人質立てこもり事件の意外な真相とは?-伊坂幸太郎「ホワイトラビット」

とある住宅街で発生した人質立てこもり事件の以外な真相とは?2度読み必至の伊坂幸太郎「ホワイトラビット」を紹介します。

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ホワイトラビット

 今回、紹介するのは、伊坂幸太郎「ホワイトラビット」(新潮文庫)です。このミステリーがすごい!第2位、週刊文春ミステリーベスト10第3位で、文庫の帯には、「伊坂史上最高の「騙しあい」が幕を開ける!」と書かれてます。が、このフレーズは決して大げさではなく、真相がわかった後、もう一度、読み返したくなる小説です。

主な登場人物

 黒澤:副業で探偵をやっている泥棒。「ラッシュライフ」をはじめ本作以外の伊坂作品にも登場する。

 中村・今村:空き巣を生業にしているコンビ。2人ともかなり抜けている。今村は中村を「親分」と呼ぶ。

 兎田孝則:誘拐をビジネスとするグループの下っ端。稲葉に妻を人質にとられ、折尾豊を連れてくるよう命じられる。

 稲葉:誘拐をビジネスとするグループの創業者。

 折尾豊:コンサルタント、通称「オリオオリオ」。稲葉のグループの金を持ち逃げする。何かにつけてオリオン座の蘊蓄を語る。

 夏之目:宮城県警のSITの課長。7年前に事故で家族をなくす。

あらすじ

 ネタバレにならないように、途中までのあらすじをざっと紹介します。

黒澤、今村と詐欺師の家に空き巣に入る

 黒澤は、中村・今村に頼まれ、今村と一緒に、ある詐欺師の家へ、その詐欺師が海外旅行中に、空き巣に入る。黒澤は、空き巣に入った家に、被害者を必要以上に不安がらせないように、あるメモを残している。そのメモには、①どこからいくら盗んだのか、②恨みの上での犯行ではないこと、③被害者に落ち度がないこと、④繰り返し同じ家は狙わないことを書き記している。実は、今村は、空き巣に入る前に、家を間違えてしまう。さらに、間違えた家に、そのメモを落としていたらしい。仕方なく、黒澤は、メモの回収のために、今村が間違えた家に侵入する。

兎田、折尾を連れてくるよう命じられる

 兎田は、稲葉のグループの社員で、仕入れを担当している。つまり、指定された人間を連れ去ってくる実行犯だ。女性を車に押し込んだところで、兎田は、同僚から折尾が経理担当と共謀して、組織の金を持ち逃げしたことを聞かされる。経理は捕まったが、金はすでに移されていた。

 すると、兎田に「妻を誘拐している」と電話があり、折尾を連れてくるよう命じられる。

黒澤、人質になる

 黒澤は、今村が間違えて落としたメモを取りに行くため、とある家に侵入した。その家、すなわち、佐藤家には、押し入って母親と息子を拘束した兎田がいた。兎田は仙台で折尾を見つけたが、取り逃がしてしまうが、折尾のバッグにGPS発信機を入れることには成功した。兎田は、その発信機を頼りに佐藤家にやってきて、2人に見つかったため、事を荒立てざるを得なくなったのだった。そして、黒澤も兎田に見つかり、とっさに父親のふりをして、兎田に拘束された。

警察、立てこもり事件発生を知る

 兎田に拘束されていた佐藤家の息子、勇介が兎田の隙をつき、警察に通報する。が、すぐに兎田に見つかる。兎田は仕方なく、責任者にこの電話にかけるよう警察に伝える。

 この事件は、SITが担当することになる。そして、SIT課長の夏之目が兎田の携帯に電話をかける。兎田は、警察に折尾を連れてくるよう要求する。兎田から折尾の写真が送られる。すると、警察は、すぐに折尾を発見する。

兎田、人質と折尾の交換を要求

 見つかった折尾は、なぜ、人質立てこもり事件の犯人が自分を探してるのかわからないと困惑する。夏之目が兎田に電話をかけ、折尾を見つけたと告げる。兎田は、折尾に電話を代わるよう要求し、折尾にオリオン座の蘊蓄を喋らせる。折尾が不本意そうに、「オリオン座に一等星が二つ。ペテルギウスとリゲル」と話すと、兎田は、折尾本人と確信したらしい。

 兎田は、夏之目に折尾と人質とを交換したいと要求する。困惑する折尾をよそに、夏之目と兎田で交渉が続く。折尾に食事を運ばせ、折尾が家の中に入ったら、人質を解放するという話しになり、警察は、食事としておにぎりを用意することになる。

折尾、犯罪グループの話しを始める

 おにぎりは用意できたが、警察としては、折尾を一人で兎田が立てこもる家に行かせるわけにはいかない。夏之目は兎田と交渉するが、平行線に終わる。そこで、夏之目は折尾に目をつける。明らかに怪しいこの男が今回の事件と無関係とは思えない。夏之目は、折尾に折尾が違法なことに関わっていても咎めないと告げる。すると、折尾は、この事件にはある犯罪グループが絡んでいると話し始めた。そして、折尾は、手元の地図を広げ、オリオン座の形を使えば、犯罪グループの仲間の居場所がわかるかもしれないと言い出す。

 折尾は、ここがペテルギウス、仙台駅をリゲルなどと言い出す。そして、リストが関係するかもしれないと手書きのメモを広げる。電話番号と住所が書かれていた。折尾が言うには、犯人グループの被害者の一部のリストだという。折尾は、この住所を使えば、犯人の本隊のいる場所が浮かび上がる、かなりの確率でオリオン座の形に浮かび上がると言いだした。

 しばらくすると、折尾は、オリオン座の上半身の三角形が浮かび上がったと言い出す。また、リストの住所の空欄が埋まれば、下半身もできあがると。リゲルに当たる部分に犯人がいるという。

 そして、折尾は、警察に協力するから、地図にオリオン座を完成させるのに協力しろと言う。ただ、さすがに、おにぎりを持って、家に行くことはできないので、どこかから、おにぎりを投げ入れればいいと言い、夏之目もその案を採用することにする。

折尾、おにぎりを投げ入れる

 夏之目と兎田との交渉の結果、とりあえず、まずは食事をということになり、兎田が立てこもる家の隣家の庭からおにぎりを投げ入れることになった。1回、2回と失敗し、3回目でおにぎりを兎田が立てこもっている家のベランダに投げ入れることに成功した。

 警察車両に戻ってきた折尾は、夏之目に約束通り調べてほしいと言う。折尾が言うには、リストの空欄の被害者から電話がかかってくるという。折尾が住所を聞き出せなかったら、警察に発信情報を調べてほしいと頼む。すると、折尾のスマホにホントに着信があった。警察がその発信情報を調べ、地図に点を打つと…折尾が得意気に線を引いていたエリアからは見当違いの場所で、オリオン座にはほど遠い形になった。地図を眺めていた折尾は無口になり、ちょっと外へと車両の外へ出ていった。

 夏之目に言われ、部下の春日部が折尾の様子を見に行った。折尾は肩を落とし落ち込んでいる様子で、春日部の呼びかけにもすぐに反応しなかった。犯人の様子がおかしいと呼ばれた春日部が車両に戻ろうとした時、地面に四つ折りの紙が落ちているのに気づいた。自分が落としたという折尾に春日部が紙を渡した。

 「今日はこの紙のせいで散々だな」と思いながら苦々しくその紙をポケットに押し込んだ。春日部に「折尾さんも後から来てください」と言われ、黒澤は「はい」と返事をした。

人質立てこもり事件の真相は?

 ここまでが、前半というか中盤くらいまでのあらすじです。こっから先は、ネタバレになるので、紹介しません。折尾は黒澤だったわけですが、なぜ、黒澤は折尾のフリをしていたのか?ここから人質立てこもり事件の真相が明かされていきます。そして、兎田夫婦の運命はどうなるのか?

♪Mr.Children「箒星」(アルバム:HOME収録)

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