東京都に4度目の緊急事態宣言,飲食店への酒類提供禁止を要請できるのか?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,東京都にまた緊急事態宣言が出されました…

4度目の緊急事態宣言

 新型コロナウイルスの感染の拡大→ちょっと落ち着く→感染拡大→ちょっと落ち着く→感染拡大を繰返し,東京都に4度目の緊急事態宣言が出されました。

 今度の緊急事態宣言では大規模施設の休業要請等はせず,飲食店での酒類提供を禁止し,さらに,酒類販売業者に対し,飲食店へ酒類提供禁止を要請するらしいです。販売業者に飲食店へ酒類提供を禁止するなんて要請できるのでしょうか?

緊急事態宣言に伴う権限

 緊急事態宣言が発令されると,行政にどんな権限があって,我々国民は,どんな自由が制限されるのか?は,新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言で触れました。少しだけ,振り返っておこうと思います。

住民に対する協力要請

 特措法45条が,緊急事態宣言に伴う感染を防止するための協力要請等について規定しています。特措法45条は,まず,住民に対して,不要不急の外出自粛要請等について規定しています。

第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

施設管理者に対する施設の利用制限

 次に特措法45条は,施設管理者に対して,施設の利用制限を規定しています。飲食店の時短営業の要請とかは,特措法45条2項を根拠にしています。

2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項及び第七十二条第二項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

酒類販売業者は,特措45条2項の施設に該当しない

 特措法45条2項の施設の利用制限等の対象になる施設は,特措法施行令11条に規定されています。ところが,酒類販売業者は,特措法施行令11条に規定されていません。ということは,飲食店へ酒類提供するなとかいう要請を受ける筋合いはないのです。

第十一条 法第四十五条第二項の政令で定める多数の者が利用する施設は、次のとおりとする。ただし、第三号から第十四号までに掲げる施設にあっては、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えるものに限る。
一 学校(第三号に掲げるものを除く。)
二 保育所、介護老人保健施設その他これらに類する通所又は短期間の入所により利用される福祉サービス又は保健医療サービスを提供する施設(通所又は短期間の入所の用に供する部分に限る。)
三 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学、同法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する高等課程を除く。)、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校その他これらに類する教育施設
四 劇場、観覧場、映画館又は演芸場
五 集会場又は公会堂
六 展示場
七 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗(食品、医薬品、医療機器その他衛生用品、再生医療等製品又は燃料その他生活に欠くことができない物品として厚生労働大臣が定めるものの売場を除く。)
八 ホテル又は旅館(集会の用に供する部分に限る。)
九 体育館、水泳場、ボーリング場その他これらに類する運動施設又は遊技場
十 博物館、美術館又は図書館
十一 キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホールその他これらに類する遊興施設
十二 理髪店、質屋、貸衣装屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
十三 自動車教習所、学習塾その他これらに類する学習支援業を営む施設
十四 飲食店、喫茶店その他設備を設けて客に飲食をさせる営業が行われる施設(第十一号に該当するものを除く。)
十五 第三号から前号までに掲げる施設であって、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えないもののうち、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等の発生の状況、動向若しくは原因又は社会状況を踏まえ、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため法第四十五条第二項の規定による要請を行うことが特に必要なものとして厚生労働大臣が定めて公示するもの

特措法24条9項の適用はあり得る

 ということで,緊急事態宣言に伴う特措法45条に基づいて,酒類販売業者に対して,何らかの要請をすることはできません。

 ただ,特措法24条9項の適用はあり得ます。特措法24条9項は,緊急事態宣言とか,まん延防止等重点措置に関係なく適用されます。

 特措法7条は,都道府県に対し,新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(都道府県行動計画)を作成することを求めています。特措法24条9条は,この行動計画を実施するに当たって,必要な協力をしてねという規定です。想定されてるのは,①手洗い・うがいの奨励をボランティア団体に広報してもらう,②学校や社会福祉施設等でイベントを延期・中止するといったことです。

 特措法24条9項に基づき,酒類販売業者に対して,飲食店に酒類提供するなと要請することはできるのかもしれません。個人的には,緊急事態宣言に伴う特措法45条2項でもできないことは要請できないんじゃないかと思っています。それできたら,何でもありになるので。もっとも,特措法45条2項と違い,要請に従わなかったとしても,「命令」するといったことはできません。

 最近の報道って,政府がこう言ってますとか,大臣がこう言ってますって,報道するだけで,それおかしくない?とは言わないんですよね…法令の根拠ないじゃん!?とかって,わかりそうなもんですが,わざとなのか?

9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

♪Mr.Children「潜水」(アルバム:I ♥ U収録)

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