指名委員会等設置会社の概要をまとめておきます。
指名委員会等設置会社
東芝の株主総会の問題で,「監査委員会がどうのこうの」というニュースを見たり,聞いたりしたと思います。そして,監査委員会って何?と思った人もいるかもしれません。
ここでいう監査委員会は,指名委員会等設置会社の委員会の一つです。指名委員会等設置会社は,アメリカの上場会社の統治構造を参考に平成14年に導入された新しい株式会社の形態です。
当初は,委員会等設置会社と呼んでいました。その後,平成17年に会社法が制定されると,委員会設置会社に改称されました。さらに,平成26年の会社法改正で,監査等委員会設置会社が導入されたので,区別するために,指名委員会等設置会社に改称されました。
指名委員会等設置会社の特徴
指名委員会等設置会社の特徴として,以下のものを挙げることができます。
経営は執行役
株式会社の取締役は,通常,業務執行を行います。しかし,指名委員会等設置会社の取締役は,業務執行を行うことはできません。
指名委員会等設置会社で業務執行を行うのは,取締役会が選任する代表執行役又はその他の執行役です。つまり,執行役が経営陣で,代表執行役が経営者ということになります。
ちなみに,会社によっては,執行役員が存在する場合があります。執行役員は,執行役ではありません。執行役員は,会社法上の役員・組織ではなく,その会社独自の役職です。
3つの委員会
指名委員会等設置会社には,①指名委員会,②監査委員会,③報酬委員会の3つの委員会が設置されます。
各委員会は,取締役会が取締役の中から選んだ3人以上の委員で構成されます。その内,過半数は社外取締役である必要があります。
社外取締役を中心とした委員会に監査・監督権限を与えることで,経営の監督が実効的に行われることを期待しているわけです。
ということは,指名委員会等設置会社には,最低6人の社外取締役が必要なのかと思いきや,2人で大丈夫です。というのも,各委員会の委員を兼任することは妨げられていないからです。
経営と監督の分離
指名委員会等設置会社では,経営の基本方針の決定といった最重要の業務執行の決定は,取締役会で行います。そして,具体的な業務執行の決定,つまり,会社経営は,大部分を執行役に委任することが認められています。
経営と監督を分離することで,機動的な会社経営を可能にするとともに,取締役を監督に専念させることで,経営の監督機能を高めようと設計されています。
指名委員会等
前述のとおり,指名委員会等設置会社には,①指名委員会,②報酬委員会,③監査委員会の3つの委員会が設置されます。
各委員会の委員は,取締役の中から取締役会の決議で選びます。人事権こそ取締役会にありますが,各委員会は,取締役会等の機関から独立に権限を行使します。取締役会は,各委員会に対して,命令したり,決定を変更したりすることはできないのです。
指名委員会の職務
指名委員会は,株主総会に提出する取締役の選任決議案の内容を決定する委員会です。
指名委員会等設置会社以外の株式会社では,取締役の選任決議案は,取締役会で決定します。しかし,実際は,経営者が決めている場合が多いでしょう。指名委員会等設置会社では,取締役の選定過程に社外取締役を関与させることで,透明性や客観性の確保,人的構成の変化をもたらすことが期待されています。
監査委員会
監査委員会は,執行役・取締役の職務執行を監査し,監査報告を作成する委員会です。
執行役等の職務を監査するため,会社の業務・財産の調査権限や執行役の違法行為の差止めといった権限が認められています。
監査役設置会社の監査役と異なり,個々の監査委員は,監査委員会から特定の職務を行うものとして選定されて,初めて,その職務権限を行使することができます。
報酬委員会
報酬委員会は,執行役・取締役の個人別の報酬を決定する委員会です。
株式会社の取締役の報酬は,株主総会又は定款で決めます。しかし,株主総会では,取締役の報酬総額を決め,個々の取締役の報酬額は,代表取締役が決めています。
指名委員会等設置会社では,株主に加え,社外取締役を中心とした報酬委員会で個人別の報酬を決定することにしました。
執行役
指名委員会等設置会社で,業務執行を行うのは,執行役です。執行役の中で,会社を代表する権限を持つ者を代表執行役といいます。
執行役は,取締役会の決議によって選ばれます。取締役や使用人との兼任も可能です。ただし,監査委員会の委員は,執行役を兼任することはできません。
また,代表執行役は,執行役の中から取締役会の決議によって選ばれます。
指名委員会等設置会社は不人気
公開会社かつ大会社は,会社法上,①監査役会,②監査等委員会,③指名委員会等のどれかを設置しなければなりません。公開大会社でなくても,東証上場会社は,①~③のどれかを設置しなければなりません。
2021年6月17日時点の東証上場会社は,3,719社あります。その内,①監査役設置会社は67.1%の2,496社で最も多いです。次に,②監査等委員会設置会社は30.8%の1,146社と続きます。そして,③指名委員会等設置会社はわずか2.1%の77社と最も少ないんです。
指名委員会等設置会社が,こんなに不人気なのは,どうも,取締役の指名と報酬を社外取締役に委ねるのに,経営陣の拒否反応があるようです。
ニュースをにぎわせてる東芝ですが,指名委員会等設置会社で社外取締役も半数くらいいるにもかかわらず,監査がうまく機能しなかったようです。会社のガバナンスをどうするのか?は,今後も,重要な問題です。
♪Mr.Children「名もなき詩」(アルバム:深海 収録)