会社退職時のルール

労働者が会社を退職する場合のルールをまとめておきます。

労働者が会社を退職したい場合の規律は?

 新年度が始まり1か月以上がすぎ、ゴールデンウイークも過ぎて、五月病になっているという人もいるかもしれません。また、入社・転職した会社がブラック企業だったので、一刻も早く会社を辞めたいという人もいるかもしれません。以下、労働者が会社を退職する場合の法律の規律を見ておこうと思います。

 会社が労働者を退職させる解雇等については、労働法に規定があります。しかし、労働者が自ら会社を退職する場合の規定は、労働法にはありません。一般法である民法に、退職に関する規定があります。

労働契約に期間の定めがあるかどうかでルールが異なる

 労働者が一方的に会社を辞める(法律では辞職という。)場合のルール、労働契約に期間の定めがあるかどうかによって異なります。

①労働者はいつでも退職できる

 期間の定めのない労働契約の場合、労働者は、いつでも退職を申入れることができます。退職の理由は必要ありません。そして、退職の申入れから2週間後に退職(労働契約終了)となります。

 正社員の場合は、期間の定めのない労働契約であることが通常です。なので、退職する場合は、退職日の2週間前に会社に退職の申入れを行えばいいということです。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

②完全月給制の場合

 遅刻、早退、欠勤等によって給与が減額されない完全月給制の労働者の場合、退職は次の期間以降で、退職の申入れはその期間の前半にする必要があります。

 要するに、退職の申入れを月の前半に行えば、翌月1日以降に退職の効力が発生するということです。

 以上は、民法の規定に基づくルールです。その民法が改正され、②のルールは、労働者からの退職には適用されません。なので、完全月給制の場合でも①と同様、2週間前に退職の申入れをすればいいわけです。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

③年俸制の場合

 年俸制のように、6か月以上の期間で報酬を定めた場合は、退職の申入れを3か月以上前にする必要があります。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

④期間の定めがある場合は、期間途中の退職はできない

 契約社員など期間の定めのある労働契約の場合、労働者は、原則、労働契約の期間の途中で退職することはできません。

⑤期間の定めがあっても5年経過すれば、いつでも退職できる

 期間の定めのない労働契約の場合でも、5年を経過すれば、いつでも退職できます。ただし、労基法14条1項で労働契約の期間は原則、3年を超えてはならないとされているので、この規定が適用される場面は、ほぼないと考えられます。

(期間の定めのある雇用の解除)
第六百二十六条 雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。

⑥労働契約が更新された場合、①のルールによる

 期間の定めのある労働契約の期間満了後、会社・労働者とも異議なく、事実上継続された場合、従前と同じ労働条件で更新されたと推定されます。

 この同じ条件に期間の定めが含まれるのか?という問題があるのですが、その点に、ここでは立ち入りません。

 労働契約が更新された場合、労働者は①のルールに従って、2週間前に退職の申入れをすることによって、退職することができます。

(雇用の更新の推定等)
第六百二十九条 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。

⑦やむを得ない事由があれば、即時、退職できる

 期間の定めがある労働契約の場合でも、やむを得ない事由ある場合は、即、退職することができます。

 やむを得ない事由としては、家族の事情で引越しすることになった、職場でハラスメントがあったといった事情が挙げられています。

 ちなみに、やむを得ない事由がある場合の即時、退職は、期間の定めのない労働契約の場合にも適用されます。

(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

就業規則で退職は1か月以上前にすると規定されている場合

 会社の就業規則で退職する場合は、1か月以上前にしなければならないと規定されていることがあります。

 このような就業規則の定めが有効だという学説もあります。民法の2週間の予告期間で退職できるという規定に違反して無効だという学説もあります。裁判例では就業規則を無効だと判断したものもあります。

♪Mr.Children「雨のち晴れ」(アルバム:Atomic Heart収録)

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