消費者庁のアフィリエイト広告等に関する検討会で報告書が取りまとめられました。そこで,アフリエイターのために景品表示法の概略をまとめておきます。今回で最終回です。
景表法の適用対象
景表法5条は,以下のように規定しています。
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
供給とは,一般消費者向けに不当な表示を行い誘引できるものは,供給主体になります。供給の概念は拡大される傾向にあり,流通過程にあるメーカー・卸業者・小売業者やフランチャイザー等は供給主体に該当します。
アフリエイト広告の場合,アフリエイターは自らの商品やサービスを宣伝しているわけではありません。したがって,景表法の対象にはなりません。しかし,アフリエイターが宣伝する商品やサービスを提供している事業者は景表法の対象になります。
東京高裁平成20年5月23日判決
現在の消費者庁の実務は,この判決の判示事項に即しています。東京高裁は,表示をした事業者とは,表示内容の決定に関与した事業者のことをいうとしています。そして以下の3つの場合,表示内容の決定に関与したことになります。
①自ら又は他の者と共同して積極的に表示内容を決定した
②他の者が決定した表示内容について,その者から説明を受けて,これを了承し,その表示を自分の表示とすることを了承した
③自分で表示内容を決定できるにもかかわらず,他の者に表示内容の決定をまかせた
上記の③は,広く解されています。
アフリエイト広告に関する措置命令
2021年3月に初めて,アフリエイト広告に関して措置命令が出されました(その後,9月に課徴金納付命令)。
ASPを通じて,対象アフィリエイトサイトの表示内容を自ら決定していると判断されました。つまり,消費者庁は,上記③に該当すると判断したわけです。
通常,アフリエイト広告に関して,事業者は,いちいちアフリエイターのブログやSNSをチェックしていないはずです。にもかかわらず,排除措置命令の対象になったわけです。アフリエイト広告に関する排除措置命令が増加すれば,事業者にとってアフリエイト広告を利用するのはリスクになります。そうすると,アフリエイト広告を出すのはやめようとなりかねません。だからこそ,アフリエイターは景表法の基本的な知識を知っておく必要があるのです。
ステマ・やらせレビュー
最後に,ステルスマーケティング・やらせレビューの景表法の問題をざっくりとまとめておきます。
表示主体
広告主がステマ等の内容を自ら確認し修正等を指示している場合,自ら表示内容を決定していることになります(上記①に該当)。
広告主が内容を自ら確認していなくても,その内容をブロガー等に委ねた場合は,上記③に当たり,表示内容を決定していると評価されます。
優良誤認表示に当たるか?
「この商品はスゴくいい」といった抽象的な表示や「私はこの商品を気に入っています」といった主観的な表示が優良誤認表示に該当するか?という問題があります。
このような抽象的・主観的な表示であっても,以下の場合は,優良誤認表示に当たる場合があります。
(1)多数の消費者が依頼によらず自分の意思で好意的なレビューを書き込んでいる事実がないのに,あるように示すもの
(2)個々のレビューの書き込みとは別に,商品内容の優良性・有利性について,一般消費者を誤認させるもの
♪Mr.Children「傘の下の君に告ぐ」(アルバム:BOLERO収録)