シン・エヴァンゲリオン劇場版:||が公開されたので,エヴァンゲリオンにまつわる判決を取り上げる

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||が公開されたので,エヴァンゲリオンに関する裁判例を紹介します。

東京地裁八王子支部平成12年4月13日判決

 エヴァンゲリオンに関する裁判例といっても,エヴァンゲリオンの権利関係について争いになったという事案ではありません。迷宮入りしそうにないごく普通の刑事事件です。

 ビリヤード店の2階の出入口ドアガラスを割り,ドアの施錠を外してエントランスホールに侵入したとして,器物破損罪・建造物侵入罪で起訴された事件です。この裁判で,被告人が友達を誘って,エヴァンゲリオンのビデオを観たとアリバイ主張をしていました。しかも,その友達は途中で寝てしまって,一人でエヴァンゲリオンのビデオを観て,午前4時過ぎに寝たて,朝9時か10時頃に起きたら,その友達はいなかったというアリバイ供述です。

 果たして,裁判所は,このエヴァンゲリオンに関するフワッとしたアリバイ供述をどのように判断したのでしょうか? 

事案の概要

 被告人は,平成10年11月7日午前8時45分ころ,東京都清瀬市所在のビリヤード店「ビリヤードハウスアムール」の2階で,同店出入口ドアガラスを割って,ドアの施錠を外してエントランスホールに侵入したという器物損壊罪・建造物侵入罪で起訴された。

 被告人は,以下のようなアリバイ供述を主張していた。11月6日,友達に電話してエヴァンゲリオンのビデオを観ないかと誘い,同日午後10時頃,友達の家へ行き,一緒にビデオを観た。友達は午前0時頃に寝てしまったので,一人でビデオを観て,午前4時すぎくらいに寝た。午前9時か10時頃に目を覚ますと,友達の姿はなく,仕事に行ってくるとの書置きがあった。そのまま寝てしまい午後7時から8時に起きたら友達は帰宅していた。友達と別れ,自宅に帰宅した。

裁判所の判断

 この裁判では,目撃者の供述の信用性が問題になっていますが,その点は省いて,エヴァンゲリオンに関する被告人のアリバイ供述についての判断のみを取上げます。

 アリバイ供述に出てきた友達は,友人を裏切ることなく,捜査段階でも公判廷でも事件当日11月7日午前7時25分から35分の間に家を出た際は被告人が家にいたと証言した。また,「被告人は,濃いめのグリーンのスーツ上下と黒いロングコートを着て,ポケットにビデオテープを入れて訪ねて来た。私は12時ころ寝た。翌朝仕事に行くという置き手紙をして自宅を出たが,出て行くとき被告人はぐっすり寝ていたような感じだった。帰宅してみると,被告人は朝と同じようにスーツ姿で寝ており,外へ出かけた様子はなかった。被告人は午後7時か8時頃,ちょっと行くと言って出かけた。」と証言した。

 被告人が持参したビデオテープ2つあった。その内1つには,アニメ・エヴァンゲリオンの1話から16話合計5時間49分23秒が録画されていた。もう一つは,アニメ・エヴァンゲリオン17話から25話と映画版2話の合計6時間4分32秒が録画されていた。

 前者のビデオの録画時間が約5時間50分であって,午後10時頃に友達の家を訪れてエヴァンゲリオンを見て寝たのが午前4時すぎくらいであったとする被告人の供述とよく符合している。午前7時半頃,被告人はぐっすり寝ていたような感じだったとする友達の証言も信用できるといえる。

 被告人は,その後一旦目を覚ましたもののすぐ寝てしまい,起きたら午後7時か8時ころであったと供述し,睡眠時間の長さに疑問が生じる。被告人が,本件当時,「昼間は寝ていることが多く,どちらかというと,夜,活動することが多い状態」であり,本件の一か月余り後である平成10年12月16日に被告人が本件店を訪れて店主に2500万円を要求したのは午前2時10分頃のことである。同月30日に店主宅,翌年2月10日に本件店とそれぞれ放火事件が発生しているが,いずれも未明の事件であって,それらの放火も被告人の所為と強く疑われていることからすると,そのような夜行型の被告人が,盛装して友人方に泊まり,午前7時半ころ友人が出勤するや,やにわに起き出して母の家等へ行って迷彩服に着替え,午前8時45分ころ本件犯行に及び,その後再びスーツに着替えて友人方に戻り,朝と同じ格好で寝ていたとみるのは,当時被告人が犯行に及ぶような緊迫した状況にあったとは証拠上窺えないことからすると(被告人が2500万円を要求する行動を起こしたのは本件後のことであり,それまでは何ら被害者とは接触していない),唐突であり,夜まで寝ていたとする被告人の供述もあながち虚偽として排斥できない。

♪Mr.Children「Hallelujah」(アルバム:Q収録)

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