2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられます。それに伴い,マルチ商法に勧誘される若者が増えるのでは?というニュース記事を見たので,マルチ商法について,つらつらと書いておきます。
成人年齢の引下げ
2022年4月1日から,なぜか,成人年齢が引き下げられます。18歳になると成人になります。成人になると,法律行為を一人ですることができます。法律行為の典型は,契約なので,18歳になれば,契約を一人ですることができます。
契約を一人できるというのを言い換えると,未成年を理由に,その契約を取り消せないということを意味します。だからなんでしょうね,18歳,19歳が不当な契約に巻き込まれるのでは?みたいなニュース記事を見かけるようになりました。その一つがマルチ商法です。
マルチ商法とは?
マルチ商法は,アメリカ発祥のビジネスで,マルチ・レベル・マーケティング・システムとかいうらしいです。マルチとかマルチ商法というのは,通称で,特定商取引法(特商法)では,連鎖販売取引といいます。
ねずみ講
マルチ商法を語る上で,避けて通れないのが,ねずみ講です。マルチ商法は法律上禁止されていませんが,ねずみ講は,無限連鎖講防止法により禁止されています。
ねずみ講が法律で禁止されているのは,以下の3つの理由からです。
①終局的に破綻するビジネスモデルであること
②いたずらに関係者の射幸心をあおること
③加入者の相当部分の人が経済的な損失を被ること
法律上禁止されるねずみ講の定義は,以下の3つを満たす金品の配当組織です。
①金品を出捐する加入者が無限に増加するものとして,
②先に加入した者を先順位者,以下連鎖して段階的に2以上の倍率で増加する後続の加入者が後順位者となり,
③先順位者が後順位者の出捐する金品から自分が出捐した金品の価額・数量を上回る価額・数量の金品を受領する
簡単にいうと,こんな感じなのが,ねずみ講です。一人が会員を2人勧誘して入会させる。その後,入会した会員が2人ずつ会員を増やす。そうすると,入会金の一部を紹介料としてもらえ収入になる。
このシステムだと,27か月目に1億3421万7727人必要になり,確実に破綻してしまうわけです。
マルチ商法
本題に戻って,マルチ商法の話しをします。マルチ商法自体は法律上禁止されていません。ねずみ講との違いは,ねずみ講が金銭の配当を目的としているのに対し,マルチ商法は一応,商品やサービスの販売を伴っていることです。大学生がマルチ商法に勧誘されるケースが多く,大学が注意喚起を行ってますが,成人年齢の引下げに伴い,改めてクローズアップされているようです。
マルチ商法つまり,連鎖販売取引の定義は,以下のとおりです。
商品の再販売等について,①特定利益を収受し得ることをもって誘引し,②その者と特定負担を伴う③商品の販売等の取引をすることです。
特定利益
マルチ商法の大きな特徴は,特定利益が得られると言って勧誘することです。特定利益の法律上の定義は,商品の再販売等をする他の者が提供する取引料等の利益の全部又は一部です。以下の3つのパターンがありますが,要するに,マージンだったり,紹介料のことです。
(1)あなたが勧誘して加入した人の提供する取引料の〇〇%があなたのものになる。
(2)あなたが勧誘して加入した人が購入する商品代金の〇〇%があなたのものになる。
(3)あなたが勧誘して加入する人がいれば,統括者から一定の紹介料がもらえる。
特定負担
マルチ商法で重要なもう一つ要素は,特定負担です。特定負担とは,商品の購入等の支払いまたは取引料の提供のことです。連鎖販売取引に伴う負担で,再販売等を行う者が負うあらゆる金銭的負担を含みます。
たとえば,再販売等を行うのに必要なスターターキットの購入や再販売等を行うための商品の購入であったり,入会金や登録料などあらゆるものが含まれます。
マルチ商法の規制
マルチ商法は,特商法上,いろいろな規制があります。その規制は,①広告規制,②書面の交付義務,③氏名等の明示義務,④不実告知・故意の事実告知の禁止,⑤威迫・困惑行為の禁止,⑥断定的判断の提供の禁止等です。
マルチ商法に勧誘され,契約してしまったら…
マルチ商法に勧誘され,契約してしまった場合,もう契約を取り消したりできないのでしょうか?特商法には,いくつかの救済方法を用意しています。
クーリングオフ
クーリングオフは,契約を一方的に,無条件で理由を問わずに取り消せるものです。最も有効な方法です。
マルチ商法の場合,クーリングオフの期間は,契約書面の交付を受けた日から20日間と長期の期間が設けられています。ちなみに,クーリングオフは,必ず書面でする必要があります。証明のためにも内容証明郵便でするのがいいでしょう。
20日間のクーリングオフ期間がスタートするのは,契約書面の交付を受けた日からです。したがって,契約書面の交付がない場合や契約書面の交付はあるが,法律の要件を満たしていない場合は,永久にクーリングオフができます。
また,特定負担が再販売する商品の購入の場合で,契約書面の交付後に商品を受取った場合は,商品を受取った日からクーリングオフ期間がスタートします。
中途解約
マルチ商法では,結局,思う様に利益が上げられないとか,自分の利益を上げるため又は損害を減らすために強引な勧誘を行うといった弊害が生じます。そこで,クーリングオフ期間の20日が過ぎてしまった後でも,一定の範囲で中途解約が認められています。
クーリングオフ期間経過後,連鎖販売契約を将来に向かって解除することができます。中途解約した場合,マルチ商法の事業者が請求できる損害賠償の金額には上限が設けられています。
マルチ商法の事業者が加入者に商品販売を行っていた場合で,連鎖販売契約を中途解約し,かつ契約から1年を経過していない場合は,商品販売契約を解除することができます。この場合も損害賠償の金額には上限が設けられています。
取消権
統括者や勧誘者が不実告知・故意の事実不告知を行った場合,連鎖販売契約を取り消すことができます。
♪Mr.Children「ランニングハイ」(アルバム:I ♥ U収録)