自民党の有志が議員立法で日本国旗損壊罪を作ろうとしていると報道されました。その中で引き合いに出された外国国章損壊罪についてどんな罪なのか?をまとめておこうと思います。
日本国旗損壊罪?
報道によっては,日の丸毀損罪と表記されてたりもしますが,自民党の保守団結の会とかいう有志が作りたいのは,日本国を侮辱する目的で国旗を損壊等した者に外国国章損壊罪と同じ刑罰を科すという内容のようです。
で,言い分としては,日本の国旗の損壊しても,外国国章損壊罪に該当する罪がないのは,けしからんということのようです。ということで,引き合いに出された外国国章損壊罪について見ておこうと思います。
外国国章損壊罪
外国国章損壊罪は刑法第4章の国交に関する罪の一つとして,刑法92条に規定されています。
第九十二条 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。2 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。
国交に関する罪には,他に,私戦予備・陰謀罪(93条),中立命令違反罪(94条)があります。ちなにみ,日本滞在中の外国元首や使節に対する暴行・脅迫・侮辱罪について規定していた90条・91条は削除されています。
国交に関する罪
外国国章損壊罪は,国交に関する罪の一つです。外国国章を損壊することが国際紛争のきっかけになり,処理を間違えると外交問題に発展する危険性があり,外国との国交を害して,日本の安全・国際関係的地位を脅かす罪と解されています。そのため,保護法益は,国家の対外的安全,国際関係的安全と理解されています。
目的犯
外国国章損壊罪は,目的犯の一種です。なので,「外国に対して侮辱を加える目的」がないと成立しません。
外国国章
この罪の客体は,外国の国旗その他の国章です。国章の具体例として,軍の軍旗や大使館の徽章などが挙げられます。国旗等であっても,私的に使用されたものは含まないと解されています。外国の公的機関が公的に掲揚・設置・使用している国旗等が客体となります。
損壊・除去・汚損
この罪の行為は,損壊だけでなく,除去・汚損も対象とされています。詳細は省きますが,それぞれの意味は,以下のとおりです。
損壊とは,国章を破壊,毀損する方法で外国の威信尊厳の効用を滅失・減少させることと解されています。
除去とは,国章を損壊することなく,別の場所に移動したり,遮蔽する等により,国章が現に所在する場所で果たしている外国の威信尊厳徴表の効用を滅失・減少させることと解されています。
汚損とは,人に嫌悪感を抱かせる物を国章に付着等させ,国章としての効用を滅失・減少させることと解されています。
外国政府の請求
外国国章損壊罪は,外国政府の請求がなければ公訴を提起できません。請求とは告訴と同じで,捜査機関に対して処罰を求める意思表示のことです。
告訴ではないのは,外国政府に日本の刑事訴訟法の告訴手続を踏ませるのが国際礼譲上好ましくないという理由のようです。
日本国旗損壊罪は外国国章損壊罪とパラレルなのか?
日本国旗損壊罪を作ろうという理由は,冒頭で触れたように,外国国章損壊罪はあるのに,日本の国旗を損壊しても,日本国旗損壊罪がないじゃんというものです。日本の国旗を損壊しても罰則規定がないと書いてる記事もあるようですが,立件・処罰されるかどうかは,別にして,器物損壊罪は成立します。しかも,器物損壊罪の方が外国国章損壊罪よりも重い刑罰が科される可能性があります。
(器物損壊等) 第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
外国国章損壊罪は,それが外交問題に発展し,日本の安全を害するかもしれないということで,処罰されるわけですが,日本の国旗を損壊しても,外交問題とかに発展することはないんじゃない?と思います。特に日本人が日本の国旗を損壊したところで,気分を害する人はいるでしょうが,日本の外交や安全保障にはノーダメージでしょう。じゃぁ,外国人が日本国内で日本の国旗を損壊したらということを想定してるんでしょうか?しれっと立件すると逆に外交問題になったりしないんでしょうか?
ちなにみ,アメリカでは国旗を燃やすのは合憲か?という裁判があったそうです。で,国旗は自由の象徴で燃やすことを禁じると自由がなくなるから,国旗を燃やすのも言論の自由でそれを禁止する法律は違憲と判断されたそうです。
♪BUMP OF CHICKEN「メロディーフラッグ」(アルバム:jupiter収録)