2021年の確定申告の期限が迫ってますが,純損失の繰越控除と繰戻還付を取り上げてみます。
所得税の期間計算主義
所得税法は,所得税の計算をその年の1月1日~12月31日の1年間を単位に計算します。これを期間計算主義といいます。所得税法が期間計算主義を採用していることの理論的根拠はないと考えられています。要は,課税する以上,どっかで区切らないとということのようです。この期間計算主義の例外が,純損失の繰越控除と繰戻還付です。
純損失
純損失とは,損益通算を行った後に残る損失のことです。
所得税法は,所得を①利子所得,②配当所得,③不動産所得,④事業所得,⑤給与所得,⑥譲渡所得,⑦一時所得,⑧雑所得,⑨退職所得,⑩山林所得の10種類に分類しています。
ある人が1年間で稼いだり・手に入れた収入は,①~⑩のどれかの所得に分類されます。そして,それぞれの所得類型を合算する際に,マイナス(損失)を他のプラス(所得)と相殺します。これを損益通算といいます。ただ,すべての所得類型の損失が損益通算の対象になるわけではありません。損益通算の対象になるのは,事業所得,不動産所得,山林所得,譲渡所得の4つのみです。逆にいうと,この4つ以外の所得類型から生じた損失は,計算上は無視されます。
(損益通算)第六十九条 総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
純損失の繰越控除
第七十条 確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年(その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る。)において生じた純損失の金額(この項の規定により前年以前において控除されたもの及び第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)がある場合には、当該純損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該確定申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する。
4 第一項又は第二項の規定は、これらの規定に規定する居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、それぞれその後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する。
ある年に,純損失が生じた場合,向こう3年間,その純損失を未来の所得から控除できるというのが,純損失の繰越控除です。ただし,以下の条件(要件)を満たす必要があります。
純損失を未来の所得から控除するには,控除する年の確定申告は青色申告で行う必要があります。ちなみに,純損失が生じた年の確定申告を青色申告で行うことまでは要求されていません。さらに,純損失が発生した年以降,連続して確定申告をしていることが必要とされています。
純損失の繰戻還付
(純損失の繰戻しによる還付の請求)
第百四十条 青色申告書を提出する居住者は、その年において生じた純損失の金額がある場合には、当該申告書の提出と同時に、納税地の所轄税務署長に対し、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額に相当する所得税の還付を請求することができる。
一 その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第三章第一節(税率)の規定を適用して計算した所得税の額二 その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額から当該純損失の金額の全部又は一部を控除した金額につき第三章第一節の規定に準じて計算した所得税の額4 第一項の規定は、同項の居住者がその年の前年分の所得税につき青色申告書を提出している場合であつて、その年分の青色申告書をその提出期限までに提出した場合(税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合には、当該申告書をその提出期限後に提出した場合を含む。)に限り、適用する。
ある年に純損失が生じた場合,前年の所得から今年の純損失を控除し,納めた所得税を還付してもらえるのが,純損失の繰戻還付です。
純損失が生じた年と,還付される所得税を納めた年の両方とも,確定申告を青色申告で行うことが必要です。また,純損失の一部を繰戻還付の対象にして,残りを繰越控除の対象にすることもできます。
毎年,青色申告で確定申告する
以上を踏まえたこの話しの寓意は,確定申告は毎年,青色申告でやろうということです。税理士に確定申告をやってもらうのが確実ですが,会計や経理の勉強も兼ねて会計ソフトを使って自分でやってみるのもいいでしょう。
♪Mr.Children「hypnosis」(アルバム:[(an imitation) blood orange]収録)