新型コロナウィルスのせいで,ローンが払えなくなったら,コロナ版ローン減免制度を使ってみよう

新型コロナウィルスが自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインの対象になりました。そこで,コロナ版ローン減免制度の概要をまとめておきます。

コロナ版ローン減免制度とは?

 平成27年9月2日,災害救助法の適用を受けた自然災害の被災者で,住宅ローンや事業性ローン等を返済できなくなって,破産等の法的倒産手続の要件を充足する個人の債務者について,法的倒産手続を経ずに,債権者である金融機関との合意に基づいて行われる債務整理手続の準則として,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が定められました。

 このガイドラインは法的な拘束力はありませんが,金融機関等の関係団体が策定したもので,自発的に尊重・遵守されることが期待されています。

 地震等の自然災害が対象となっていた「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」について,2020年12月1日から新型コロナウィルスの影響による減収等によって,住宅ローンや事業性ローンを返済できなくなった個人の債務者についても対象となりました。

コロナ版ローン減免制度の対象者

 新型コロナウィルスの影響によって,収入・売上げ減少したことで,債務の返済が困難になった個人が対象です。事業者も対象になります。

コロナ版ローン減免制度の対象になる債務

 2020年2月1日(基準日)以前に負担していた債務が広く対象になります。債務には,住宅ローン,事業性ローン等広く含まれます。

 さらに,2020年2月2日以降,10月30日までに新型コロナウィルスの影響による収入・売上等の減少に対応することを主たる目的とする以下の債務も対象になります。

 (1)政府系金融機関の新型コロナウィルス感染症特別貸付

 (2)民間金融機関における実質無利子・無担保融資

 (3)民間金融機関における個人向け貸付

 このように,コロナ版ローン減免制度では,基準日以降に負担した債務も対象に含めることができるのが,大きな特徴になっています。なお,上記の(1)~(3)は例であって,緊急かつ一時的な生活や事業の維持に必須かどうかで対象かどうかが判断されます。

コロナ版ローン減免制度の利用の流れ

 コロナ版ローン減免制度を利用した際の進行をざっくりとまとめておきます。

メインバンクにコロナ版ローン減免制度の利用申出

まず,債務者自身がコロナ版ローン減免制度の利用をメインバンク(最も債務が多い金融機関)に申し出ることからスタートします。

債務の内容,収入,資産等について金融機関から聞かれるので,あらかじめ資料を準備して持参するのがいいでしょう。

STEP
1

コロナ版ローン減免制度の利用の同意

コロナ版ローン減免制度が利用できないことが明らかな場合を除き,10営業日以内に金融機関から同意書が届きます。

STEP
2

登録支援専門家の選任依頼

弁護士会などに登録支援専門家の選任を依頼します。登録支援専門家は,弁護士以外にも公認会計士,税理士,不動産鑑定士が存在します。ただし,弁護士以外は,一部の業務を行うことができません。

STEP
3

債務整理開始の申出

登録支援専門家が債権者である金融機関に債務整理開始の通知を出します。

STEP
4

調停条項案の作成

登録支援専門家の支援を受けて,調停条項案を作成します。また,調停条項案の作成に先立って,債権者と事前協議を行います。

STEP
5

調停条項案の提出・説明

登録支援専門家を通じて金融機関へ調停条項案を提出し,調停条項案がガイドラインに適合していることを債権者に説明します。

STEP
6

調停条項案へ債権者の同意

債権者である金融機関は,1か月以内に調停条項案に同意するかどうかを決める必要があります。

STEP
7

特定調停の申立て

すべての債権者から調停条項案に同意を得られたら,簡易裁判所へ特定調停の申立てをします。

STEP
8

調停成立・債務の返済

特定調停で調停が成立すれば,あとは,債権者へ返済していくことになります。

STEP
9

登録支援専門家への報酬は支払わなくていい

 コロナ版ローン減免制度を利用する債務者は,登録支援専門へ報酬を支払う必要はありません。ただし,特定調停を申立てる費用については負担する必要があります。

登録支援専門家は債務者の代理人ではない

 コロナ版ローン減免制度を利用する債務者は,登録支援専門家の支援を受けることができます。しかしながら,登録支援専門家は,公正・中立な立場で職務を行います。つまり,債務者の代理人ではないのです。なので,債務者自身が登録支援専門家を選ぶことはできません。

住宅ローンのある自宅残せる可能性がある

 コロナ版ローン減免制度では,住宅資金特別条項を含む調停条項案を作成することが認められています。これは,個人再生手続における住宅資金特別条項と同じものです。

一定の財産を残せる

 個人が破産した場合,自由財産の拡張という制度により99万円までの財産を手元に残すことができます。コロナ版ローン減免制度を利用した場合も,破産の際の自由財産の拡張と同様,一定の財産を手元に残すことが可能です。

 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインでは,上限500万円を目安という運用基準があります。しかし,コロナ版ローン減免制度では,「生活に必要な現預金等」と抽象的な記載になっており,明確な基準がありません。個別債務者ごとの事情をどこまで勘案していくかが問題となりそうです。

信用情報に登録されない

 破産や個人再生と違い,コロナ版ローン減免制度を利用したことは,信用情報に登録されません。

保証人に請求されない

 金融機関からの借入に際し,保証人を付けることを求められることがあります。主たる債務者が破産や個人再生の手続を行うと,当然,債権者は,保証人に対して,保証債務の支払いを求めます。

 しかし,コロナ版ローン減免制度を利用した場合,原則として,保証人に対して請求しないことになっています。ただし,例外的に保証人に請求することが相当と認められる場合は,保証人に請求されることになります。

コロナ版ローン減免制度を利用するメリット

 コロナ版ローン減免制度を利用しなくても,弁護士に債務整理を依頼して,任意整理,個人再生,破産の手続を行えば,同じようなことができます。

 コロナ版ローン減免制度を利用すると,①登録支援専門家の費用が要らない,②信用情報に登録されない,③保証人に請求されないというメリットがあります。これらは,普通に弁護士に債務整理を依頼すれば,得られないメリットです。

♪Mr.Children「PADDLE」(アルバム:シフクノオト収録)

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