ChatGPTで訴状や答弁書は作れる?

とある会社が、本人訴訟を支援するため、ChatGPTを使って訴状や準備書面などの裁判書類を作成するサービスを始めるそうです。ChatGPTは裁判書類を作成できるのでしょうか?

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ChatGPTで本人訴訟を支援…

 リードのとおり、ChatGPTを使って、本人訴訟を支援するサービスが始まるそうです。具体的には、オンラインサロンの会員を対象に、準備書面をChatGPTを使って自動で作成するというサービスみたいです。

 準備書面とは、当事者が口頭弁論で陳述しようとする事項を記載して、裁判所及び相手方に予告するために作成する書面です。簡単に言うと、訴訟で主張することを書いた書面です。民事訴訟の口頭弁論期日で、口頭で主張を述べることは基本的にないので、準備書面の提出が必須となります。準備書面に何を書いてもいいというわけではなく、書かなければいけない事項が法律で決められています。ちなみに、答弁書は、準備書面のことですが、被告が最初に提出する準備書面を特別に答弁書と呼んでいます。

 このサービスは、非弁行為(弁護士法72条)なのではないか?という問題がありますが、今回は、ChatGPTが、ちゃんと準備書面を書けるのか?を検討することにします。

言い分方式からChatGPTに訴状・答弁書を作ってもらおう

 上記のサービスは、まずは、答弁書の作成からスタートするみたいです。が、その検証のために、いちいち訴状を作るのもめんどくさいので、要件事実の本でお馴染みの言い分方式から訴状と答弁書をChatGPTに作ってもらうことにします。

 実際のサービスは、GPT-4を使ってるだろうし、それなりに準備書面のデータを学習させているはずですが、今回の検証は、無料でChatGPTを使える範囲で検証しています。

消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟

 消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟で検証することにします。X・Yそれぞれの言い分は、以下のとおりです。

Xの言い分

私は、令和4年5月10日に、友人のYから会社の運転資金として200万円を融資してほしいと懇願されました。気は進みませんでしたが、友人の頼みなので、その日に、Yとの間で、返済期限を令和5年5月10日の約束で200万円を貸すことにしました。利息の取決めはしていません。Yと合意したその日に、銀行に行き、200万円を引き出し、Yに渡しました。

返済期限を過ぎてもYから返済はなく、私がYに督促すると、返す必要のない金だなどと開き直っています。

Yの言い分

確かに、私は友人のXから200万円を受け取りました。しかし、この200万円は、私の会社の新規事業への投資として出してくれたものです。返す必要のないお金です。

今になって、Xが200万円を返せと言ってきたのは、私の会社の業績が悪化してきたからだと思います。

ChatGPTが作った訴状

 Xの言い分からChatGPTが作った訴状は、以下のとおりです。

【訴状】

【申立人情報】
名前:[申立人の氏名]
住所:[申立人の住所]
電話番号:[申立人の電話番号]

【被申立人情報】
名前:Y
住所:[Yの住所]
電話番号:[Yの電話番号]

【裁判所の名称】
[裁判所の名称]
[裁判所の住所]
[裁判所の電話番号]

【事件番号】
[事件番号]

【訴状】

申立人である[申立人の氏名](以下、「申立人」と称する)は、被申立人であるY(以下、「被申立人」と称する)に対し、以下の事実に基づき、請求を行います。

  1. 申立人と被申立人は、令和4年5月10日に、被申立人から会社の運転資金として200万円の融資を求められました。
  2. 申立人は当初、融資をすることに慎重でありましたが、被申立人が友人であることから、その頼みを快く受け入れることにしました。
  3. 申立人と被申立人は、令和4年5月10日の日に、返済期限を令和5年5月10日とする条件で200万円の貸付契約を締結しました。なお、利息については特段の取決めはありませんでした。
  4. 翌日、申立人は銀行に出向き、200万円を引き出し、被申立人に現金として渡しました。
  5. しかし、返済期限が過ぎても被申立人からの返済はありませんでした。申立人が被申立人に返済を迫ると、被申立人は返済する必要がないという理由で開き直っています。

以上の事実に基づき、申立人は次の請求を行います。

  1. 被申立人に対し、申立人に対して貸付された200万円の支払いを命じること。
  2. 被申立人が支払いを怠った場合には、支払い期限からの遅延利息を支払うこと。
  3. 被申立人に対し、本訴訟に要する一切の費用を負担すること。

このような訴状の提出に対し、裁判所は審査を行い、適切と認めた場合には、審理を開始し判断を下していただきますよう、お願い申し上げます。

【申立人の氏名】
【申立人の住所】
【申立人の電話番号】
【日付】

by ChatGPT

 う~ん、ツッコミどころは、いろいろありますが、請求の趣旨っぽいことと請求の原因っぽいことは、一応、書いています。100%補正されると思いますが…

 訴訟費用に言及してるのは、ポイントが高いです。だったら、仮執行宣言まで言及できたんじゃないかとも。

 言い分をそのまんま使っちゃうんですね…だったら、快くは貸してないだろ…あと、原告・被告という言葉は知らないのか、ChatGPT。

ChatGPTが作った答弁書

 100%補正されるから、この訴状に対して認否してもしかたないのか…ということは、一応、ちゃんとした訴状を作っておかないと検証できないのか、めんどくさっ…ということで、一応、必要最低限の要件事実だけ書いた訴状をわざわざ書いたんで、ちゃんと請求の趣旨に対する答弁と請求の原因に対する認否しろよ、ChatGPT!

原告による訴状に対し、以下のように答弁いたします。

請求事実については、私は確かに友人のXから200万円を受け取りましたが、この200万円は私の会社の新規事業への投資として提供されたものです。そのため、私はこれを返す必要はないと考えています。

事実に基づいて述べますと、私の会社は設立当初から将来性のある事業を展開するために多くの投資を行ってきました。Xは私の信頼のおける友人であり、私のビジネスのビジョンに共感してくれ、新規事業への支援として200万円を提供してくれました。

しかしながら、現在の経済状況や市場の変動などの要因により、私の会社の業績が予想よりも悪化してしまったことは事実です。私はこの状況に対処するために様々な努力をしており、再建策を模索していますが、現時点では返済する余裕がない状況にあります。

このような事情を考慮すると、原告が200万円の返済を求めることは不当であり、私の会社の運営をさらに困難にする可能性があります。私は友人としての関係を大切にしており、返済が可能となった際には適切な方法でその旨を伝えるつもりです。

以上の理由から、原告の主張は認められず、訴訟費用も原告に負担していただくべきであると主張いたします。

by ChatGPT

 訴状のときは、なんかそれっぽいのを作ったChatGPTが、答弁書になったとたんに、素人丸出しの答弁書を作ってきました。あれっ!?別人が書いた?しかも、なんか勝手に言い分を膨らましてるし…

 もしかすると、訴状の場合は、訴訟を提起するのは、法律家だろうということで専門家モードになったのかもしれないので、答弁書の作成も弁護士が作成する答弁書っぽく書いてもらうことにします。

被告答弁書

【被告の氏名】
【被告の住所】
【被告の連絡先】

【裁判所名】
【裁判所の住所】
【裁判所の電話番号】
【事件番号】

【日付】

【原告の氏名】
【原告の住所】
【原告の連絡先】

【裁判所名】
【裁判所の住所】

【事件の概要】
私は、被告として、原告による訴状に対して答弁いたします。以下に詳細を述べます。

【答弁】

  1. 請求事実について、私は確かに友人のXから200万円を受け取りましたが、この200万円は私の会社の新規事業への投資として提供されたものです。私は返済する必要のない資金として受け取ったものであり、原告の主張は誤解に基づいています。
  2. 原告が私に対して200万円の返済を求める理由として、私の会社の業績の悪化を挙げていますが、この主張は事実とは異なります。私の会社は市場の変動や競争の激化などの要因により一時的な課題に直面していますが、私は会社の再建策を模索し、業績の改善に向けて取り組んでいます。
  3. 200万円の提供は、私と原告の友情と信頼に基づくものであり、貸借関係ではありません。原告が返済を求めることは、私の会社の運営を著しく困難にし、事業の将来性に対する信頼を揺るがす可能性があります。私は友人としての関係を大切にしており、将来的に返済が可能となった場合には適切な方法でその旨を伝えるつもりです。

【訴訟費用の負担】
訴訟費用については、私は原告による不当な訴訟であると考えており、原告に負担していただくべきと主張いたします。

【結び】
以上の理由から、原告の主張は認められず、訴訟費用も原告に負担していただくべきであると主張いたします。本件について裁判所の公正な審理を求めます。

【被告の氏名】
【被告の署名】

弁護士が作成する答弁書のように書いてと指示した結果

 なんか、素人が頑張っていろんな本を読んで書いた答弁書みたいになりました。認否しろって!2つの答弁書とも、なぜか、返すことを前提にしてるっぽいし…

結果は、予想どおり 

 予想どおりですが、無料で使える範囲のChatGPTだとこの程度です。GPT-4に、どれくらいの民事訴訟に関するデータを学習させているのか?が気になります。

 そもそも、本人訴訟だと、当事者が、ちゃんとChatGPTに必要な情報を伝えれるのか?というのが、一番の問題なような気もします。

 あと、実際の口頭弁論期日で、本人に釈明しても、「AIが書いたから」とか、「ChatGPTが書いたから」とかで、全然答えれないということが頻出するかもしれません。そうなると、裁判官は、大変だなと思います。そういえば、過払金全盛期の頃は、傍聴席に訴状等を作った司法書士がいて、原告がチラチラ傍聴席を見るという光景も珍しくなかったですネ。でも、ChatGPTは、傍聴席にいないからね!

 本人訴訟でどうしてもやりたいという人は、せめてこの本を読んでおいてほしいです。

♪Mr.Children「ランニングハイ」(アルバム:I ♥ U収録)

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