法律の勉強をするのに欠かせないのが,基本書。そんな基本書にも時代の流れで移り変りがあります。そんな移り変りを書き留めておく基本書今昔物語,今回は刑法総論です。
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司法試験の基本書今昔物語
法律を学ぶ上でかかせない基本書。年々,新しい基本書が出版され,かつて不動の人気を誇った基本書も段々と人気がかげるなんてこともしばしば。そんな基本書の移り変わりを今昔物語と題して書き記しておこうと思います。
僕が実際に使ってた又は当時人気だった基本書を①学部時代,②ロースクール時代,そして③最近,人気の基本書を取り上げようかと思います。ちなみに,③最近,人気の基本書は正直,よく知らないので,人づてに聞いた話しだったり,ネットのレビューから推測しています。
刑法総論
法学部のカリキュラムえは,刑法は,①総論と②各論の2科目に分かれています。①総論は,犯罪が成立するか?を検討します。②各論は,窃盗罪とか,何罪が成立するのか?を検討します。今回は,刑法総論を取り上げます。
刑法総論に関しては,学説が大きく2つに分かれています。①行為無価値と②結果無価値の2つです。無価値とは,ざっくりいうと,ダメ・悪いという意味です。殺人を例に2つの違いをめちゃくちゃざっくりと説明します。①行為無価値は,人を殺害する行為がダメ・悪いことだと考えます。一方,②結果無価値は,人が死んだという結果がダメ・悪いことだと考えるわけです。基本書を選ぶ際も,どっちの立場の本を選ぶのか?は,重要です。
もっとも,現在の学説では,純粋な行為無価値論は存在していないんですが,便宜上,①行為無価値と②結果無価値と呼んでいます。判例は①行為無価値的な立場に立っています。
学部時代の刑法・総論の基本書
学部時代に使ってた刑法・総論の基本書は,前田雅英「刑法総論講義」です。かつては,司法試験で人気の基本書でした。
前田先生は,結果無価値の立場に立ってるんですが,実質的犯罪論と言われる考えに立っています。そのため,前田説は,他の結果無価値の学説と大きく異なっています。また,判例の立場に親和的なのも特徴です。
ロースクール時代の刑法・総論の基本書
ロースクール時代に人気だった刑法・総論の基本書は,裁判所職員総合研究所監修「刑法総論講義案」です。裁判所職員総合研究所は,書記官や家裁調査官を養成するための研修等を行う機関です。研修の際の故杉田宗久裁判官のレジメを元にした本書が,市販されています。裁判所が行う研修なので,当然,判例の立場から淡々と書かれていて,学説の対立とかには踏み込んでいません。
最近の刑法・総論の基本書
最近,ダントツ人気の刑法・総論の基本書は,大塚裕史,十河太朗,豊田兼彦「基本刑法Ⅰ総論」です。絶対に結果無価値じゃないとヤダとかいうことがなければ,刑法・総論の基本書は,この本一択といっていいほどの基本書です。
ケースを元に,判例・通説の立場からわかりやすく書かれています。答案の書き方にも言及されていて,学者の書いた予備校本と言われることもあります。刑法総論は,抽象的な議論になりやすいので,イメージがつかみにくいんですが,ケースを元に解説されてるので,具体的なイメージがつかみやすいです。
刑法総論の基本書は,基本刑法Ⅰ一択だと思いますが,もう1冊挙げるとすると,山口厚「刑法」かなと。山口先生は,学者ですが,なぜか弁護士枠で最高裁判事になった方です。山口先生は,結果無価値の立場に立ってますが,この本は,判例・通説の解説をメインにしています。1冊で総論と各論をカバーしてるので,行間を読む必要があったり,山口説が顔をのぞかせている部分もあります。刑法の第一人者で最高裁判事が,刑法総論と各論を1冊にまとめたという点で,初学者から司法試験直前のまとめまで使える本になってます。
♪Mr.Children「ランニングハイ」(アルバム:I ♥ U収録)