多聴・多読は意味がない?合理的に英語を学ぶ-英語独習法(岩波新書)-

本屋で見かけた今,話題の新書である英語独習法(岩波新書)を紹介します。

※本投稿には、アフリエイト広告を表示しています。

英語独習法(岩波新書)

 「英語独習法」は,岩波書店から2020年12月に発行された岩波新書(赤いやつ)です。著者の今井むつみ氏は,慶応義塾大学環境情報学部教授で,認知科学,言語心理学,発達心理学専攻されています。

 この本は,認知科学の学習の法則を英語学習に当てはめ,英語学習の合理的な学習法を提案し,その理由としくみを解説するというものです。ここでいう合理的な学習法とは,1か月でマスターとかいう楽して身につけようというものではありません。

 「英語独習法」の目次は次のとおりです。

 第1章 認知のしくみから学習法を見直そう

 第2章 「知っている」と「使える」は別

 第3章 氷山の水面下の知識

 第4章 日本語と英語のスキーマのズレ

 第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法基本篇

 第6章 コーパスによる英語スキーマ探索法上級篇

 第7章 多聴では伸びないリスニングの力

 第8章 語彙を育てる熟読・熟見法

 第9章 スピーキングとライティングの力をつける

 [ちょっと寄り道]フィンランド人が英語に堪能な理由

 第10章 大人になってからでも遅すぎない

 探究実践篇

英語をなぜ習得できないのか?

 本書では,まず認知科学の観点から,なぜ,これまで英語学習を続けても英語が習得できなかったのか?を明らかにしています。要は,学習の仕方が悪かったんです。

 そして,日本人-日本語母語話者-が英語を習得できないのは,日本語と英語でスキーマが異なるからだということを,具体例(可算名詞・不可算名詞,定冠詞・不定冠詞)を挙げて説明されています。当然,スキーマという概念についても説明があります。

中級者向け

 本書では,英語を習得するには,英語スキーマを自分で見つけていくことが必要だといいます。そのために,以下のようなコーパスを使った英語スキーマの探索法が紹介されています。

 ①SkeLL,②COCA,③WordNet,④Cambridge Dictionary(英英辞典)

 さらに,熟読・洋画の熟見によって語彙力を高める方法が紹介されています。

 これらの方法からわかるように,英語力がある程度ある中級者以上を対象にしているように思います。

初学者にとってもためになる

 初学者が,いきなり本書で紹介されているコーパスを使った英語スキーマ探索法を実践しても,すぐに挫折するだろうと思います。とはいえ,初学者が本書を読んで意味がないわけではありません。

 たとえば,多聴でリスニング力は伸びないとか,多読がもたらす効用は限定的とか,聞き流すだけで英語力が身に付くという教材は認知科学の観点から疑問とかが説明されています。そして,正しい手順での英語学習のやり方についても説明されています。

 初学者やこれまでいろんな英語教材に手を出して挫折した人も読む価値はあるんじゃないかと思います。

英語学習以外にも役立つ

 本書は,英語学習の方法を認知科学の観点から解説していますが,これは英語学習以外の学習にも応用できる内容だと思います。ということで,何か新しい勉強を始めてみようと思っている人とかにも役立つかもしれません。

♪Mr.Children「終末のコンフィデンスソング」(アルバム:SUPERMARKET FANTASY収録)

Follow me!