労働法上の労働者とは?-労基法上の労働者編

2022年6月6日、東京地裁は、コンビニオーナーが労働組合法上の労働者ではないとする判決を出しました。そこで、労働法上の労働者性をまとめてみました。今回は、労働基準法上の労働者とは?をまとめました。

労働法における労働者

 労働法における「労働者」とは、労働法が適用されるかどうか?という労働法の適用対象の問題です。

 労働法における労働者は、適用される法規の違いにより、①労働基準法上の労働者、②労働組合法上の労働者、③労働契約法上の労働者の3つに分類されます。

労基法上の労働者

 労基法上の労働者は、労基法のみならず、労基法を基礎とした労働関係諸法規の適用対象かどうか?の基準となります。

 労基法上の労働者は、9条に規定されています。

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

 ①事業に使用され、②賃金を支払われる者が、労基法上の労働者です。つまり、判断基準は、①使用性と②賃金性の2つです。

事業

 労働者性の判断に関して、事業の意義が問題になることはありませんが、簡単に触れておきます。

 事業とは、業として継続的に行われるものを意味します。営利・非営利を問いません。法人・個人も問いません。

 継続的に行われることが必要なので、個人が自宅の庭の植木の剪定ために、一時的に職人を使用した場合は、事業には該当しません。

労働者性の判断基準

 労基法上の労働者性の判断基準は、前述のとおり、①使用性と②賃金性の2つです。

 ①使用性は、指揮監督を受けて働くことを意味し、②賃金性は、労働の対償として使用者が支払う報酬のことです。これだけでは、労働者性の判断基準としては、ざっくりしすぎています。

 1985年12月19日、労働基準法研究会報告「労働基準法の労働者の判断基準について」が、これまでの裁判例・学説・解釈例規等を踏まえて、判断基準を示しました。実務的に非常に参考になります。

①使用性

 使用性の判断について、以下の4つを具体的に検討します。

 (1)仕事の依頼、業務従事の指示等の諾否の自由の有無

  拒否できない場合、指揮監督関係の存在を推認させます。

 (2)業務遂行上の指揮監督の有無

  業務内容やその遂行方法について具体的な指揮命令を受けていることが指揮監督関係の基本的な要素といえます。

 (3)拘束性の有無

  勤務場所・時間の指定・管理がなされていることは、指揮監督関係の基本的な要素です。

 (4)代替性の有無

  労務提供の代替性が認められることは、指揮監督関係を否定する要素になります。

②賃金性

 賃金性の判断に際しては、報酬の労務対償性を検討します。たとえば、報酬が時間給で計算され、労働の結果による差が少ないとか、欠勤によって控除されるとか、残業に手当が支給される等、報酬が使用者の指揮監督の下に一定時間労務提供していることに対する対価と評価できる場合、使用性を補強する要素になります。

その他

 上記の点から労働者性の判断ができない場合、詳細は省略しますが、以下の要素も考慮して、総合的に判断します。

 (1)事業者性の有無

 (2)専属性の有無

 (3)その他

実際の判断

 労働基準法研究会報告「労働基準法の労働者の判断基準について」は、使用者の指揮監督下で労働を行っているという使用性を中心的な判断要素としています。そこに、条文上要求されている賃金性や経済的な自律性・従属性を示す要素、公租公課上の取扱いといった使用者による労働者としての認識を補充的な要素として労働者性を総合的に判断します。

 もっとも、裁判所は、判断要素の内、認定できる事実を総合的に考慮して労働者性を判断しており、中心的な要素・補充的な要素という区別はしていないと解されています。

 ちなみに、労働者性の判断は、当事者の主観や形式的な事情ではなく、客観的な事実・実質的な事情に基づいて判断します。したがって、形式的には請負契約や業務委託契約であっても、労働者だと判断されることがあります。

♪Mr.Children「さよなら2001年」(アルバム:B-SIDE 収録)

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