2021年7月6日に改正特商法が施行されます。7月6日以降は,ネガティブオプションで送付された商品を勝手に処分することができます。
ネガティブオプションって?
ネガティブオプションは,事業者が,注文していないにもかかわらず,ある商品を一方的に,消費者に送り付け,その商品代金を請求するというものです。たいていは,「何日以内に商品を返送しないと購入したものとみなす」とか,「開封したら購入したものとみなす」的な文書が添えられています。送り付け商法や押し付け商法とも言われます。
商品を送り付けられた消費者は,「商品が届いた以上,支払いをしないといけない」とか,「開封してしまったので,支払いをしないといけない」と勝手に思い込み,代金を支払ってしまうことがあります。ネガティブオプションは,そんな消費者の心理に付け込んだ悪質な商法なんです。
ある日突然,商品を送り付けられたらどうする?
では,ある日突然,商品を送り付けられたらどうすればいいのでしょうか?結論からいうと,そのまま放置しておけばいいんです。以下,改正前特商法のルールを含め簡単に解説します。
①契約は成立していない
ある商品を買うという売買契約は,①商品Aを〇〇円で売るという意思表示と②商品Aを○○円で買うという意思表示が合致しないと成立しません。法律的にいうと,①申込と②承諾の意思表示が必要なわけです。
ネガティブオプションでは,一方的に商品を送り付けているので,消費者の②商品Aを○○円で買うという意思表示が存在しないのです。したがって,売買契約は成立していません。売買契約が成立していない以上,商品代金を支払う義務はないのです。
ネガティブオプションでは,「何日以内に返品しないと購入したものとみなす」とかいう書面が同封されていることが多いと思います。そんな書面があっても,消費者の②商品Aを○○円で買うという意思表示は,やはり存在しないので,売買契約は存在しないのです。
②商品は処分できない
商品代金を支払う義務がないことは,わかりました。でも,手元には,一方的に送り付けられた要らない商品があります。この商品は,どうしたらいいのでしょうか?処分しても問題ないのでしょうか?
商品の売買契約が成立していないので,商品の所有権は,送り付けてきた事業者にあります。なので,消費者が勝手に商品を処分することはできないのです。
③14日経ったら処分してもいい
商品が処分できないとなると,一生,保管しておかないといけないんでしょうか?勝手に送り付けられたにもかかわらず,そんな負担は負いたくないですよネ。
そこで,特商法59条は,商品返還請求権の喪失を規定しています。
(売買契約に基づかないで送付された商品)第五十九条 販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合において、その商品の送付があつた日から起算して十四日を経過する日(その日が、その商品の送付を受けた者が販売業者に対してその商品の引取りの請求をした場合におけるその請求の日から起算して七日を経過する日後であるときは、その七日を経過する日)までに、その商品の送付を受けた者がその申込みにつき承諾をせず、かつ、販売業者がその商品の引取りをしないときは、その送付した商品の返還を請求することができない。
要するに,商品が送り付けられた日から14日を経過したら,事業者はその商品を返せといえなくなります。事業者に商品の返還請求権がなくなるので,消費者がその商品を処分してもいいのです。
ちなみに,消費者が事業者に商品を引き取ってくれと請求すれば,7日に期間を短縮することができます。ネガティブオプションなんてしてくる事業者に対して,あえてコンタクトを取るような余計なことをする必要はないと思うので,14日待てばいいと思います。
特商法の改正で商品をいきなり処分できるようになる
以上が,ネガティブオプションに対するこれまでの対処法です。2021年7月6日に特商法が改正されます。改正後の特商法では,14日待たなくても,商品をいきなり処分することができるようになります。
いきなり処分できるのは,2021年7月6日以降に届いた商品です。それまでに届いた商品は,これまで通り,14日待ってから処分するようにしてください。
♪Mr.Children「Worlds end」(アルバム:I ♥ U収録)