2021年11月18日 2021年11月18日 sir.child

文書交通滞在費の話し

ここ数日，国会議員に支給される文書交通滞在費が注目を集めています。そこで，文書交通滞在費について法律の規定を確認することにします。

文書交通滞在費をめぐる問題

　2021年10月31日投開票の衆議院選挙で当選した新人議員に対して，10月分の文書交通滞在費100万円が丸々支給されるのはおかしいと，日本維新の会の新人議員から問題提起があり，文書交通滞在費をめぐる問題がクローズアップされました。

　それを受けて，日本維新の会は，党に全額寄付させて，しかるべくところに寄付する意向を明らかにしました。また，自民党も新人議員には，寄付させるようです。

　なんで，こんな問題が生じたのか？文書交通滞在費について，法律の規定を確認しておこうと思います。

　文書交通滞在費の大元の根拠規定は，国会法38条です。書類の発送や通信のために，歳費とは別に手当が支給されることになっています。

第三十八条　議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。

　国会法38条を具体化したのが，国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の9条です。月額が100万円であること，非課税であることが規定されています。手当の名称が「文書交通滞在費」となっているので，通信費だけではなく，宿泊費とかに使ってもいいような書きっぷりです。

第九条　各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。

２　前項の文書通信交通滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。

　問題は，文書交通滞在費がなぜ，日割で支給されないのか？ということです。それは，国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律が，そう規定しているからです。

　11条に準用規定があります。この準用規定が，日割計算に関する規定の準用を除外しています。したがって，文書交通滞在費は日割で支給されないのです。あと地味に，「日」を「当月分」と読み替えると規定しているので，1か月分は丸々支給されるわけです。

第十一条　第三条から第六条まで（第四条の二を除く。）の規定は第九条の文書通信交通滞在費について、第九条第二項の規定は第八条の二の議会雑費並びに前条第一項の特殊乗車券及び航空券について準用する。この場合において、第三条及び第四条第一項中「日」とあるのは、「当月分」と読み替えるものとする。

　①まず，3条が議員は任期開始日から歳費を受けると規定しています。この規定を文書交通滞在費について準用するので，文書交通滞在費も任期開始日から支給されます。

第三条　議員は、その任期が開始する日から歳費を受ける。ただし、再選挙又は補欠選挙により議員となつた者は、その選挙の行われた日から、更正決定又は繰上補充により当選人と定められた議員は、その当選の確定した日からこれを受ける。

　②問題は，11条の括弧書きで準用されない4条の2という規定です。4条の2が，歳費を日割で支給することを規定しているのです。文書交通滞在費は，歳費，つまり，給料ではないので，日割り計算になじまないということなんだろうと思います。

第四条の二　第二条、第三条又は前条第一項の規定により歳費を受ける場合であつて、月の初日から受けるとき以外のとき又は月の末日まで受けるとき以外のときは、その歳費の額は、その月の現日数を基礎として、日割りによつて計算する。

　衆議院議員の任期開始日は，公職選挙法に規定があって，総選挙の期日からとなっています。だから，2021年10月31日から任期がスタートしちゃったんですネ。

第二百五十六条　衆議院議員の任期は、総選挙の期日から起算する。但し、任期満了に因る総選挙が衆議院議員の任期満了の日前に行われたときは、前任者の任期満了の日の翌日から起算する。

　ちなみに，月の途中で，国会議員を辞めても，その月の文書交通滞在費は100万円丸々支給されます。準用している4条の「日」を「当月分」と読み替えるからです。

第四条　議長、副議長及び議員が、任期満限、辞職、退職又は除名の場合には、その日までの歳費を受ける。

　文書交通滞在費を日割で支給するための法改正は，条文自体は，そう難しい話しではなく，11条の括弧書きと読替規定を削除すればいいだけです。

　もっとも，ホントに日割で支給することにしていいのか？という議論は，必要ですが，もう，みんな右に倣えってしてるんで，次の国会で，すんなり，改正されそうですね。

♪Mr.Children「Happy Song」（アルバム：[(an imitation) blood orange]収録）

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