家庭裁判所調査官が主人公の話しである伊坂幸太郎「チルドレン」を紹介します。
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チルドレン
「チルドレン」は、家庭裁判所調査官の陣内を中心とした以下の5つの短編の小説です。5つの話しは、陣内の大学時代の話しと家裁調査官となった後の話しが交互に展開されています。
①バンク
②チルドレン
③レトリーバー
④チルドレンⅡ
⑤イン
ちなみに、家庭裁判所調査官とは、家庭裁判所に係属する家事事件・少年事件について、様々な調査を行い、裁判官に調査結果を報告するのが職務です。報告を受けた裁判官は、その報告に基づき、手続の進行・調停・審判を行います。家裁調査官の仕事は、少年事件のイメージが強いですが、離婚事件で親権が問題になる事案など家事事件でも活躍しています。
直接的に、少年法やそのあり方に言及している作品ではありませんが、少年法の厳罰化を考える際に読んでおきたい一冊ということで紹介します。
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バンク
陣内の大学時代の話し。陣内とその友人の鴨居は、来店した銀行で、銀行強盗に巻き込まれる。銀行強盗は二人組でスーツ姿で粉塵を防止するマスクをしていた。人質になった鴨居たちは、両手両足を縛られ、顔には縁日で売られているお面をつけさせられていた。人質は、鴨居たちを含めて全部で12人いるようだ。
鴨居たちは、人質の中に、自分たちと同年代で盲目の青年・永瀬がいることを知る。永瀬が、犯人たちに、トイレに行きたいと要求する。さらに、目が見えないので、彼についてきてほしいと鴨居を指名する。突然、指名されて戸惑う鴨居をよそに、永瀬は、トイレの個室に入る。永瀬は、鴨居から現場の状況を聞きたかったらしい。鴨居から状況を聞いた永瀬は、銀行強盗は2人じゃないと言い出す。
チルドレン
家裁調査官の武藤は、同僚の陣内から新聞を見せられ、大事な息子が誘拐されてたらしいと言われる。武藤が新聞を見ると、紙面の写真に写っていたのは、武藤が担当した少年・木原志朗だった。
志朗は、本屋で漫画を万引きしたとして、家裁に送致された。父親と一緒に家裁に来たが、面談では、武藤の質問に父親の顔色を窺ってかほとんど答えない。父親は、大手企業の社長とのことだが、ジャージ姿で武藤の質問に「分からない」「知らん」「まあな」と答えるだけだった。面談の成果が上がらないので、武藤が志朗にもう一度、家裁に来てもらうことになると言うと、志朗がなぜか嬉しそうな顔をした。
陣内から見せられた新聞の写真には、志朗の両親も写っていたが、そこに写っていた父親は、家裁で会った父親とは、別人だった。そこで、武藤は、志朗の自宅を訪ねた。
レトリーバー
再び、陣内の大学時代の話し。永瀬とその彼女の優子は、陣内がレンタルビデオ店の店員に告白するのを見にこいと言われ、レンタルビデオ店の前で、一部始終を見届けていた。しばらくすると、首を傾げた陣内が店内から出てくる。見事に振られたようだ。
その後、永瀬たちは、駅前の高架歩道のベンチに2時間ほど座っていた。すると、陣内が世界が止まったと言い出した。陣内が言うには、周りの顔ぶれが変わっていないそうだ。陣内は、その顔ぶれを順に説明していく。
①30代半ばの男女二人組:不機嫌カップル
②鞄を抱えた仏頂面の男:鞄男
③20代後半でヘッドフォンを耳に当ててる男:ヘッドフォン男
④文庫本をずっと読んでいる女性:読書女
果たして、彼らは、なぜ2時間以上もずっと同じ場所にいるのか?
チルドレンⅡ
家事部に異動になった武藤は、裁判所を出たところで、陣内と会い、居酒屋に誘われる。はじめの内は、陣内がギターをやっているパンクバンドの話しをしていたが、その内、仕事の話しになる。武藤は、1年前のことを思い出す。職場の仲間たちと飲みに行ったところ、隣の席の中年男たちに、「少年法は甘い」などと絡まれた。そこで、ただ一人反論したのが陣内だった。駄目な奴は駄目、更生させるなんて奇跡みたいなもんだという男たちに、「俺たちの仕事はそれだよ。」「「俺たちは奇跡を起こすんだ」と陣内は言う。
その居酒屋には、陣内が担当していて、私見観察中の少年・丸川明が店員として働いていいた。陣内が試験観察にするのは珍しく、武藤は、明に気になることがあるのか?と尋ねると、陣内は、明の親父の方が重要だと言う。
その頃、武藤は、離婚調停で、離婚には合意しているが、子どもの親権をめぐって争っている大和夫婦を担当することになった。夫の大和修次は、これまでに2度離婚した後、その不倫相手と再婚していた。
陣内が、自分のバンドのライブに明を誘う。そして、陣内は、武藤も大和夫婦を誘ってライブに来いと言う。気乗りしていなかった明だったが、大和修次がライブに来るんだったら自分も行くと言い出す。陣内は、武藤に明がライブに来るように、大和修次を誘うように武藤に念押しするのだった。なぜ、明は、そんなことを言い出したのか?そして、陣内は、奇跡を起こすことができるのか?
イン
最後も陣内の大学時代の話し。永瀬と優子は、陣内がデパートの屋上でアルバイトをしていることを聞きつけた。てっきり陣内が屋上でギターを弾いていると思った永瀬たちは、陣内のギターを聞きにデパートの屋上へやってきた。しかし、デパートの屋上では、中学校のブラスバンドのステージが行われていた。
永瀬たちがしばらく屋上のベンチにいると、陣内がやって来て永瀬に話しかける。全盲の永瀬は、知り合いの足音はたいてい聞き分けることができるが、陣内が近づいていたことに気づかなかった。また、永瀬が連れている盲導犬のベスは、普段、陣内になついているのだが、その日は、陣内に寄り付こうとしない。そして、永瀬は、周りがこっちを見てるのではないかと感じ、陣内に尋ねると、何人かはこっちを見ている、俺を見てるんだろうと答えが返ってくる。すると、通りかかった家族連れが、陣内に、こんなところで休憩してていいのかと尋ねてきた。彼らは、なぜ、陣内が休憩中だと気づいたのか?永瀬は陣内が近づいてきたことに気づかなかったのか?ベスの態度がいつもと違うのはなぜなのか?
チルドレンの一連の話しで、陣内と父親との確執が断片的に語られます。この話しで、陣内が父親とケリをつけたんだということが判明します。陣内は、父親との確執にどうやってケリをつけたのでしょうか?
♪Mr.Children「ヨーイドン」(アルバム未収録)