今やSGDsという言葉を聞かない日はないというくらい浸透したSDGs,しかし,実際,SDGsを経営に活かせるのでしょうか?
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SDGsを経営に活かせるか?
SDGsという言葉を聞かない日はないんじゃないかというくらい,誰彼構わず,SDGsと言っています。企業の経営者もこれ見よがしにSDGsのバッジをスーツの襟元に付けています。
じゃぁ,実際,SDGsは経営に活かせるんだろうか?そんなことを考えたことはないでしょうか?ということで,SDGsを経営に活かせるか?を考えてみようと思います。今回は、ESG情報の開示とコーポレート・ガバナンスを取上げます。
ESG情報の開示基準
現在、ESG情報の開示基準には、国内外で様々なものがあります。そのため、現場では混乱が生じていたりもします。以下、国内・海外の主な開示基準をまとめておきます。
国内
国内の開示基準は、以下の4つを挙げることができます。
名称 | 開示情報 | 特徴 |
価値協創ガイダンス | 財務・ESG全般 | 経産省が主導して作成、投資家に伝えるべき情報を体系的・統合的に整理した手引き |
環境報告ガイドライン | 気候変動 | 1997年に策定、歴史が長く環境情報開示に影響 |
有価証券報告書 | 財務・ESG全般 | 日本における代表的な開示規制、近時、非財務情報の充実が図られている |
コーポレート・ガバナンスに関する報告書 | ガバナンス | 日本におけるコーポレート・ガバナンスの代表的な開示規制 |
海外(グローバル)
海外というか、グローバルスタンダードとしては、以下のものを挙げることができます。
名称 | 開示情報 | 特徴 |
国際統合報告フレームワーク | 財務・ESG全般 | 多くの企業で採用、企業の財務情報・非財務情報を統合的に報告する新形態を創出 |
GRIスタンダード | ESG全般 | 2000年初版公表、世界的に最も歴史の古いESG情報開示基準 |
SASBスタンダード | ESG全般 | 2018年公表の新しいスタンダードとして注目、77の産業別に具体的な開示項目と指標を示す |
TCFD最終報告書 | 気候変動 | 気候変動関連の財務情報に特化、主要な年次報告書等での開示を提言 |
double materiality
NFRDは、欧州委員会が実施ていている企業の非財務情報の開示指令です。2021年4月21日に改定されましたが、改定に際し、パブリックコメントを募集しました。
その際、SASB財団のCEOが、EUのdouble materiatityを指示することを自身のブログで表明しました。double materiatityとは、①自社の対応が社会に与える影響と②持続可能性が自社の財務に与える影響の両方を開示すべきという考えです。
どうやって、非財務を財務戦略化するか?
事業について、①自社の対応が社会と地球に与える影響と②その課題が自社の財務に与える影響の関係を見てましょう。
①の例として、たとえば、会社として、ウクライナから避難してきた難民を支援することを決めたとします。社会的に意義のあることですが、それ自体は、儲かりません。したがって、社会的なインパクトと会社の財務の両方を向上させる必要があります。少し具体的に言うと、儲かるビジネスモデルで、ポートフォリオ上の比率を上げる必要があります。
②の例として、たとえば、CO2を排出するガソリン車を販売しているとします。地球温暖化に影響するので、社会的にマイナスですが、ビジネスとしては儲かります。いかにしてガソリン車の販売から脱却していくのか?が自社の課題になります。
このように、両者の関係は、比較的わかりやすく、どのように、非財務情報を財務戦略化していくのか?も明白です。
ESG課題
ESG課題については、非財務課題と財務の因果関係が理解できていないと、短期的なコスト程度の認識で取組みが行われてしまいます。
たとえば、脱炭素、人権への取組、女性の活用の3つで考えてみましょう。非財務課題と財務の因果関係が理解できていない場合、脱炭素は単なるコストとして認識されます。人権への取組と女性の活用は、コンプライアンスの一環と認識されます。
非財務課題と財務の因果関係が理解でき、さらに、時間軸・中長期的機会とリスクを勘案すると、上記の認識は一変します。脱炭素は、将来の大きな機会ととらえることができます。人権への取組は、人権侵害が会社の存続に関わる問題だと認識できます。女性の活用も中長期的に多様性は利益に直結すると認識できるのです。
持続性マテリアルの財務化
2020年9月、SASBとIIRCなどが共同で文書を出しました。その文書の中で、Dynamic Materialityを導入しました。
①原材料費や利益率などすでに財務情報化されているもの、②TCFDなど現在、財務情報化が進んでいるもの、③これから財務情報化されうるものの3つに情報を分けています。
③には、生物多様性や人権などが位置付けられます。
CSRD
前述のとおり、2021年4月21日、欧州委員会は、NFRDを改定し、CSRDを公表しました。CSRDは、すべての上場企業と大企業にサスティナビリティに関する財務情報をマネジメント報告(有価証券報告書みたいなもの)に記載し、開示することを義務化しています。企業は、double materiatityを開示することを義務付けられます。
環境
環境分野では、①気候変動の緩和、②気候変動への適応、③水資源・海資源、④資源利用と循環型経済、⑤汚染、⑥生物多様性と生態系に関する情報開示が求められます。
社会
社会分野では、①同一労働同一賃金などの平等な機会、②ワークライフバランス等の労働条件、③人権の尊重に関する情報開示が求められます。
ガバナンス
ガバナンス分野では、①マネジメント層の役割、②企業倫理・企業文化、③ロビー活動等の政治的関与、④取引先との関係、⑤内部統制・リスク管理に関する情報開示が求められます。
あらゆる非財務情報の財務情報化
現在、世界は、あらゆる非財務情報を財務情報化するという大きな流れが、ESG投資のルール形成によって作られています。気候変動、生物多様性、人権や女性活用といったこれまで測られてこなかった人類にとって重要な価値を財務価値化するわけです。
つまり、今後、これらの財務価値化されたものと従来からの財務価値を合わせたものが、新しい企業の価値ということになります。
SDGs思考
SDGsをビジネスにどう生かすのか?SDGsの経営への紐づけやSDGsを実現するための思考という話しは、「SDGs思考」という本に詳しく書かれています。著者の田瀬和夫氏は、外務省出身で国連の職員でもあった方です。2022年4月に続編も刊行されました。
1冊目の「SDGs思考」には、購入者限定特典で著者のセミナー動画を視聴できます。本とセミナー動画で、SDGsの本質やビジネスにどう活かすのか?を理解することが可能です。
♪Mr.Children「こんな風にひどく蒸し暑い日」(アルバム:B-SIDE 収録)