今やSGDsという言葉を聞かない日はないというくらい浸透したSDGs,しかし,実際,SDGsを経営に活かせるのでしょうか?
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SDGsを経営に活かせるか?
SDGsという言葉を聞かない日はないんじゃないかというくらい,誰彼構わず,SDGsと言っています。企業の経営者もこれ見よがしにSDGsのバッジをスーツの襟元に付けています。
じゃぁ,実際,SDGsは経営に活かせるんだろうか?そんなことを考えたことはないでしょうか?ということで,SDGsを経営に活かせるか?を考えてみようと思います。今回もESG投資についてです。
ESG投資を理解する
ESG投資を理解するためには、受託者責任のあり方が、この30年で180度変わったことを押さえておく必要があります。受託者責任とは、ざっくり言うと、投資家が資産家から金を預かった場合の責任のことです。
受託者責任の転換
1990年代は、企業のCSR(企業の社会的責任)対応が進み、CSR評価に基づく社会的責任投資(SRI)を行う機関投資家が現れました。その結果、社会的な目的のために投資パフォーマンスを犠牲にするのは、受託者責任に反するのでは?という議論がなされました。
その後、議論が進み、SRIは受託者責任違反ではないとアメリカ・イギリスの当局が認め、2015年には、ESGの適切な考慮こそが、受託者責任の重要事項とされるに至りました。
国連がビジネスにすり寄る
問題は、なぜ、受託者責任がこのように転換したのか?ということです。気候変動と人権に関して、国連がビジネスにすり寄り始めた時期と一致すると言われています。要は、国連が、気候変動と人権の問題を解決するには、ビジネス界を巻き込まないとダメだと模索し始めたということです。
ESG投資の流れ
ESG投資の流れを決定しているのは、投資家なのでしょうか?実は、そうではありません。ESG投資の流れは、概ね、以下のようになっています。
①NGO・政府国際機関・学術界→②世界的に基準作りをしている組織→③資産家・アセットオーナー→④投資家→⑤企業→⑥消費者
また、⑥消費者から①NGO・政府国際機関・学術界に戻る流れも考えられます。
②世界的に基準作りをしている組織は、半分共感・半分カネくらいの感覚なんだろうと思います。ここに、アメリカ・中国・EUが参戦しているという状況です。
プラスサム資本主義へ
人類の発展に伴い資本主義は進化してきました。ESG投資が目指すのは、プラスサム資本主義です。
近代以前
完全な弱肉強食の世界、強いものがすべてを手に入れることができる。
初期の資本主義
一定のルールはあるが、基本的に独占と搾取が許される資本主義
これに、反対する人たちが共産主義を目指した。
ゼロサム資本主義
直接に他人の権利の侵害や自然環境の破壊をしなければ、経済的に強い者が儲けることが許される資本主義
これが、現在の資本主義ということになります。
ESG投資が目指す資本主義
直接的はもちろん、間接的にでも他人の権利の侵害や自然環境の破壊を行う者が、儲けることを許さない資本主義
プラスサム資本主義
他人の権利・利益を大きくし、自然環境を改善する者のみに儲けることを許す資本主義
環境と経済を両立させる資本主義
現在の我々の世界は、究極的には、自分さえ生き残ればいい世界です。ESG投資で目指す世界は、他人に貢献して初めて自己実現を図ることができる世界です。
ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)
2011年に、国連でビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)が全会一致で承認されました。1980年に国連事件理事会で議論を始めたのが、30年にわたって、議論されてきました。
企業の責任が認められる範囲
ビジネスと人権に関する指導原則によって、企業の責任が認められる範囲は、自社が関わっていない部分も含めてすべてです。
①原材料の調達(農家)→②商品の製造・加工(工場労働者)→③商品の仕入れ→④商品の販売→⑤商品の使用(消費者)→⑥商品の廃棄(消費者・産廃処理業者)
以上の流れの内、商品を販売する企業が関与しているのは、③商品を仕入れて、④販売する過程のみです。しかし、商品の原材料の生産から廃棄まですべての段階において、企業の責任が認められるのです。
新疆ウイグル問題
新疆ウイグル自治区における人権問題は、まさに、ビジネスと人権に関する問題を如実に表しています。企業は、ビジネスか人権かの二者択一を迫られています。
多くのアパレルが新疆綿を使っているかどうか立場を表明しています。一方で、多くのグローバルカンパニーは、政治的立場を明らかにすることで中国市場を失うことをおそれていて、難しい選択を迫られています。
TCFD
今回の最後に、TCFDに少しだけ触れておきます。TCFDを日本語にすると、気候関連財務情報開示タスクフォースのことで、金融安定理事会(FSB)により設置され、企業に対して、気候変動がもたらすリスクと機会の財務的影響を把握して、開示することを提言しています。
TCFDの提言内容は、ESG全般に活用することができます。TCFDの「効果的な開示のための7原則」と「奨励される開示内容11項目」は、包括的な内容で、CDP・GRI・SASB等の基準に適合しています。企業のレジリエンスを高め、変化に対応できる能力を評価できる設計になっています。TNFDなど他の非財務情報開示の恒久的な枠組みとして活用されることが見込まれています。
TCFDの具体的な提言までは紹介しませんが、TCFDも自社だけでなく、サプライチェーン全体での取組みが不可欠という立場です。たとえば、CO2の削減でいうと、以下のように、Scope3も削減しないとダメなわけです。
Scope1:燃料を直接燃焼させることによる排出
Scope2:燃料を燃やすことで得られる電気を使用することによる排出
Scope1と2は、自社で削減することが可能です。Scope1と2だけでは企業活動はできません。たとえば、従業員が出勤・出張する際に利用する交通機関から排出されます。原材料の調達や輸送・配送による排出もあります。また、製品の使用や廃棄による排出もあります。これらは、Scope3・サプライチェーン排出なわけですが、自社の対応だけで削減することは困難です。
SDGs思考
SDGsをビジネスにどう生かすのか?SDGsの経営への紐づけやSDGsを実現するための思考という話しは、「SDGs思考」という本に詳しく書かれています。著者の田瀬和夫氏は、外務省出身で国連の職員でもあった方です。2022年4月に続編も刊行されました。
1冊目の「SDGs思考」には、購入者限定特典で著者のセミナー動画を視聴できます。本とセミナー動画で、SDGsの本質やビジネスにどう活かすのか?を理解することが可能です。
♪Mr.Children「未完」(アルバム:REFLECTION {Naked}収録)