ウソついたから自首は認めない

捜査機関に虚偽の犯罪を申告したことが自首に当たるかどうかについて判断した最高裁の決定が出ました。

自首とは?

 最高裁決定を紹介する前に,そもそも自首とは何なのか?について,少しだけ触れておこうと思います。自首について規定しているのは刑法42条です。

第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

 自首とは,犯人が捜査機関に自発的に自分の犯罪事実を申告して,その訴追を含む処分を求めることです。

自首の要件

 自首が成立するには,以下の要件を満たす必要があります。

①犯人が自発的に行うこと

 取調べを受けて,自白した場合は自発的に行う要件に該当せず,自首は成立しないとされています。

②自分の犯罪事実の申告であること

 申告する犯罪事実について,自分の罪を軽くするために犯行の重要部分を隠したり,虚偽の申告をした場合に自首に当たるかのかが,今回の最高裁決定の争点です。 

③自分の訴追を含む処分を求めること

④捜査機関に対する申告であること

 捜査機関とは,検察官,司法警察員のことです。

⑤捜査機関に発覚する前の申告であること

 発覚とは,①犯罪事実と②犯人についてです。犯罪が行われたことは発覚していても犯人が誰かわからない場合も自首が成立します。なお,捜査機関の誰かが知っていれば,自首は成立しないと考えられています。

自首の効果

 自首が成立すると,裁判所は刑を減刑することができます。任意的減刑といって,実際に減刑するかどうかは裁判所の裁量によります。

 なお,刑法各則や特別法で必要的免除や必要的減刑について規定されているものもあります。

令和2年12月7日最高裁決定

 捜査機関に虚偽の犯罪事実を申告した場合は,自首は成立しないと最高裁が判断しました。

事案の概要

 被告人は,自宅で被害者を殺害後,捜査機関に発覚する前に,嘱託を受けて被害者を殺害したという虚偽のメモを遺体のそばに置き,自宅の外から警察署に電話し,自宅に遺体があること,メモを見れば経緯がわかること,自宅の住所を伝えた。その後,警察署で嘱託を受けて被害者を殺害したと虚偽の供述をした。

最高裁の判断

 被告人は,嘱託を受けていないのに,嘱託を受けて被害者を殺害したと事実を偽って申告しており,自己の犯罪を申告したとはいえないので,自首は成立しないと最高裁は判断しました。

♪Mr.Children「ランニングハイ」(アルバム:I ♥ U収録)

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