50年前の計画に基づいて建設される整備新幹線

2022年9月に西九州新幹線の長崎-武雄温泉間が開業し、2023年度末に北陸新幹線の金沢-敦賀間が延伸開業します。さらに、北海道新幹線の新函館北斗-札幌間の延伸工事が進められています。これらは整備新幹線です。

西九州新幹線の一部開業、北陸新幹線・北海道新幹線の延伸

 リードで書きましたが、2022年9月に西九州新幹線が長崎-武雄温泉間の約66㎞という中途半端な区間で開業しました。2023年度末には、北陸新幹線の金沢-敦賀間が延伸開業します。さらに、北海道新幹線も新函館北斗-札幌間の延伸工事が行われています。

 これら3つの新幹線に共通しているのは、整備新幹線ということです。整備新幹線とは何なんでしょうか?

整備新幹線とは?

 日本で新幹線と呼ばれてるのは、10路線です。ミニ新幹線である⑤山形新幹線と⑥秋田新幹線は新幹線ではありませんが、一応、挙げておきます。

 ①東海道:東京-新大阪

 ②山陽:新大阪-博多

 ③東北:東京:新青森

 ④上越:大宮-新潟

 ⑤山形:福島-新庄

 ⑥秋田:盛岡-秋田

 ⑦北陸:高崎-金沢

 ⑧九州:博多-鹿児島中央

 ⑨北海道:新青森-新函館北斗

 ⑩西九州:武雄温泉-長崎

 このうち、整備新幹線なのは、③東北新幹線の盛岡-青森間と⑦北陸新幹線、⑧九州新幹線、⑨北海道新幹線と⑩西九州新幹線の5つです。整備新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づいて整備計画が決定された路線なのです。

 ちなみに、JR東海が建設しているリニア中央新幹線は、全国新幹線整備法に基づく路線ですが、整備計画が、上記5つよりも最近なので、整備新幹線には含まれていません。

全国新幹線整備法

 整備新幹線の根拠となっている法律である全国新幹線整備法を少し見ておこうと思います。この法律は、昭和45年に制定された法律です。整備新幹線の5つの整備計画が策定されたのは、昭和48年です。つまり、50年前に計画した新幹線を今、造ってるという状況なんです。

目的

 法律には目的規定といって、何のために制定された法律なのかということを謳っていることがあります。新幹線整備法にも1条に目的規定が存在します。

(目的)

第一条 この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。

 全国津々浦々を新幹線で結びぞという今では無謀としか言いようがない目的をもった法律です。

新幹線の定義

 新幹線整備法に新幹線の定義規定があります。主要区間を時速200キロメートル以上で走行する鉄道ということで、新幹線のイメージからすると、控えめな定義になってます。

(定義)

第二条 この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。

整備計画

 現在、整備新幹線を建設しているのは、昭和48年の整備計画に基づいているからです。整備計画の根拠規定が7条にあります。

(整備計画)

第七条 国土交通大臣は、第五条第一項の調査の結果に基づき、政令で定めるところにより、基本計画で定められた建設線の建設に関する整備計画(以下「整備計画」という。)を決定しなければならない。

建設の指示

 整備計画が決定されれば、計画に基づいて新幹線を建設しなければならないわけです。要は、整備新幹線は、国の事業なんですね。もっとも、整備計画に変更があることが前提になってます。ということは、建設しないという方向に変更することもあり得るハズです。

(建設線の建設の指示)

第八条 国土交通大臣は、前条の規定により整備計画を決定したときは、建設主体に対し、整備計画に基づいて当該建設線の建設を行うべきことを指示しなければならない。整備計画を変更したときも、同様とする。

建設費の負担

 整備新幹線が国の事業ということで、建設費は国と都道府県が負担することになっています。このことが、西九州新幹線の武雄温泉-新鳥栖間の建設に佐賀県が難色を示している理由の一つでもあるのでしょう。

(建設費用の負担等)

第十三条 機構が行う新幹線鉄道の建設に関する工事に要する費用(営業主体から支払を受ける新幹線鉄道に係る鉄道施設の貸付料その他の機構の新幹線鉄道に係る業務に係る収入をもつて充てるものとして政令で定めるところにより算定される額に相当する部分を除く。)は、政令で定めるところにより、国及び当該新幹線鉄道の存する都道府県が負担する。

 都道府県は、その区域内の市町村で当該新幹線鉄道の建設により利益を受けるものに対し、その利益を受ける限度において、当該都道府県が前項の規定により負担すべき負担金の一部を負担させることができる。

 前項の規定により市町村が負担すべき金額は、当該市町村の意見を聴いた上、当該都道府県の議会の議決を経て定めなければならない。

 地方公共団体は、第一項及び第二項に規定するもののほか、新幹線鉄道に関し、その建設に要する土地の取得のあつせんその他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

♪Mr.Children「光の射す方へ」(アルバム:DISCOVERY収録)

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