2022年7月29日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、都道府県がBA.5対策強化宣言を行うことができるように決定しました。このBA.5対策強化宣言の位置づけが報道ではよくわかりませんでしたが、対策本部の配布資料で特措法24条9項をもったいつけただけだとわかりました。
BA.5対策強化宣言の根拠規定は?
日本の新型コロナウイルスの新規感染者が世界一位になっているほど感染が拡大しているのを受け、突如、政府がBA.5対策強化宣言を都道府県が出せるようにすると発表しました。
新型インフルエンザ等対策特別措置法には、①緊急事態宣言、②まん延防止等重点措置の2つがすでに規定されていて、実際に複数回、適用されました。ここへ来て、BA.5対策強化宣言を新設することになったわけです。が、報道を見ても、特措法を改正するのか?特措法を改正せずに、運用するのか?がよくわかりませんでした。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の議事で、後者だということがわかりました。つまり、BA.5対策強化宣言とかもったいつけて言ってますが、特措法24条9項をそう言い換えたにすぎないのです。
特措法24条9項
ということで、特措法24条9項の条文をみてみましょう。
9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。
緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も出てない状況で、新型コロナウイルス等の感染を抑えるために、都道府県知事(都道府県対策本部長というのは、知事のこと)が、住民に必要な協力を要請できるという規定です。
実は、特措法7条が、都道府県に対し、新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(都道府県行動計画)を作成することを求めています。特措法24条9項は、この計画を実施するに当たって、必要な協力を要請できるという規定なんです。
想定している必要な協力は、大したことではありません。逐条解説によると、①手洗い・うがいの奨励をボランティア団体に広報してもらう、②学校や社会福祉施設等でイベントを延期・中止するといったことを想定しています。
ちなにみ、特措法24条9項の協力要請に従わなかった場合の罰則はありません。なので、強制はできないことになっています。
BA.5対策強化宣言
特措法24条9項をもったいつけたBA.5対策強化宣言で、知事が住民にどんな協力を要請すると政府は考えているのでしょうか?①住民への協力要請と②事業者への協力要請を考えています。
以下、それぞれにわけて政府が考えている協力要請を挙げておきます。驚くべきことに、何も目新しいことは言っていません。何がBA.5対策強化宣言だという感じですネ。
住民への協力要請
BA.5対策強化宣言で、政府が考えている住民への協力要請は、以下の9つです。
①三密回避、手洗い等の手指衛生、効果的な換気等の基本的な感染対策の再徹底
②早期のワクチン3回目接種、高齢者や基礎疾患のある人、重症化リスクの高い人が早期にワクチン4回目接種
③高齢者、基礎疾患のある人、同居する家族等について、混雑した場所、感染リスクの高い場所への外出自粛等感染リスクの高い行動を控える
④帰省等で高齢者、基礎疾患のある人と接する場合の事前の検査
⑤高齢者施設等利用者のお盆等節目での検査
⑥飲食店での大声や長時間の回避、会話時のマスク着用
⑦症状が軽く重症化リスクの低い人は発熱外来受診に代え、抗原定性検査キットの配布事業の活用を検討
⑧無症状の人は、都道府県の無料検査事業を活用
⑨救急外来、救急車の利用を真に必要な場合に限る
事業者への協力要請
政府が事業者への協力要請として考えているのは、以下の7つです。
①テレワーク等の推進
②人が集まる場所での感染対策の徹底
従業員への検査勧奨、適切な換気、手指消毒設備設置、入場者の整理・誘導、発熱者等の入場禁止、入場者のマスク着用等の周知
③高齢者施設、学校、保育所等の感染対策の強化
従事者、保育士、教職員等の頻回検査、高齢者施設での面会時の事前検査・オンライン面会実施、部活動・課外活動等における感染リスクの高い活動に関する工夫
④飲食店における十分な換気、座席の間隔の確保、パーテーションの設置等
⑤大人数での会食の場合、参加者への事前検査を促す
⑥三密が発生しやすい大規模な参加型イベントは、十分な間隔の確保、参加者への事前検査等を促す
⑦国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な事業を行う事業者は、業務継続計画に基づき、事業の継続を図る
もはや、打つ手ないんじゃない…
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の議事により、BA.5対策強化宣言が、特措法24条9項をもったいつけて言い換えただけだということ、目新しいことは何も言ってないことがわかりました。
ということは、現状、もはや、打つ手ないということなんだと思います。思えば、この3年間、新型コロナウイルスの感染者の推移は、ピークの山は、異なるものの同じように辿ってきました。今回の第7派は行動制限をしないようですが、行動制限しようがしまいが、そのうちピークアウトして、感染者数は落ち着いてくだと思います。で、また、年末になって感染者数が増えてくんだろうと思います。
図らずも、打つ手ない状況で、行動制限しなくても、その内、感染者数減ってくじゃん!という事例になり、新型コロナウイルスの感染症法上の分類の変更の契機になるかもしれません。
♪Mr.Children「フラジャイル」(アルバム:B-SIDE収録)