宗教法人法の質問権

政府が某宗教法人に対して宗教法人法に基づく質問権を行使することを決めました。ということで、宗教法人法の質問権の規定を見てみようと思います。

宗教法人法

 宗教法人法は、宗教団体に法人格を与える法律です。法人格が与えられると、権利義務の主体となることができます。要は、会社みたいなものです。

宗教団体って?

 そもそも、宗教団体ってどんな団体なのでしょうか?なんとなくイメージはできますが、法律はどう定義してるのでしょうか?宗教法人法2条に宗教団体の定義規定があります。

(宗教団体の定義)

第二条 この法律において「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。

 礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体

 前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体

 法律によると、宗教団体とは、①教義を広めて、②儀式を行い、かつ、③信者を教科育成することを主目的とした④礼拝施設がある団体ということです。

 ということは、教義がしっかりしてて、一定数の信者がいても礼拝施設がないと法律上の宗教団体ではないわけです。宗教団体は宗教法人になれます。逆に言うと、宗教団体じゃなければ、宗教法人にはなれないわけです。礼拝施設がないのであれば、そのために土地・建物を取得する必要がないので、法人格を与えなくてもいいでしょってことなんでしょうネ。

 ちなみに、2号は、個々の神社とか寺院とかを統括する団体のことです。条文上は、統括する団体自体は、礼拝施設がなくてもいいみたいです。

質問権

 ニュースで話題になっている質問権は、宗教法人法78条の2に規定されています。条文を見る限り、質問権を行使にあんまり期待できそうにありません。

(報告及び質問)

第七十八条の二 所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。この場合において、当該職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない。

 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。

 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証をした場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていること。

 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。

所管庁

 質問権を行使するのは、所管庁です。所管庁は、どこかというと、都道府県知事か文科相です(5条)。宗教団体の定義で見た1号の個々の宗教団体が法人になった場合の所管庁が都道府県知事で、2号の統括する団体が法人になった場合が文科相という棲み分けになっています。

公益事業以外の事業

 宗教法人は、その目的に反しない限り公益事業以外の事業を行うことが認められています(6条2項)。この規定に違反する事実があると疑いがあることが質問権行使の要件の一つです。

宗教団体ではない

 質問権行使の要件の一つは、14条1項1号の要件を欠いている疑いがある場合です。14条1項1号は、「宗教団体であること」なので、最早、宗教団体じゃないぞ、こいつら…という場合です。

解散命令に該当する事由がある

 3号に規定されている要件は、81条1項1号~4号に該当する事由があることです。81条は、解散命令の規定です。つまり、解散命令に該当するような事由があると疑いがあることが要件です。ニュースで、質問権の行使が解散命令につながると言っているのは、この要件のことです。今回は、解散命令については割愛します。

宗教法人審議会

 質問権を行使するためには、宗教法人審議会の意見を聴く必要があります(2項)。上記の78条の2第1項の要件を満たすかどうかだけでなく、質問事項についても意見を聴く必要があります(3項)。

 宗教法人審議会は、宗教法人法71条以下に規定があります。宗教法人に対して所管庁が権限行使する際に留意すべき事項を意見する機関です(71条3項)。

 審議会は、宗教家・宗教に関する学識経験者から文科相が任命する非常勤の委員で構成されます(72条2項、75条1項)。任期は2年で再任可能(73条)で、人数は10人以上20人以内となっています(72条1項)。

 文化庁のHPによると、現在の委員は19人です。公開されてる議事録によると、多くて1年4回開催されていて、開催されてない年もあるようです。議事録によると、全体の審議会以外に小委員会を作り議論することもあるようです。

強制はできない

 この質問権は犯罪捜査のために行うものではありません。条文でもわざわざそのことを規定しています(6項)。なので、宗教法人の施設に強制的に立ち入ったりすることはできません。あくまでも質問して報告を求めるだけで、調査ではないのです。

 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

罰則はある

 質問権行使っていっても質問するだけかと思いきや、一応、罰則があり、回答を強制する制度にはなっています。虚偽の報告や答弁をした場合だけでなく、報告・答弁しない場合も罰則の対象になっています。

 もっとも、科されるのは、過料なので、刑罰ではありません。なので、実際のところどこまで強制力を持つのかは怪しいです。極論すると、10万円払えば、質問権をスルーできちゃうわけです。

第八十八条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人は、十万円以下の過料に処する。

 第七十八条の二第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。

♪Mr.Children「マシンガンをぶっ放せ」(アルバム:深海 収録)

Follow me!

写真

次の記事

阪急淡路駅高架化2022⑩