司法試験の基本書今昔物語-家族法編-

法律の勉強をするのに欠かせないのが,基本書。そんな基本書にも時代の流れで移り変りがあります。そんな移り変りを書き留めておく基本書今昔物語,今回は民法の家族法です。

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司法試験の基本書今昔物語

 法律を学ぶ上でかかせない基本書。年々,新しい基本書が出版され,かつて不動の人気を誇った基本書も段々と人気がかげるなんてこともしばしば。そんな基本書の移り変わりを今昔物語と題して書き記しておこうと思います。

 僕が実際に使ってた又は当時人気だった基本書を①学部時代,②ロースクール時代,そして③最近,人気の基本書を取り上げようかと思います。ちなみに,③最近,人気の基本書は正直,よく知らないので,人づてに聞いた話しだったり,ネットのレビューから推測しています。

 今回は,民法の家族法編です。家族法は,婚姻・離婚や子ども等に関する親族法と相続に関する相続法に分かれていて,親族法と相続法をまとめて家族法というのが一般的です。司法試験的にいうと,択一試験で出題されますが,論文では,おそらく,まず出題されないかと思うので,必然的にウェートが低くなります。もっとも,実務では,やたら使うことになる分野です(特に,街弁は)。そんな司法試験ニーズに対応し,1冊で親族法・相続法両方カバーしてる,つまり,家族法の基本書のみを取上げます。

学部時代の家族法の基本書

 司法試験の基本書今昔物語の民法を一連で見てる人からすると,もう紹介しなくても,どうせ,あの本でしょと思っていると思います。その通りで,内田貴「民法Ⅳ親族・相続」です。

 民法総則編民法物権編民法債権総論編民法各論編民法担保物権編と民法の全分野で取り上げました。内民は,判例をベースにしたケースを掲げ,そのケースについて解説するというスタイルを取っています。そんな内民の最大の特徴は,民法のパンデクテン方式をあえて,無視した構成になっていることです。

 ①民法Ⅰ:総論・物権総論

 ②民法Ⅱ:債権各論

 ③民法Ⅲ:債権総論・担保物権

 ④民法Ⅳ:親族・相続

 紹介した民法Ⅳの親族・相続は,2004年発行なので,さすがに古すぎて,もう使えません。ちなみに,内民は,2020年4月に,民法Ⅲが改訂され,債権法改正に対応しました。その他も順次改訂されていくようです。

ロースクール時代の家族法の基本書

 ロースクール時代も個人的には,内民を使ってました。でも,周りが使ってたのは,二宮周平「家族法」です。この本に限らないんですが,家族法の基本書は,著者の思想が,その解釈に反映されていることが多いです。この本は,かなりリベラル色の強い自説が全面的に出てくるのが特徴です。なお,本自体は改訂されてるので古くはないので,全然使えます。

最近の家族法の基本書

 最近の家族法の基本書としては,以下の3冊の中から,自分にあったのを選べばいいんじゃないかと思います。

 まずは,①前田陽一,本山敦,浦野由紀子著「民法Ⅳ親族・相続」(LEGAL QUEST)です。有斐閣のリーガルクエスト(通称リークエ)シリーズの1冊です。リークエの民法の中で1番人気らしいです。判例を重視し,制度趣旨から要件・効果を丁寧に記述している本です。デメリットを挙げるとすると,たんたんと書かれているので,面白味のない本といえます。

 次は,②高橋朋子,床谷文雄,棚村政行著「民法7親族・相続」(有斐閣アルマ)です。有斐閣アルマシリーズの1冊です。有斐閣アルマの家族法の本には「Basic」もありますが,お勧めは,「Specialized」の方の本書です。表紙の上の〇がオレンジのやつです。有斐閣アルマシリーズは四六判でコンパクトなのが特徴です。そんなコンパクトな本ですが,ケースや図も取り入れられていて,文章も読みやすいです。

 最後は,③窪田充見著「家族法-民法を学ぶ-」です。債権各論編で紹介した窪田充見「不法行為-民法を学ぶ-」の家族法版です。設例を中心とした講義的な感じの文書で書かれていて,読みやすいです。660頁以上ありますが,あまり苦になりません。制度の背景事情から最新の問題まで具体例を多く挙げられています。相続分や遺留分の計算も具体的な計算方法が多く挙げられています。紹介した三冊の中では,一番詳しい本です。最後に,家族法と租税法との関係についても触れられているので,実務的なのもポイント高いです。

 

♪Mr.Children「花 -Memento Mori-」(アルバム:深海 収録)

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