砂漠(伊坂幸太郎・実業之日本社文庫他)

伊坂幸太郎の青春小説「砂漠」を紹介します。

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伊坂幸太郎「砂漠」(実業之日本社文庫他)

 3月になりました。3月は卒業の季節です。そんな季節に紹介したいのが,伊坂幸太郎「砂漠」です。

 入学した大学で出会った北村,西嶋,東堂,南,鳥井の5人の男女。5人が様々な出来事を経験し,絆を深め,成長していく。読み終わったら,こんな学生生活を送りたかったと思わず思ってしまう青春小説。そして,この小説に出てくる数々の西嶋語録に少なからず,心が動かされるでしょう。

 2005年に実業之日本社から単行本が発売,その後,2008年にJノベル・コレクション,2010年に新潮文庫として発売されました。さらに,2017年に実業之日本社文庫として新たにあとがきが追加されて発売されました。

簡単なあらすじ

 この小説の主な登場人物は,5人です。この小説の語り手が,何事にも冷めていて物事を俯瞰的に見る北村。北村が,ちょっと軽薄な鳥井,ちょっとした超能力が使える南,不愛想だが超絶美人の東堂,何事にも怯まず熱い西嶋。

 4月,大学の同じクラス(といいても80人くらいの講義)の飲み会で,北村は鳥井に話しかけられる。飲み会に遅れてやって来た西嶋がマイクを奪い,突然,演説を始める。西嶋の演説に完全に引いてしまうクラスメイト。が,そんな西嶋がおそらく気になった北村。その後,同じクラスに,東西南北を名字に持つ人間が集まったことに意味がないのはおかしいという西嶋の一言で,鳥井の家に集まり,麻雀をすることになった5人。ここから5人の物語が始まる。

 小説は,「春」「夏」「秋」「冬」の4部構成になっています。最後にちょっとした仕掛けが用意されていて,思わず,アッと思わされます。よーく読むと,最後の仕掛けは,随所に匂わされているので,結末を知った後にもう一度読むと,最初に読んだときと,また違った楽しみ方ができます。

 春は,5人が出会い麻雀をする。そして,北村,鳥井,西嶋の3人が合コンに行くという大学生らしい話しが展開されます。が,合コンの後の2次会のボーリングで,ホストに焚きつけられた鳥井は,賭けボーリングをする羽目になり,多額の負けを背負う。その時,東堂が現れ,ホスト礼一たちに,もう一勝負持ち掛ける。渋るホストに,負けたら自分が言うことを聞く,投げるのは鳥井じゃなくて西嶋と提案する東堂。西嶋がボーリングが下手くそなのを知っていたホストがその提案を飲む。果たして,西嶋は,この絶体絶命のピンチを救えるのか?

 ひょんなことから,街中で「大統領か?」と尋ねて人を襲うプレジデントマン(と西嶋が勝手に呼んでいる)という通り魔が,ある家を襲うかもしれないという情報を入手した鳥井は,おもしろそうだから,その家を見張ろうと言い出す。北村,西嶋,鳥井の3人でその家を見張っていると,その家の前にRV車が停まり,RV車から降りた男たちが塀を登って家へ侵入していく。空き巣だとわかった西嶋と北村は,その家の前で大声で叫び,インターホンを押す。逃げ出した男たちはRV車に乗り込み,鳥井をはねてしまう。そのRV車の運転手はホスト礼一だった。

 この事故で左手を失った鳥井は,心を閉ざしてしまう。退院した鳥井の家で麻雀をやろうと提案する西嶋,何やら秘策があるらしい。果たして,西嶋は,鳥井の心を開かせることができるのか?

 学園祭のシーズン。学際の実行委員に誘われ企画会議を見に行った北村。評論家の麻生が,超能力者の鷲尾の超能力を暴くというイベントを企画をするとのこと。麻生の言動に何だか腹が立つ北村。麻生にあった西嶋も麻生に腹を立てる。北村と西嶋は,麻生に一泡吹かようと,鷲尾に接触する。西嶋の伝手で興信所を使って麻生の行動を調査し,鷲尾にその調査結果を渡し,麻生の行動をあてるという計画を立てる。しかし,麻生と鷲尾が裏で繋がっていることが判明する。すっかりヤル気をなくした北村と西嶋。学園祭当日,そのイベントに乱入者が現れて…

 プレジデントマンに襲われてしまった北村。事情聴取で訪れた警察署えホスト礼一の仲間のホスト純を見かけ,その後を付けた北村は,ホスト純が住むマンションを見つける。西嶋たちを集めた北村は,ホスト純をきっかけにしてホスト礼一を見つけて決着をつけようと言い出す。

 ホスト純のマンションのオートロックを突破した北村,西嶋,東堂は,ホスト礼一が空き巣を計画しているであろうことをつかむ。当日,空き巣の被害に遭うかもしれない家を張り込んだ北村たち。しかし,ホスト礼一たちは現れなかった。

 西嶋たちと別れた北村は,自宅近くの廃業した医院の前で鳥井と南に遭う。その廃医院からホスト礼一たちが出てくる。果たして,北村はたちは決着を付けれたのか?

世界はきっと変えられる

 砂漠には,数々の名言が散りばめられていますが,その中から冒頭と最後に出てくる名言を紹介して,終わりにしようと思います。

 まずは,西嶋が言い放ったこの小説のタイトルの由来にもなってる名言です。「俺たちがその気になればね その気になればね,砂漠に雪を降らすことだって,余裕でできるんですよ」

 砂漠に雪を降らせる=世界を変えるということ。西嶋の名言は,他にもあるんですが,やっぱこれでしょうということで紹介します。

 そして,最後に出てくる北村たちの大学の学長の名言です。「学生時代を思い出して,懐かしがるのは構わないが,あの時は良かったな,オアシスだったな,と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」

 読んだ時に,ドキッとする一言,胸にチクチクささるような。そう思わないために,オアシスにいる間に砂漠に雪を降らせることだって余裕でできるんだぜというマインドをしっかりと身につけておかないとダメなんですね,きっと。

 何度も書いてますが,他にも数々の名言が散りばめられていて,この小説を読み終わったら,人生観がちょと変わった,なんてことは,まるでない(このフレーズも意味があります。)。

♪Mr.Children「365日」(アルバム:SENSE収録)

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