最近,交渉学の基礎を学ぶ機会があり,個人的な備忘録も兼ねて,何回かに分けて交渉学について書いてるシリーズの第2回目です。
交渉学の3つのポイント
交渉学を学んだ①で,交渉学にとって重要なポイントは,①論理的に交渉する,②効果的な事前準備,③問題の創造的解決を目指すことの3つだと書きました。今回は,3つの内の①論理的に交渉するについて書いていきます。
論理的に交渉する
何の交渉をしてるのかわかりませんが,ノタリの交渉は,いくつか,間違ったことをやってしまっています。何が問題なんでしょうか?
価格なんですが,15%ディスカウントできませんか?
えっ~いきなりディスカウント?なんで?
まぁ,でも,この会社,他にもプロジェクト抱えてるし,ここでディスカウントして恩を売っとけば,うちの別の部署が交渉する際,融通してくれるよネ。
じゃぁ,思い切って10%のディスカウントはいかがでしょうか?
うちの数字に近い方が,御社との関係も良くなるんじゃないっすか?
上記の交渉の問題点は?
何の交渉をしてるのかわかりませんが,ノタリの交渉には,以下の3つの問題点があります。
①ディスカウントするか否かの発想に陥っている→二分法の罠
②自分の都合のいい理屈でディスカウントに応じている→演繹法,帰納法ができてない
③相手から情報を引出していない→質問の重要性
二分法の罠
二分法の罠とは,簡単にいうと,二者択一のどちらかを選べと迫られると,どっちかを選択しないといけないと思い込んでしまうことです。自ら選択肢を狭めてしまい,思考停止状態に陥っているのです。
二分法の罠に陥らないためには,常に,yes・no以外にも選択肢はあるんだと考えることです。そして,yesの場合,noの場合,それぞれの選択をすると,どうなるのか?を考えることです。
逆に言うと,交渉の場で,答える範囲を狭めていくのは,有効な罠になりえます。というのも,我々は,交渉を始める時点ですでに合意バイアスに陥っているからです。
合意バイアス
そもそも,人は,断ることができないので最終的にはyesと言ってしまいがちです。そして,合意・不合意のイメージは,下記のように,圧倒的に不合意のイメージが悪すぎるので,そもそも,合意しなきゃいけないと思い込んでいるのです。
合意 | 不合意 | |
その後の人間関係 | 友好的 | 敵対的 |
交渉の評価 | 成功 | 失敗 |
交渉担当者のイメージ | 優秀 | 交渉能力なし |
演繹法
演繹法とは,ルールを事実に当てはめて結論と出すという推論方法です。法律でよくやってる法的三段論法も演繹法の一種といえます。
たとえば,大前提として「日本では結婚するには18歳以上でなければならない」(民法731条)というルールがあります。
で,Aさんは,25歳だという事実(小前提)があります。
そうすると,Aさんは,結婚できるという結論を導くことができます。
演繹法で重要なのは,ルールの根拠です。ルールが間違ってると,導かれた結論も間違ったものになります。ノタリは,「ディスカウントに応じれば,他部署の契約で融通してくれる」と思い込んでますが,根拠は何もないのです。
帰納法
帰納法は,複数の事実を関連付けて,共通項を導き,抽象化してルール(一般論)を導く推論法です。帰納法を行う場合,安易に一般化していないか?に注意する必要があります。
たとえば,①電車で大声で話している若者がいる,②電車で化粧している若者がいる,③学校でいじめが深刻という新聞記事を読んだという,3つの事実だけで,若者は品位が低下しモラルを欠いているという結論を導くのは,雑すぎます。
サンプルが少なくないか?拡大解釈してないか?都合のいい結論を導いていないか?に注意しつつ,反証も探してみましょう。
質問の重要性
論理的思考の大前提は,疑問を放置しないことです。帰納法を実践するにしても推論のための材料を集める必要があります。そして,交渉の現場で唯一,自分の論理を裏付ける存在では,目の前にいる交渉相手です。
したがって,疑問を放置せずに交渉相手に質問することが重要です。ノタリも「なんでディスカウント?」って疑問に思ったにもかかわらず,放置してしまっているのです。
交渉相手に質問し,相手の論理が何か?を聞き出すことができれば,いいのですが,人は質問されるのはイヤなんですね。なので,ド直球に聞いても答えてくれないことが多いでしょう。そうすると,コミュニケーションを取りながら,聞き出していくほかありません。つまり,交渉がうまい人というのは,コミュニケーション力が高く,聞き上手な人だということがいえます。
♪Mr.Children「タガタメ」(アルバム:シフクノオト収録)