法律の勉強をするのに欠かせないのが,基本書。そんな基本書にも時代の流れで移り変りがあります。そんな移り変りを書き留めておく基本書今昔物語,今回は民事訴訟法です。
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司法試験の基本書今昔物語
法律を学ぶ上でかかせない基本書。そんな基本書ですが,年々,新しい基本書が出版されています。そして,かつて不動の人気を誇った基本書の人気がかげるなんてこともしばしば。そんな基本書の移り変わりを今昔物語と題して書き記しておこうと思います。
僕が実際に使ってた又は当時人気だった基本書を①学部時代,②ロースクール時代,そして③最近,人気の基本書を取り上げようかと思います。ちなみに,③最近,人気の基本書は正直,よく知らないので,人づてに聞いた話しだったり,ネットのレビューから推測しています。
民事訴訟法
民事訴訟法,略して民訴法や民訴と言われる法律は,文字通り,民事訴訟(裁判)の手続きについて規定している法律です。訴訟の手続きについて規定しているので,手続法といいます。
民訴法の議論は,実際に民事訴訟にたずさわって問題に直面しないと,なんでこんな議論してるんだ?って感じで,とっつきにくい法律です。というか,理論的すぎるんですよネ,たぶん。なので,「眠素」と揶揄されることもあります。
学部時代の民訴法の基本書
学部時代は,①中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編著「新民事訴訟講義」と②裁判所職員総合研修所監修「民事訴訟法講義案」を使ってました。というか,①で挫折して,②を使うようになった感じです。
①は,学会の錚々たる顔ぶれの執筆による共著です。論点を豊富に取り上げられています。5つくらいのケースが書いてある型紙がついていて,そのケースに即して説明がされています。初学者には,つらいですが,勉強が進んでから読むと,いろいろ発見があります。特に,弁論主義の第一テーゼの説明が秀逸で,他の基本書を使ってる人もそこだけ読んどけと言われました。
②は,裁判所書記官になろうとする裁判所事務官向けの講義を基に書かれた本です。なので,判例実務を前提に書かれてます。実務向きなのですが,割と論点もしっかりと扱っています。原著は,「講義民事訴訟法」の著者の藤田広美先生が書かれたので,今だったら,「講義民事訴訟法」を使ってます。
ロースクール時代の民訴法の基本書
ロースクール時代に使っていた民訴法の基本書は,上田徹一郎「民事訴訟法」です。民訴法では,①旧訴訟物理論と②新訴訟物理論の対立があり,この本は,①旧訴訟物理論の立場で書かれた本です。
というか,旧訴訟物理論の基本書って,上田先生か伊藤眞先生の2択だったので,読みやすい方の上田先生の本を使ってたという消去法による選択でした。消去法での選択でしたが,基本的事項は本文,応用的な事項は脚注というスタイルで読みやすい本でした。上田先生はお亡くなりになっているので,おそらく,もう改訂されることはないんだろうと思います。
最近の民訴法の基本書
最近の民訴法の基本書で人気なのは,リークエことリーガルクエストシリーズの三木浩一・笠井正俊・垣内秀介・菱田雄郷「民事訴訟法」でしょう。リークエは,あまり面白味はないですが,基本的に判例・通説をきちんと解説している本です。特にこだわりがなければ,リークエなのかなという感じです。
個人的には,元裁判官の和田吉弘先生の「基礎からわかる民事訴訟法」です。2012年出版後,改訂されてないので,さすがに古いかったのですが,2022年4月に待望の第2版が出版されます。割と分厚い本ですが,ほぼ全てのページに図表があるんじゃないかくらい多く,書名のとおり,基礎からかみ砕いて,わかりやすく説明されています。抽象的なきらいのある民訴法がよく理解できると思います。
重点講義でおなじみの高橋宏志先生の「民事訴訟法概論」も人気のようです。重点講義が論点集なのに対し,この本は,他の基本書と同様,民訴法全体を解説しています。ちょっと古いですが,ちょいちょい旧司法試験の一行問題みたいな感じになってるので,試験前の確認に使えるんじゃないかと思ったりもします。
♪Mr.Children「あんまり覚えてないや」(アルバム:HOME収録)