私有地に自動車を放置された場合,放置してる自動車を土地所有者が勝手に処分することはできません。では,どうすればいいのでしょうか?
横浜地裁の敷地内に無断駐車された
報道によると,横浜地裁の敷地内に自動車を無断駐車されたようです。私有地に自動車を無断駐車というか,放置されることは,事件としては珍しくありません。
ただ,私有地に放置された自動車を撤去するのは,かなりめんどくさいのが実情です。裁判所が身を以て体験してくれることになりそうですネ。
私有地に無断駐車された自動車を勝手に処分してはいけない判決が出た?
この横浜地裁の無断駐車に関して,SNS上で,こんな経緯があったんだというツイートが広まっています。
①私有地に自動車を無断駐車された→②警察に通報するも対応は地裁と言われる→③地裁で,自分の土地でも勝手に動かしてはいけないと判決が出る→④だったら,地裁に無断駐車してやる→⑤横浜地裁に自動車を無断駐車(今ここ)
特にソースもなくツイートされてますが,そんな判決が出る余地がないと思っています。というのも,どういう請求をすれば,そんな判決になるのか?がまったく想定できません。だって,裁判所に訴訟提起した時点で,勝手に動かすわけじゃないから。
そもそも,この自動車の所有者が自動車の撤去のための訴訟を提起したのかどうか,定かではありません。仮に,自動車の撤去のための訴訟提起をしたら,そんな判決は出ません。考えられるのは,①訴状却下若しくは請求が却下された又は②勝手に自動車を処分しちゃって,刑事事件で有罪になったの2つです。
①訴状却下や請求の却下は,裁判所が原告の請求の当否の判断をせずに,形式的に訴訟を終わらせることです。たとえば,当事者が特定されてないとか,請求が特定されてないとか,原因はいろいろです。請求が却下されたのを,自分の土地でも勝手に動かしてはいけないと判決だと勘違いした可能性はあります。
②自動車の撤去のための訴訟を提起せずに,勝手に自動車を処分してしまって,窃盗罪か,占有離脱物横領罪か,器物損壊罪か,何らかの罪で起訴され,有罪判決を受けた可能性はあるかもしれません。
私有地に放置された自動車を撤去するためのめんどくさい手続
閑話休題,私有地に放置された自動車を撤去するためのめんどくさい手続は,以下のとおりです。
警察に通報
まずは,警察に通報します。というのも,盗難車の可能性があるからです。盗難車であれば,警察に処理してもらえるはずです。問題は,盗難車ではないケースです。
自動車登録事項等証明書を取得
盗難車でない場合,警察は何もしてくれません。そこで,自動車の所有者を特定する必要があります。そのためには,自動車登録事項等証明書を取得することになります。車台番号がわからないと証明書を取得できないんですが,こういう場合は,裏技で車台番号なしに証明書を取得できます。
所有者と交渉
自動車登録事項等証明書で自動車の所有者が確認できれば,所有者と交渉します。いきなり訴訟提起してもいいですが,普通は,まずは,任意に自動車を引き取ってもらうよう交渉します。
訴訟提起
交渉で埒が明かない場合や所有者がどこにいるかわからない場合は,明渡請求訴訟を提起します。通常,明渡請求と併せて,不法行為に基づく賃料相当額の損害賠償請求も行います。
強制執行
明渡等を認める判決が確定すれば,土地明渡の強制執行を申立てます。放置自動車は目的外動産として処理されます。
このように,手続は,めんどくさいんですが,ちゃんとやれば,放置自動車を撤去させることができます。なので,自分の土地でも勝手に動かしてはいけないなんて判決は出ないんです。
自動車の所有者が不明な場合
放置自動車にナンバープレートがなかったり,警察で確認が取れず,自動車の所有者が不明な場合があります。その場合は,無主物だとして,民法239条1項に基づき,土地所有者に所有権が帰属すると考えることができます。そうすると,放置自動車は自分の所有物なので,自由に処分できます。
ただ,ほんとに無主物と扱って大丈夫なんだろうか?という疑問が残ります。私有地なので適用されませんが,都道府県等の放置自動車条例に廃自動車認定の規定があります。この規定を参考にすることも考えられます。
♪Mr.Children「ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~」(アルバム:深海 収録)