リクルート事件の最高裁決定

リクルート事件の最高裁決定を紹介します。

リクルート事件

 自民党の派閥の裏金問題について、令和のリクルート事件だと称されることがあります。リクルート事件の詳細や顛末は、すでに、いろんなところでまとめられてると思います。

 ひねもすのたりでは、リクルート事件で、最高裁まで争われた最高裁平成11年10月20日決定を紹介することにします。政治家ルートとか政界ルートと言われてる事件の一つです。

最高裁平成11年10月20日決定

 事実関係について、最高裁自体は、「被告人は、内閣官房長官として、株式会社Bの代表取締役であるCらから、国の行政機関が国家公務員の採用に関し民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力願いたい旨の請託を受け、賄賂を収受した」としか言っていません。

事案の概要

 ということで、高裁判決から被告人が起訴された公訴事実を拾ってきます。一応、匿名になってますが、日本中がわかってる、意味のない匿名処理になってます。なんてたって、元官房長官ですからね。リクルート事件というと、未公開株のイメージがありますが、シンプルに現金(小切手ではあるが)も飛び交ってたんですね。

 被告人は、衆議院議員であり、昭和58年12月27日から昭和60年12月28日までの間、官房長官として、内閣の庶務、行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整等の内閣官房の事務を統轄する等の職務に従事していたものであるが、民間企業の大学等卒業予定者の早期採用選考を防止して求人求職秩序の確立を図るため、民間企業が行う求人活動等につき、企業と大学等卒業予定者の接触開始日を卒業前年の10月1日、企業の採用選考開始日を同年の11月1日とする旨の中央雇用対策協議会及びB1協会等で構成する就職問題懇談会の各申合せ(「就職協定」)が遵守されていないことを知悉していたところ、
 1 昭和59年3月中旬ころ、東京都千代田区永田町2丁目3番1号内閣官房長官公邸において、民間企業から掲載料を得て大学等卒業予定者向けの求人等に関する諸情報を掲載する新規学卒者向け就職情報誌の発行、配本等の事業を営む株式会社A3の代表取締役であるA1から、民間企業における就職協定が遵守されないのは、国の行政機関が公務員の採用に関して就職協定の趣旨を尊重しないことに一因があり、就職協定が存続、遵守されないとA3社の前記事業に多大の支障を来すので、国の行政機関において就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力願いたい旨の請託を受け、その報酬として供与されるものであることを知りながら、
 (1) 昭和59年8月10日ころ、同区a町b丁目c番d号eビルf号室C事務所において、A1らから、A3社代表取締役A1振出しに係る金額200万円の小切手1通及びA3社の関連会社である株式会社A4出版代表取締役A1振出しに係る金額300万円の小切手1通を受領し、
 (2) 昭和59年12月19日ころ、前記C事務所において、A1らから、A3社代表取締役A1振出しに係る金額100万円の小切手3通(金額合計300万円)及び株式会社A4出版代表取締役A1振出しに係る金額100万円の小切手2通(金額合計200万円)を受領し、
 2 昭和60年3月上旬ころ、前記公邸において、A1らから、前記1記載と同様の請託を受け、その請託及び前記1記載の請託の報酬として供与されるものであることを知りながら、
 (1) 昭和60年6月26日ころ、同区永田町2丁目3番1号内閣総理大臣官邸において、A1らから、A3社代表取締役A1振出しに係る金額100万円の小切手5通(金額合計500万円)を受領し、
 (2) 昭和60年12月5日ころ、前記eビルg号室C事務所において、A1らから、株式会社A4出版代表取締役A1振出しに係る金額100万円の小切手5通(金額合計500万円)を受領し、
 (3) 昭和61年9月30日ころ、前記C事務所等において、A1らから、同年10月30日に日本証券業協会に店頭売買有価証券として店頭登録されることが予定されており、登録後確実に値上がりすることが見込まれ、A1らと特別の関係にある者以外の一般人が入手することが極めて困難であるA2の株式を、登録後に見込まれる価格より明らかに低い1株当たり3,000円で1万株を譲り受けて取得し、
 もって、自己の前記職務に関して賄賂を収受したものである。

争点

 賄賂罪が成立するには、単に公務員が金品を受け取ったというだけではなく、「職務に関連して」金品を受け取ったことが要件になっています。つまり、公務員に賄賂と対価関係に立つ職務を左右できる権限があることが大前提です。したがって、公務員の職務権限をどこまで認めるのか?が賄賂罪の中心的な問題です。

 国の行政機関が、国家公務員の採用に関して、民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力することが、内閣官房長官の職務なのか?ということが争点です。というのも、法令上、そのような職務権限が明記されていないからです。

 もっと噛み砕くと、国家公務員の新卒採用について、青田買いしないでね!ということで、官房長官が金銭等を受け取ったわけですが、これって、官房長官の職務に関して、賄賂を受け取ったことになるの?という話しです。

最高裁の判断

 この事件は、一審で無罪、二審で有罪という経過をたどっています。最高裁は、以下のように、高裁の判断を是認、つまり、有罪と判断しています。 

 内閣官房長官は、内閣法13条3項により、「内閣官房の事務を統轄」するものとされ、内閣官房は、同法12条2項により、「閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整に関する事務を掌る」ものとされているところ、前記請託の内容は、国家公務員の採用という国の行政機関全体にわたる事項について適切な措置を採ることを求めるものであって、内閣官房の所掌する事務に当たり、内閣官房長官の職務権限に属するということができるから、これと同旨の原判決の判断は、正当である。

♪Mr.Children「アンダーシャツ」(アルバム:DISCOVERY収録)

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