状況が最善である,未来は,より良いものにできると考えられる。

ストレス状況に対処し,健康をつくる力

 突然ですが,以下の3つの人生に関する考え方について,「よくあてはまる」7~「まったくあてはまらない」1までの中から,1つ選んでみてください。

  よくあてはまる→→→→→まったくあてはまらない
A私は日常生じる困難や問題の解決を見つけることができる       7  6   5   4   3   2   1
B私は人生で生じる困難や問題は向き合い取り組む価値があると思う
C私は日常生じる困難や問題を理解し予測することができる

 ABCそれぞれの数字を足した合計が点数になります。点数が高ければ,ストレスに対処できる力があるということです。

SOC-首尾一貫感覚

 上記のテストは,SOC(Sense of Coherence),日本語で首尾一貫感覚があるか?を判断する簡単なものです。SOCとは,自分を取り巻く世界は首尾一貫しているという感覚のことです。ストレスに対処し,心身の健康を守り,メンタルヘルスの悪化を防ぎ,成長の糧にできうるとされています。SOCには,①把握可能性,②処理可能性,③有意味感の3つの要素があります。

①把握可能性→わかる感

 置かれた状況を理解し,今後の状況を予測できる能力です。上記のテストのCに該当します。把握可能性が低いと,漠然としたモヤモヤの中,何が何だかわからない状態に陥ってしまいます。

 把握可能性を高めるには,現状を把握して,先の見通しを立てることが重要です。仮に,わからなくても,自分を責める必要はありません。無知の知という言葉があるように,わかることと,わからないことが,わかるだけでもいいのです。そうすることで,自分の状況や立ち位置を再確認できます。

②処理可能性→できる感

 困難でも何とかやっていけると感じることのできる能力です。上記のテストのAに該当します。できる感は,自分ひとりでも,人に頼ってもでも,どちらでもかまいません。処理可能性が低いと,ストレスに陥った時,どうしていいかかわらず,自分は何もできないという自己否定につながります。

 処理可能性を高めるには,対処できるストレスと対処できないストレスの両方を経験することが重要です。ストレスを切り抜けたときは,どうやって切り抜けたのか?を思い出してください。また,自分を助けてくれる人や資源はありませんか?全てを一人で何とかする必要はありません。追い込まれる前に,誰かに相談しましょう。

③有意味感→やるぞ感

 ストレスになることも自分の成長だと感じたり,日々の営みにやりがいを感じることができる能力です。上記のテストのにBに該当します。有意味感が低いと,こんなに辛いのに,なぜ,頑張らないといけないのか?という負担感が出て,自暴自棄になり,生活や人生に希望が持てなくなります。

 有意味感を高めるには,体験する日々の生活や身の回りが自分に与える影響に目を向けてみてください。また,ストレスに対処し,生活習慣を変えることに,どんな良いことがあるのかを考えてみましょう。そして,自分のしたことが良い結果となった小さな成功体験を積み重ねていくことが重要です。

まとめ

 最後に,これまでのメンタルヘルスケアの記事をまとめておきます。

 ストレスとは,心身に何らかの負荷がかかった状態です。様々なストレッサーが存在し,身体的・心理的・行動的反応が生じます。自分にとって,何がストレッサーになって,どのような反応が生じるか?を把握することが重要です。

 ストレッサーが加わると,①警告反応期→抵抗期→疲憊期という段階を経ます。早期に対処することで,回復し健康を取り戻せます。ムリをし続けると,うつ病等の精神疾患を発症し,最悪,死に至ることがあります。

 うつ病の主な症状や日々の暮らしの中で表面化しやすいサインを把握しておきましょう。一見すると,うつ病の症状とはわからない身体的症状や日内変動にも注意が必要です。

 人間は,ストレスに対して,対処する力や回復力を持っています。現状を把握し,成功体験を思い出し,自分が頼れる人・利用できる資源を活用し,意義ややりがいを見いだせるかがポイントです。

 うつ病の症状等,メンタルヘルスに危険信号が点滅している場合は,精神科等の専門機関を活用するという選択肢を思い出してください。

精神科の探し方

 多くの人は,精神科になじみがなく,かかりつけ医が存在しないと思います。そんな中,精神科をどうやって探したらいいのでしょうか?

 ①保健所,②市町村の保険センター,③精神保健福祉センターに相談したり,医療機関の情報を提供してもらうことができます。また,④都道府県の医師会や⑤精神科病院協会のWebサイトから検索することもできます。

 日本精神神経学会の精神科医療機関受診についてQ&Aは,規模別の病院の特徴等がまとめられていて,参考になります。

♪Mr.Children「未来」(アルバム:I ♥ U収録)

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