2022年11月25日、東京都労働委員会は、ウーバーイーツの配達員を労働組合法上の労働者だと認定しました。そこで、労働法上の労働者性をまとめてみました。今回は、労働組合法上の労働者とは?をまとめてみました。
労組法上の労働者
労組法上の労働者は3条に規定されています。
(労働者)
第三条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
労基法上の労働者は、①使用性と②賃金性の2つが要件です(労働法上の労働者とは?-労基法上の労働者編)。一方、労組法上の労働者には、①使用性は要求されていません。②賃金性も厳密な意味での労務対償性までは要求されていません。
かつては、労組法上の労働者を労基法上の労働者と統一的に捉えようという見解が広く見られました。現在は、労組法上の労働者は、経済的従属性、つまり、給与等生活者性を中心に判断し、使用性が要件となっている労基法上の労働者よりも広く捉える見解が主流となっています。
最高裁平成23年4月12日判決
平成23年4月12日に2つの最高裁判決が出ました。この2つの判決が、労組法上の労働者性の判断基準を明確にした判決です。
最高裁の判断基準
以下の5つを総合考慮して労働者性を判断します。
①事業組織への組入れ
②契約内容の一方的決定
③報酬の労務対価性
④業務の依頼に対する諾否の自由の有無
⑤時間・場所の拘束を含む指揮監督関係
その上で、⑥独立の事業者としての実態、つまり、独立した経営判断に基づいて業務内容を差配して収益管理を行っていると認められる特段の事情がある場合は、労働性を否定します。
これらの事情は、契約等の形式ではなく、当事者の認識や契約の実際の運用といった就業等の実態に即して判断されます。したがって、報酬が源泉徴収されず、確定申告を行っているといった公租公課の事情のみで労働者性が否定されることはありません。
厚労省労使関係研究会報告書
平成23年の最高裁判決を踏まえて、厚労省の労使関係研究会が「労働組合法上の労働者性の判断基準について」というとりまとめを公表しました。
厚労省の報告書では、以下の①~③を基本的な判断要素としています。
①事業組織への組入れ
相手方の業務遂行に量的・質的な面で不可欠・枢要な労働力として組織内に位置付けられているか?
相手方の名称の記載がある制服の着用・名刺・身分証の携帯・第三者への表示
受託業務に類する業務を他の者から受託することが実際上制約されているか?
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性
仕事の完成に対する報酬とは異なる要素が加味されているか?
たとえば、報酬が業務量・時間に基づいて算出されている場合や一定額の支払いが保証されている場合、労務対価性が肯定されます。
次に、④と⑤を補充的な判断要素としています。
④業務の依頼に応ずべき関係
業務依頼の拒否に対して、契約の運用上、解除や契約更新拒絶といった不利益な取扱いや制裁を受けるか?
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
以上の5つの判断要素と異なり、⑥を労働者性を否定する判断要素としています。
⑥顕著な事業性
以下のような事情が認められる場合、労働者性を否定する要素として考慮されます。
自分の才能で利益を上げる余地が広範にある。
想定外の利益・損失が発生した場合、労務提供者に帰属する。
受託業務を他人に代行させることが可能で、実際に代行させている者がいる。
コンビニオーナーの労働者性
コンビニオーナーの労組法上の労働者性をめぐる問題は、労働委員会で判断が分かれ、行政訴訟が提起されています。
平成26年に岡山県労働委員会、平成27年に東京都労働委員会がコンビニオーナーの労働者性を肯定しました。しかし、平成31年に中央労働委員会が労働者性を否定しました。2022年6月6日、東京地裁も労働者性を否定しました。
ウーバーイーツの配達員の労働者性
東京都労働委員会は、以下のように、ウーバーイーツの配達員の労働者性を肯定しました(全文は、Uber Japan事件命令書交付参照)。
ウーバーは、配達パートナーに対し、プラットフォームを提供するだけにとどまらず、配達業務の遂行に様々な形で関与している実態があることを前提に上記最高裁判決及び厚労省の報告書に沿う形で①~⑥の事情を検討しています。
①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性が認められる。
④業務の依頼に応ずべき関係と⑤一定の時間的場所的拘束は認められないものの、広い意味での指揮監督下の労務提供が認められる。
⑥顕著な事業者性は認められない。
♪Mr.Children「ロードムービー」(アルバム:Q収録)