消費税は間接税のふりした直接税?

インボイス制度に関して、消費者が消費税と称して支払ったお金は、価格の一部だという話しをしました。そもそも、益税とか預り金とかの話しが出てくるのは、消費税が間接税のふりした直接税だからです。

消費税の計算

 消費税に関して、こんなイメージを持ってる人はいるでしょうか?

 ある消費者が本体価格1万円の商品を購入する際、レジで1万1000円を支払う。この1000円は消費税で、事業者は、消費者から預かった1000円をそのまま税務署に納める。

 アメリカの州税である小売売上税は、まさに、上記のように、消費者から預かった税金を事業者がそのまま納めています。しかし、日本の消費税は、そうではありません。消費税の納付額は、以下のように、計算します。ちなにみ、地方消費税は含まれてません。

 売上にかかる消費税-仕入にかかる消費税=納付額

 この計算式が基本です。この計算式から、消費税が、消費者から預かった税金をそのまま納付する税金ではないことがわかります。

 ちなにみ、売上にかかる消費税の計算は、以下のように行います。

 売上高×7.8/110(軽減税率は6.24/110)

 そして、仕入にかかる消費税の計算は、以下のように行います。

 仕入高×7.8/110(軽減税率の場合は6.24/108)

消費税は間接税のふりした直接税?

 一般に消費税は間接税だと言われています。というか、財務省も国税庁も消費税は間接税だと言っています。

 間接税は、税金の負担者と納付者が異なる税金のことです。酒税とかたばこ税は間接税です。

 消費税が間接税だと言われているのは、最終的に価格に転嫁され、消費者が消費税分を負担しているからです。しかし、消費税法は、価格転嫁を保障していません。なので、消費税が間接税だというのは、怪しいのです。

 消費税が間接税だとしても、実は、消費税法には、なぜか、直接税であることを前提とした制度があります。つまり、消費税法は、間接税のふりした直接税か、間接税なのに、直接税であることを前提にした制度があるので、わけのわからない法律・制度になっているのです。なんで、こんなことになってるのかは、その歴史を見ると見えてきます。

消費税の歴史

 ということで、消費税の歴史をざっくりと見てみましょう。

シャウプ勧告に基づく付加価値税・消費税

 1950年にシャウプ勧告をもとに、付加価値税・消費税が導入されました。これは、赤字企業から税金を取る法人税パート2でした。

 当時の事業税は、所得を課税標準としていたので、所得が0の赤字企業からは事業税を徴収できませんでした。そこで、シャウプは、所得+人件費・家賃を課税標準とする付加価値税を導入し、赤字企業からも税金を取ることにしたのです。この付加価値税・消費税は、直接税です。なので、免税制度が設けられていました。

 付加価値税・消費税は、法案は無事に可決し、成立したものの、国民の総スカンにあい、一度も課税されることなく、1954年に廃案になりました。

フランスが付加価値税を間接税にする

 奇しくも1954年にフランスが付加価値税を間接税として導入しました。なぜ、直接税である付加価値税を間接税として導入したのでしょうか?

 それは、直接税だと輸出還付金制度を設けることがGATTに反するからです。そこで、間接税っぽくするために、仕入額控除の制度と本体価格と税額を別々に記載するインボイス制度を導入したのです。

 日本の消費税もフランスの付加価値税を参考にしています。なので、間接税っぽくなっているのです。ただ、もともとは、直接税なので、直接税を前提とした規定が残ることになります。

売上税

 その後、1987年に中曽根内閣がインボイス制度を採用した売上税を導入しようとします。が、こんなメンドクサイことやってられるかと国民の反対により廃案に追い込まれます。

アカウント・帳簿方式で消費税導入

 そして、竹下内閣の時に、ついに消費者が導入されます。竹下内閣は、中曽根内閣がインボイス制度で総スカンをくらったので、アカウント・帳簿方式を採用しました。

 アカウント・帳簿方式により、企業は、帳簿に基づく決算額で仕入額控除ができ、さらに、消費税の申告・納税ができます。つまり、事務負担が軽減されたわけです。そして、国税庁も法人税・所得税と併せて消費税の調査や管理ができます。

消費税法にある直接税であることを前提した制度

 消費税法が間接税だとすると、説明がつかない制度が、免税事業者制度と簡易課税制度です。この2つは、直接税であることを前提とした制度だからです。

免税事業者制度

 年間売上が1000万円以下の事業者は、消費税の納税が免除されています。納税が免除されているので、申告をする必要もありません。

 すでに、言及してますが、消費税が消費者から預かった税金をそのまま納付するのであれば、免税事業者制度は必要ない制度です。この制度は、消費税が直接税であることを前提とした制度なのです。

簡易課税制度

 簡易課税制度とは、売上高の一定割合(業種によって40%~90%)を仕入額とみなす制度です。簡易課税制度も消費税が消費者から預かった税金をそのまま納付するのであれば、必要ない制度です。

インボイス制度は消費税率引上げの必要条件?

 アカウント・帳簿方式は、納税者である事業者と課税庁の国税庁の双方にとってメリットがある制度といえます。しかし、税率が1桁の場合、問題は少ないが、税率が高くなると、仕入額控除が大雑把になるという問題が指摘されています。

 特に、輸出免税制度は、仕入先に支払った税金が還付されることになるので、正確性が要求され、インボイス制度にしなければならないという主張が消費税導入時からありました。

 インボイス制度は、従来の請求書等と異なり、適用税率と税額を正確に記載することを求めるものです。消費税率が10%に上がったのを機に導入されるわけです。ということは、インボイス制度の導入は、さらなる消費税率の布石なのかもしれません。

インボイス反対派の戦略は、インボイスは消費税率さらなる引き上げの布石だ!

 インボイス制度に反対!と主張すると、お決まりのように益税に課税するだけだとか、益税を確保したいだけだろと反論されます。この反論に対して、再反論すると、わけがわからなくなります。なぜなら、消費税は間接税のふりした直接税だからです。

 なので、難しい理論を展開するより、インボイス制度導入は、消費税率のさらなる引き上げの布石だと展開した方が、共感されそうな気がします。

♪Mr.Children「掌」(アルバム:シフクノオト収録)

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