副業の年収が300万円未満の場合、副業の収入が雑所得になるかもしれません。この話しの前提となる事業所得と雑所得の区別についてまとめておきます。
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300万円未満の副業の収入は雑所得?
国税庁が、2022年8月31日締め切りでパブコメを募集しています。というのも、通達である所得税基本通達を改正しようとしているからです。
所得税基本通達が改正されると、事業所得と雑所得の区別について、特に反証がない場合は、主たる所得ではなく、かつ、その収入が300万円未満の場合、雑所得として扱われることになります。要は、副業の収入が年間300万円未満の場合は、原則、雑所得になってしまうわけです。
働き方改革とか、副業の促進と言いつつ、税法では、副業を禁止しようとしているわけです。このパブコメの前提として、事業所得と雑所得の区別について、以下、簡単にまとめておきます。
所得分類
所得税法は、所得を10種類に分類しています。その10種類とは、①利子所得、②配当所得、③不動産所得、④事業所得、⑤給与所得、⑥退職所得、⑦山林所得、⑧譲渡所得、⑨一時所得、⑩雑所得です。
所得税の計算をするには、ある収入がどの所得に分類されるのか?を判断する必要があるのです。
事業所得
事業所得とは、その名のとおり、事業から生じる所得です。が、所得税法は、事業については定義していません。したがって、事業って何なのか?を解釈で確定する必要があります。
判例は、事業について何て言っているかというと、いろいろな考慮要素を挙げていますが、最終的には、社会通念上事業といえるかどうか?で判断すべきと元も子もないことを言っています。
社会通念上事業といえるか?という観点から考えると、誰がどうみても事業だよねといえる場合は、特に問題ありません。問題になるのは、社会通念上事業かどうか?微妙な場合です。つまり、事業所得と他の所得との区別こそが重要と考えられます。なので、事業所得って何?という問題には、これ以上立ち入らないことにします。
雑所得
雑所得とは、上記の所得分類の①~⑨のどれにも当てはまらない所得です。雑所得には、①公的年金等にかかる雑所得と②それ以外の雑所得に分類されます。
②の雑所得は、⑴営利を目的に継続的に行われた活動の成果と⑵営利を目的としない一時的・偶発的な労務提供の成果に区別することが可能です。
⑴営利を目的に継続的に行われた活動の成果とは、事業といえない規模・態様による経済活動を行った場合の成果と言い換えることができます。すると、この意味での雑所得と事業所得との区別が問題になります。
事業所得と雑所得の区別
事業所得と雑所得を区別しないといけないのは、損益通算ができるかどうか?に直結するからです。事業所得で損失が生じた、つまり、マイナスの場合、その損失を他の所得(たとえば、給与所得)から差し引くことができます。しかし、雑所得で損失が生じた、つまり、マイナスの場合は、その損失を他の所得から差し引くことはできません。
冒頭の国税庁のパブコメで、税法上は、副業を禁止しようとしていると書いたことの意味がわかってもらえたかと思います。会社員が副業で収入を得ていたが、ある年は、副業で赤字になったとします。副業の収入が事業所得なら、給与所得から損失を差し引くことができます。つまり、納める税金は少なくなります。が、雑所得なら、給与所得から損失を差し引くことはできないので、税金はそのまま納めます。というように、税法上、副業をするインセンティブが働かないんです。
所得発生の安定性
事業所得か雑所得かの区別は、重要だということがわかったところで、問題は、その区別の基準です。すでに書いたように、いろいろな要素を考慮して、社会通念上事業といえるか?が区別の基準です。
そんな中でも、裁判例で、重視されている要素と言われているのが、所得発生の安定性です。ざっくり言うと、その経済活動から得られる収入で生活できる場合は事業に該当する、本業のほかに片手間でやっている場合は事業ではないというわけです。
事業所得か雑所得かが裁判で争われるのは、結局のところ、損益通算できるかどうか?という問題です。つまり、損失が生じている場合がほとんどなわけです。裁判所は、損失が生じやすい投機的な経済活動は、他に本業があるからできる、本業のほかに片手間でやっているで、事業ではないと判断する傾向にあります。
冒頭のパブコメも、年収が300万円未満の場合は、本業の片手間でやってると推定していいという考えに基づいているんでしょう。
♪Mr.Children「あんまり覚えてないや」(アルバム:HOME収録)