消費税とインボイス制度の概要

よほどのことがない限り、2023年10月から消費税のインボイス制度が開始されます。消費税とインボイス制度の概要をまとめておきます。

消費税の概要

 2023年10月から開始されるインボイス制度は、消費税額の計算における仕入額控除の方式に関する制度です。ということで、インボイス制度について説明するには、前提として消費税と仕入額控除について説明しておく必要があるわけです。

課税対象

 消費税の課税対象は、国内において事業者が行う資産の譲渡等です(4条1項)。譲渡「等」となっているのは、賃貸とかも含まれるからです。

納税義務者

 消費税の納税義務者は、消費者ではなく、事業者です(5条1項)。消費者は、消費税を払う義務はないし、払ってないのです(消費者が事業者に支払った消費税相当分は預り金なのか?)。

課税標準

 課税標準とは、税金を計算する際の基礎となる数字のことです。ほとんどの税金は、課税標準に税率をかけて税金の額を計算します。消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額です(28条1項)。

 ようは、資産の譲渡、貸付やサービスの提供によって受取った金額(金銭に限らない)が課税標準なわけです。

税率

 消費税の税率は、地方消費税と合わせて10%です(国税は7.8%(29条))。食料品等は、軽減税率で8%です。

納付税額の計算

 消費税の納付税額の計算式は、以下のとおりです。

 課税売上高×適用税率-仕入税額

非課税取引

 上記のとおり、国内における事業者が行う資産の譲渡等が消費税の課税対象ですが、以下のような非課税となる取引があります(6条1項)。

 ①土地の譲渡・賃貸

 ②金融・保険

 ③医療

 ④教育

 ⑤福祉

 ⑥住宅家賃

事業者免税制度

 消費税には、事業者免税制度があります(9条)。課税売上高が1000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されます。

簡易課税制度

 課税売上高が5000万円以下の事業者は、簡易課税制度を利用することができます(37条)。簡易課税を選択すると、売上に係る税額にみなし仕入率をかけた金額で仕入額控除をすることができます。みなし税率は、事業によって異なります。第1種事業の卸売業の場合は、90%がみなし仕入率です。

仕入額控除

 消費税の計算式で、仕入税額をマイナスできると書きました。要するに、事業者は、原材料や商品の仕入の際に支払った消費税を自分が納める消費税額からマイナスすることができます。これが仕入額控除です。

 とある小売業者が卸売業者から商品を税別10万円で仕入れた場合、小売業者は、卸売業に消費税として1万円を支払っています。小売業者がその商品を消費者に税別15万円で売ったします。この場合、15万円の10%の1万5000円が消費税ですが、卸売業者に支払った消費税の1万円を差し引いて5000円を消費税として納めればいいわけです。

 仕入額控除は、生産・流通といった各取引段階で二重、三重に消費税がかからないようにする仕組みで、消費税の根幹に関わる制度だと言われています。 

インボイス制度

 2023年10月1日から仕入額控除を行うためには、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書を保存する必要があります。言い換えると、適格請求書を保存しないと、仕入額控除を行うことができないのです。

 適格請求書の記載事項は、法律で定められています(消費税法57条の4第1項)。が、発行自体は、特にめんどくさいわけではなく、これまで発行している請求書に新たに登録番号を記載する必要があります。

適格請求書発行事業者の登録

 問題は、事業者なら誰でも適格請求書を発行できるわけではないということです。適格請求書を発行するには、適格請求書発行事業者として登録しなければなりません(57条の2第1項)。

 事業をされてない人からすると、だったら、登録すればいいじゃん!と思われますが、免税事業者は適格請求書発行事業者として登録することができないのです(57条の2第1項括弧書)。

 つまり、免税事業者は、2023年10月以降、①免税事業者のままでいく、②適格請求書発行事業者として登録するために、課税事業者に変更するか選択を迫られます。

 手続上の話しをすると、2023年10月1日が属する課税期間内に免税事業者が適格請求書発行事業者として登録する場合は、適格請求書発行事業者として登録するだけで足り、別途、課税事業者選択届出書の提出は不要ですが、当然、消費税は納めることになります。

影響は?

 フリーランスをはじめ、かなり影響が出るのではないか?と予想されます。働き方改革だとか、副業をもっとやってこうみたいなことを政府は言っている割に、税法では、制限しようとしてるんですよネ…

 ただし、適格請求書の保存がなくても、いきなり全額仕入額控除ができなくなるわけではなく、6年間は一定割合で仕入額控除ができる猶予期間が設けられてはいます。特に最初の3年間は影響は少ないのかもしれません。

♪Mr.Children「もっと」(アルバム:HOME収録)

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