動物を殺したら何罪になる?

奈良市で鹿を殺した男が文化財保護法違反で逮捕されたというニュースがありました。奈良の鹿は別として,動物を殺すと何罪になるのでしょうか?

動物を殺すと器物損壊罪

 法律上,動物は物です。動物だって生きてるんですが,物として扱います。動物を殺すことは,法律上は,物を壊すことと同じです。ということは,動物を殺したら,器物損壊罪になります。

(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 器物損壊罪の客体は,「他人の財物」です。ということは,他人が飼ってるペットは,他人の財物に当たりますが,野生動物は,他人の財物に当たらないので,器物損壊罪には当たらないということになります。

 また,他人が飼ってるペットなら器物損壊罪は成立しますが,動物を殺傷する行為が物を壊すのと同じ評価なのもどうかと多くの人が思うでしょう。そこで,こんな法律があります。

動物愛護法

 動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)という法律があります。この法律は,動物を飼ってる人は,人に迷惑をかけないようにしろとか,飼ってる動物が天寿を全うするまで飼えとか,飼えなくなるような繁殖はさせるなとかを規定しています。また,動物の販売業者・飼育業者の規制なども規定しています。

 その動物愛護法に,愛護動物を殺傷するなという規定があります。

第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は虫類に属するもの

愛護動物

 1項で,愛護動物を殺傷した場合の罰則を規定しています。法定刑が5年以下の懲役又は500万円以下の罰金と器物損壊罪よりも重くなっています。また,野良犬,野良猫にも適用されます。ちなみに,この法定刑は原則,執行猶予が付かないのでかなり重いです。

 2項は,飼ってる愛護動物を虐待した場合の罰則を規定しています。

 3項が,愛護動物を遺棄した場合の罰則を規定しています。つまり,ペットを棄てるのは,犯罪です。

 1項から3項は,「愛護動物」について適用されます。愛護動物の定義規定が4項にあります。1号は,日本人が家畜やペットとして昔から飼ってた動物なんでしょうね。神の使いとされていても野生の鹿は愛護動物ではありません。また,なぜか,両生類と魚類は愛護動物ではないんですね。

鳥獣保護管理法

 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正可化に関する法律(鳥獣保護管理法)という法律があります。この法律で,鳥獣の捕獲等と鳥類の卵の採取を禁止しています。

第八十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

一 第八条の規定に違反して狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をした者(許可不要者を除く。)

鳥獣

 2条1項に鳥獣の定義があり,野生の鳥類又は哺乳類と定義されています。2条7号で捕獲等(捕獲又は殺傷)と規定されています。そして,8条は,鳥獣又は鳥類の卵は,捕獲等又は採取等(採取又は損傷)してはならないと規定しています。

 ということで,野生の鳥類又は哺乳類を殺傷した場合,鳥獣保護管理法により1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

文化財保護法

 最後に冒頭の奈良市の鹿を殺傷したら,文化財保護法違反になるわけですが,どの程度の罪になるのかを見ておこうと思います。

 奈良の鹿は国の天然記念物に指定されています。なので,適用されるのは,この条文です。

第百九十六条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、毀損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。

 法定刑は,5年以下の懲役又は禁固若しくは100万円以下の罰金なので,原則,執行猶予がつかないので,かなり重いですよ。

♪Mr.Children「day by day (愛犬クルの物語)」(アルバム:重力と呼吸 収録)

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