2021年9月30日をもって,19都道府県に発令されていた緊急事態宣言が解除されます。宣言解除後も,飲食店での酒類提供の何らかの規制は,続くようです。しかし,この規制には法的根拠がないんじゃないか?という話しです。
緊急事態宣言の全面解除
2021年9月30日をもって,東京都や大阪府に発令されている緊急事態宣言が解除されます。また,同日,8県に発令されていたまん延防止等重点措置も解除されます。そして,緊急事態宣言からまん延防止等重点措置への移行はないので,全面解除ということになります。
ところが,政府によると,緊急事態宣言発令されていた都道府県では,感染再拡大を防止するため,規制を全面解除することはせず,ステージⅡになるまで,段階的に緩和していくそうです。
ここで,大きな疑問が生じます。緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も適用しないのに,規制をする法的根拠はあるのか?ということです。マスメディアは,この点を無批判に報道するだけなので,検討してみましょう。飲食店への規制に絞ってますが,イベントなどの他の規制についても同様です。
緊急事態宣言解除後の飲食店への規制
そもそも,緊急事態宣言解除後に,どんな規制をするのでしょうか?東京都の飲食店への規定にしぼって,確認します。まず,10月1日~24日までをリバウンド防止措置期間とするそうです。飲食店への規制は,東京都の認証があるかどうかで,変わります。
認証がある飲食店への規制
(1)営業時間:5時~21時
(2)酒類の提供・持込み:11時~20時,20時はラストオーダーで,実際の提供が20時を超えてもいい。
(3)人数:1グループ4人以内,5人以上のグループでも4人以下に分かれて,別々のテーブルに座れば,酒類提供可能
非認証の飲食店への規制
(1)営業時間:5時~21時
(2)酒類提供・持込み:自粛要請
緊急事態宣言解除後の規制に法的根拠はあるのか?
緊急事態宣言解除後,まん延防止等重点措置に移行しないにもかかわらず,上記のような規制をすることができるのでしょうか?新型コロナウイルスの感染拡大を理由とする事業者への規制の根拠になっているのは,新型インフルエンザ等対策特別措置法です。特措法に根拠条文があればOKです。
緊急事態宣言,まん延防止等重点措置の場合,時短営業等の根拠条文がある
緊急事態宣言,まん延防止等重点措置が発令されている場合は,飲食店への時短営業等の規制は,根拠条文があります。緊急事態宣言の場合は,特措法45条2項・施行令11条です(新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言参照)。まん延防止等重点措置の場合は,特措法31条の6です(新型インフルエンザ等特措法のまん延防止等重点措置参照)。
平時の時短営業等の根拠条文は?
問題なのは,緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も発令されていない場合です。おそらく,政府は,特措法24条9項を根拠にしてるんだろうと思います。
9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。
都道府県対策本部長というのは,知事のことです(特措法23条1項)。つまり,ざっくりいうと,都道府県知事は,民間人に対して,新型コロナウイルス対策の実施に関して,必要な協力を要請できるというのが,特措法24条9項です。
そもそも,特措法7条は,都道府県に対し,新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(都道府県行動計画)を作成することを求めています。特措法24条9条は,この行動計画を実施するに当たって,必要な協力をしてねという規定です。ここで想定されてるのは,①手洗い・うがいの奨励をボランティア団体に広報してもらう,②学校や社会福祉施設等でイベントを延期・中止するといったことです。
特措法は,感染症の流行に段階があることを前提に,感染拡大の防止と国民の権利の保護を両立しようとしています。感染拡大の防止は,国民の権利の制限につながるので,段階を経て,権利の制限を強めているわけです。
という特措法の建前からすると,飲食店の時短営業等の規制は,まん延防止等重点措置が適用されて初めてできる措置だと考えるのが,自然でしょう。そうしないと,特措法24条9項を盾に,行政が,住民に対して,1歩たりとも外へ出るなとか,何でもできちゃうことになるからです。
なので,緊急事態宣言解除後の規制は,法的根拠のあるものではなく,知事の単なるお願いというレベルなわけです。お願いといっても,要請に従えば,協力金がもらえるお願いではありますが。したがって,知事のお願いをきくかどうかは,事業者の自由ということになります。ただ,要請に従わずに,クラスターなんて起きたら,袋叩きにあうかもしれませんが…
もっとも,特措法24条9項は,緊急事態宣言の特措法45条2項やまん延防止等重点措置の特措法31条の6とことなり,従わなかったからといって,それ以上,知事は何もできません。
♪Mr.Children「フラジャイル」(アルバム:B-SIDE収録)