当たり前のことをあえて規定?フリーランス新法成立

2023年4月28日にフリーランス新法やフリーランス保護法と呼んでた法律が成立しました。その概要を紹介します。

フリーランス新法・保護法

 確か、2022年の秋ぐらいから検討されていたフリーランス新法とかフリーランス保護法と呼ばれる法律が成立しました。正式な法律名は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。政府がこの法律を略すと、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」ということになるみたいです。かえって長くなってないか?

 成立した新法の概要をざっと見ておこうと思います。といっても、当たり前のことをあえて規定した法律という感じです。また、下請法を補完する法律という位置づけだと思います。

フリーランスって?

 そもそも、フリーランスって何者?という話しですが、フリーランスってそういう働き方のことを指しているようです。簡単にいうと、会社等の組織に属さずに、個人で仕事を請負うという働き方のことをフリーランスといいます。

 内閣府とか中小企業庁では、①自分で事業等を営んでいる、②従業員を雇用していない、③実店舗を持たない、④農林漁業従事者ではないという4つの要件を満たした事業者をフリーランスとしているらしいです。

 新法は、フリーランスという用語は使っていません。フリーランスに該当するのが、「特定受託事業者」です。特定受託事業者とは、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用していないものをいいます。法人でも役員が代表者1人のみで従業員がいない場合は、特定受託事業者に該当します。

 ということで、従業員を雇用してると特定受託事業者に該当しません。たとえば、漫画家がアシスタントを雇っていると、特定受託事業者ではありません。

特定業務委託事業者

 特定業務受託事業者、つまり、フリーランスに業務を委託する事業者が、特定業務委託事業者です。正確には、個人の場合は、従事員を使用していることが要件です。法人の場合は、2人上役員がいるか、従業員を使用していることが必要です。

 フリーランス新法が対象としているのは、特定業務委託事業者と特定業務委託事業者間の取引(業務委託)です。なので、フリーランスがフリーランスに業務を委託(この場合は再委託になると思われる)する場合は、対象外です。

業務委託

 さっきから業務委託、業務委託と言ってますが、業務委託についても、ちゃんと定義されています。業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成、役務の提供を委託することです。

 ここでいう情報成果物とは、①プログラム、②映画等の映像・音響、③文字・図形・記号等や色彩で構成されるもの(デザインとかロゴとか)、④政令で定めるものの4つです。

取引の適正化

 新法が目的にしているのは、特定業務委託事業者と特定業務委託事業者間の取引の適正化です。①契約内容の明示、②報酬の支払期日、③遵守事項について定めています。

①契約内容の明示

 特定業務受託事業者に業務を委託した場合、特定業務受託事業者の給付の内容、報酬の額などを書面等で明示しなければなりません。この条文の主語は、特定業務委託事業者ではなく、「業務委託事業者」となっています。フリーランスがフリーランスに業務を委託する場合も契約内容を書面等で明示する必要があります。

②報酬の支払期日

 特定業務委託事業者は、特定業務受託事業者から給付を受けた日から60日以内に報酬を支払わなければなりません。なお、再委託の場合は、発注元から支払いを受ける期日から30日以内となっています。

③遵守事項

 特定業務委託事業者が遵守すべき事項が規定されてますが、当たり前のことをあえて規定しています。たとえば、特定業務受託事業者の帰責事由なしに、受領を拒否するなとか、報酬を減額するなとか、返品するなとかです。

 ここに挙げた内容は、わざわざ新法で規定しなくても民法で対応できます。債権総論にこの手の話しが出てきます。

 敢えて新法で規定することで、ちゃんとしろよ!というメッセージを送ってるのでしょう。

特定業務受託事業者の就業環境の整備

 特定業務受託事業者であるフリーランスの就業環境を整備するための規定が置かれています。広告で募集するときは、正確な情報を書けとか、継続して業務を委託する場合は、育児・介護等と両立できるように必要な配慮をしろとか、ハラスメントに対する相談対応等の必要な環境整備をしろとか、継続して委託していた業務委託を中途解約する場合は、30日前までに予告しろといった内容です。

特定業務委託事業者が違反した場合

 特定業務委託事業者がこの法律に違反した場合、違反した内容に応じて、公取委・中小企業庁長官・厚労相が、助言・指導・報告徴収・立入検査・勧告・公表・命令をすることができます。また、命令違反・検査拒否等に対しては罰則があり、50万円以下の罰金が科されます。

フリーランス新法は下請法の補完

 上記のフリーランス新法の内容は、下請法の内容をほぼ同じです。下請法が適用されるには、新法の特定業務委託事業者に該当する親事業者が、資本金1000万円超である必要があります。

 フリーランスに業務を委託する事業者は、資本金が1000万円超ではない場合も多く、下請法が適用されてこなかったわけです。そこで、フリーランス新法で、特定業務委託事業者というカテゴリーを作って、下請法の網を被せた感じです。

 下請法は、基本的に法人間の取引を対象にしているので、フリーランスの取引に馴染みにくいという側面もありました。就業環境の整備は、下請法にはない独自のものとなっています。

♪Mr.Children「掌」(アルバム:シフクノオト収録)

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