DEATH NOTE(aキラ編)から見る遡及処罰の禁止

刑法の大原則である罪刑法定主義から遡及処罰の禁止が導かれます。DEATH NOTEのaキラ編が遡及処罰の禁止を理解するのにうってつけでした。

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罪刑法定主義

 刑法の大原則に罪刑法定主義という考えがあります。罪刑法定主義とは,簡単に言うと,「法律なければ刑罰なし」という原則のことです。

 この罪刑法定主義からいくつかの派生原理が導かれます。それは,①法律主義,②事後法の禁止,③類推解釈の禁止,④明確性の原則,⑤刑罰法規の適正です。②事後法の禁止というのが,遡及処罰の禁止ということです。

遡及処罰の禁止

 ある行為が処罰されるかどうかは,事前に法律で規定されている必要があります。これは,罪刑法定主義から導かれる要請です。

 ある行為Aが行為時には適法だったとします。その後,法律によってAは,違法だと規定されたとします。法律に規定があるので,Aを行った人を無制限に処罰できるか?というと,そういうわけにはいきません。なぜなら,行為時は,Aという行為は適法だったからです。つまり,「法律なければ刑罰なし」という原則は,「『現在の』法律になければ刑罰なし」という原則なのです。

 したがって,後から,やっぱりあの行為は処罰しますということはできないのです。この遡及処罰の禁止は,憲法上の要請です。憲法39条に規定があります。

 第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 遡及処罰が禁止されないと,どういうことになるのかを先日発売されたDEATH NOTE短編集のaキラ編から見てみましょう。

DEATH NOTE aキラ編

 人間界のリンゴの味に占めた死神リューク。リュークは,デスノートを人間に使わせ,その間リンゴを食べさせてもらおうと,再び人間界へ。リュークが目を付けたのが田中実という少年だった。実は,勉強はできないが,3年連続知能テスト全国1位の頭の良さを持っていた。リュークに出会い混乱する実。実は,リュークからキラのことを詳しく聴き,リュークが自分にキラと同じことを期待していると察する。実は,数時間,考えを巡らせ,リュークに2年後に再び来るように言い,デスノートの所有権をいったん放棄する。

 2年後,再び,リュークが現れ,デスノートに関する記憶を取り戻した実は,デスノートをオークションにかけて売ると言い出す。果たして,実は,どんな方法でデスノートを売るのか?

 というのが,aキラ編のあらすじです。以下,結末部分のネタバレになります。

ルールの後付け

 L(ニア)をも出し抜き,デスノートの売却に成功した実。しかし,リュークが死神大王から,デスノートを売買するとは何事かと怒られ,新たなルールが作られる。そのルールは,デスノートを売買した者は死ぬというもの。デスノートを買ったアメリカ政府は,大統領がこの新しいルールをリュークから聞き,デスノートを受け取らず,死を免れる。一方,デスノートを売った実はというと,リュークに二度と現れるなと約束させていたので,リュークがその約束を律儀に守り,新しいルールを知ることなく死んでしまう。

aキラ編から見る遡及処罰の禁止の重要性

 DEATH NOTEのaキラ編から遡及処罰の禁止の重要性を理解することができます。デスノートのルールは刑罰ではないし,死神が人間の法律に縛られるのか?というそもそも論はおいといて,刑罰に置き換えればいいわけです。

 リュークが実にデスノートを渡した時点では,デスノートの売買は,何らルールに違反するものではありませんでした。その後,死神の都合で,急遽,ルールに加えられます。しかも,遡って適用されてしまいます。

 刑罰法規も同じで,行為時には,違法ではなかった行為が後に違法とされ,処罰されると,我々は,行動が大きく制限されまてしまいます。何か行動するにしても,後から処罰されるかもしれないというリスクがつきまとうのです。さらに,特定の人物を狙い撃ちして,後から,あいつのやったことを違法にしようぜなんてされると,たまったものではありません。これをやっちゃってるのが韓国なんですが…

 なので,遡及処罰の禁止という原則が,憲法にもしっかりと明記されているのです。図らずしも,DEATH NOTEのaキラ編から遡及処罰の禁止のことが思い浮かんだので,ツラツラと書いてみました。

DEATH NOTE 短編集

 DEATH NOTE 短編集には,aキラ編以外に,Cキラ編,最初の読切り鏡太郎編,四コマなどが収録されています。

♪Mr.Children「ニシエヒガシエ」(アルバム:DISCOVERY収録)

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