関西スーパーvsオーケーが最高裁までもつれたので,民事保全手続の不服申立てについてまとめておく

関西スーパーがH2Oと経営統合することを決議した株主総会の行方は,とうとう最高裁にまで発展しました。ここで,民事保全手続の不服申立てについてまとめみました。

関西スーパーvsオーケー

 関西スーパーがH2Oと株式交換により経営統合することを決議した株主総会は,僅差で可決され,関西スーパーはH2Oと経営統合することになったのですが…その後,株主総会でのとある株主の議決権行使をめぐり,疑義が生じました。そこで,オーケーが神戸地裁に株式交換の差止めの仮処分を申立てました(関西スーパーvsオーケー第2ラウンド)。

 神戸地裁は,オーケーの主張を認め,仮処分命令を出しましたが,大阪高裁は,オーケーの主張を認めず,仮処分命令は取り消されました。その後,オーケーの許可抗告が認められましたが,最高裁は,オーケーの抗告を棄却しました。つまり,大阪高裁の決定が確定し,関西スーパーとH2Oの経営統合が行われることになりました。

 予想外に,最高裁までもつれることになったこの事件,一連の流れを理解する上で,民事保全手続の不服申立てをまとめておこうと思います。

民事保全手続の不服申立て

 民事保全手続の不服申立ては,そもそもの保全申立てが,①地裁,②簡裁,③高裁のどこに申立てられたのか?によって,パターンが変わってきます。また,そもそもの保全申立てが,①認容されたのか?②却下されたのか?によっても変わってきます。そこで,以下の事例を下に,民事保全手続の不服申立てをまとめることにします。

事例

 株式会社Kは,株式会社Hと株式交換を行い,経営統合することにした。Kの臨時株主総会でHとの株式交換について決議された。結果,僅差ではあったが,Hとの株式交換は可決された。

 しかし,その後,一部の株主の議決権行使をめぐり疑義が生じたため,株主Oが株式交換の差止めの仮処分を神戸地裁に申し立てた。神戸地裁は,Oの請求を認容し,株式交換の差止め仮処分命令を発令した。

①保全異議
まず,Kは,神戸地裁に保全異議を申立てます。
②保全抗告
保全異議に対する不服申立ては,大阪高裁に保全抗告を申立てます。
③許可抗告
高裁の決定に対する不服申立てとして,許可抗告があります。

①保全異議

 保全命令の発令に対し,債務者が保全命令の実体的要件がないことを理由に行う不服申立てです。保全命令を発令した裁判所(事例では神戸地裁)に対して行う手続です。民事保全手続では,訴訟と異なり,いきなり上級審の判断を仰ぐことができません。

 保全異議は,保全命令を発令した裁判所に申立てますが,通常は,保全命令を発令したのとは,別の裁判官が担当します。

 民事訴訟の不服申立ては,不服申立てを行う期間が決まっていますが,保全異議には期間制限はありません。したがって,保全命令が発令されている間は,いつでも申立てをすることができます。

 保全異議の決定は,実体判断を行う場合は,①認可,②変更,③取消しの3つが考えられます。①認可は,発令されている保全命令を認めるという決定です。③取消しは,発令されている保全命令を取り消すという決定です。仮処分命令を変更する場合が②の変更です。

②保全抗告

 保全異議の決定に対して不服のある債権者又は債務者が上級審に申立てる不服申立てが,保全抗告です。事例では,保全異議を神戸地裁が行ったので,大阪高裁へ申立てることになります。

 抗告ができるのは,原裁判の送達を受けた日から2週間です。期間を徒過すると,保全抗告の申立てはできません。保全抗告に対して再抗告することはできません。

③許可抗告

 高裁の決定で,かつ,その裁判が地裁の裁判である場合に抗告できるものの場合,最高裁に行う不服申立てが許可抗告です。許可抗告は,裁判の告知を受けた日から5日以内に,原裁判(事例では大阪高裁)に対して,許可抗告の申立てを行う必要があります。

 許可抗告は,不服の理由が,判例違反や法令の解釈に関する重要な事項であり,かつ,高裁が許可して初めて,最高裁の判断を仰ぐことができます。

♪Mr.Children「靴ひも」(アルバム:I ♥ U収録)

Follow me!

法律

前の記事

法窓夜話76-80
法律

次の記事

法窓夜話81-85