買収防衛策の話し

Twitter社は,イーロン・マスク氏からの買収提案を拒絶し,買収防衛策を発動すると報道されました。そこで,買収防衛策の話しをします。

敵対的買収と買収防衛策

 A(会社でも個人でもいい)が,X社を買収しようと,X社の経営陣に買収を提案したとします。X社の経営陣がAの買収を受け入れると,友好的買収となります。しかし,X社の経営陣がAの買収を拒絶し,それでもAがX社を買収しようとすると,敵対的買収となります。つまり,敵対的買収とは,経営陣にとって敵対的という意味で,この段階では,株主は蚊帳の外なんですね。

 敵対的買収に対して,経営陣は,買収防衛策を取ることがあります。平時から企業価値を高め,株価を高くするのが,一番の買収防衛策なのですが,一般には,敵対的買収に直面して,発動されるのを買収防衛策と呼んでいます。

事前警告型買収防衛策

 買収防衛策には,①取締役会限りで発動するもの,②株主総会の承認を経て発動されるのもがあります。今回は,①の事前警告型買収防衛策を取り上げます。

 事前警告型買収防衛策は,アメリカでポイズン・ピルとかライツ・プランと呼ばれる差別的な内容の新株予約権の無償割当てを用いる買収防衛策の日本版です。

概要

 事前警告型買収防衛策は,会社を買収しようとする者に対して,以下の事項を要求し,買収者がそれに応じない場合に,差別的な内容の新株予約権の無償割当て等の防衛策を発動することをあらかじめ公表するものです。

 ①買収後の事業計画等の情報提供を行うこと

 ②取締役会が買収提案を検討し,必要に応じて代替案を株主に提示する期間を確保できるように求める

 つまり,買収防衛策の公表時には,発動せず,将来発動することがあると警告するものなので,事前警告型と呼ばれています。

差別的な内容の新株予約権

 ここでいう新株予約権は,以下のような条件が付いた新株予約権です。

 ①買収者以外の株主のみが行使できる:差別的行使要件

 ②買収者以外の株主のみから,普通株式を対価として新株予約権を取得できる条項を付ける:差別的取得条項

 つまり,買収者も株主である以上,新株予約権は割当てられます。しかし,買収者は,行使することも取得されることもできません。そして,この新株予約権が行使又は取得されると,新株が発行され,買収者の持株比率が低下するわけです。

ポイズン・ピルとの違い

 アメリカのポイズン・ピルは,買収防衛策の導入時に,新株予約権が株主に無償割当てされます。その後,株式が譲渡されると,新株予約権も株式と一緒に移転することになっています。

 一方,日本では,新株予約権が株式と一緒に移転することは,会社法が許容していない態様の株式の譲渡なので,認められないと解されています。つまり,買収防衛策の導入時に新株予約権を株主に無償割当てすると,その後,買収者が現れた時には,株主と新株予約権者が別になってしまっています。したがって,その時点で,新株予約権が行使されると,買収者以外の株式も損害を被る可能性があります。そこで,買収防衛策の導入時ではなく,発動時に新株予約権を割当てる事前警告型買収防衛策が普及したと言われています。

♪Mr.Children「SINGLES」(アルバム:重力と呼吸 収録)

Follow me!