映画化もされた伊坂幸太郎の「アイネクライネナハトムジーク」を紹介します。
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アイネクライネナハトムジーク
アイネクライネナハトムジークは,短編集です。以下の6つの物語から構成されています。
①アイネクライネ
②ライトヘビー
③ドクメンタ
④ルックスライク
⑤メイクアップ
⑥ナハトムジーク
6つの物語は,時間軸が現在,過去とバラバラなんですが,実は,ある人物を中心に繋がっています。読んでいくと,意外な人が,あっ,あいつか!?みたいな発見があります。よくドラマの登場人物の相関図が掲載されていたりしますが,自分で相関図を作ると,面白いと思います。
①アイネクライネ
佐藤は,日本人ボクサーがヘビー級のタイトルマッチを行っている日に,街頭アンケートを集めていた。今時,街頭アンケートを行っているのは,会社から命じられたからなのだが,優秀なシステム管理者で妻に逃げられた藤間が動揺したことがきっかけで,データの一部が消えてしまったからだった。
佐藤は,アンケートに協力してもらうため,ある女性に声をかける。快諾した女性がアンケートに記入していると,手の甲に「シャンプー」と書かれているのを目にし,佐藤は思わず「シャンプー」と言ってしまう。女性は,「今日,安いんですよ。忘れないように」と恥ずかしがることもなく,淡々と説明した。女性のバッグには,有名なアニメのキャラクターのストラップがぶら下がっていた。
翌週の日曜日,佐藤は大学時代の友人の織田一真・由美夫妻のマンションを訪ねる。出会いがあるだのないだの他愛のない話しをし,佐藤が帰ろうと,立ち上がると,居間の隅に,アンケートに答えた女性のストラップと同じキャラクターの人形を見つける。織田夫妻に,先日のアンケートの話しをすると,織田由美から「出会いじゃないの」と言われる。もう会わないと言いつつ,佐藤はそのキャラクターの出てくるDVDを織田夫妻から借りる。
翌日,佐藤は,藤間が妻と1時間くらい話したと嬉しそう話すのを聞く。佐藤が藤間に妻との出会いを聞くと,妻が落とした財布を藤間が拾ったのが出会いだという。
果たして,佐藤の出会いは?そして,藤間の夫婦関係は?
②ライトヘビー
美容師をしている美奈子は,客の板橋香澄から彼氏がいないのなら,うちの弟どう?弟に電話番号教えていい?と言われる。美奈子は,やんわりと断ったものの,ある夜,その弟から電話がかかってくる。弟は,板橋香澄から美奈子が用があると言っているから電話しろと言われて,電話したらしい。
美奈子は,友人の日高亮一と山田寛子と居酒屋に行った帰り,斉藤さんのところへ立ち寄った。斉藤さんは,路上でテーブルにノートパソコンを置き商売をしている男性だ。斉藤さんに100円を渡し,自分の気分や気持ちを話すと,斉藤さんがパソコンを操作し,曲の一部を流す。不思議なことにその歌詞・メロディーが,客の気分に妙にマッチしていて,愉快な気持ちになるのだった。
その後,美奈子と板橋香澄の弟の学との電話だけのやり取りは続いた。電話だけの交流で互いの距離を近づけようとどちらかが言い出すことなく,ダラダラと続いていた。そんなある日,美奈子は,板橋香澄の自宅に招待される。ちょうど,ヘビー級の世界戦のある日だ。この世界戦で挑戦者が勝ったら,学は美奈子に告白するつもりだという。他力本願だと困惑する美奈子だったが…美奈子は,板橋香澄の自宅でヘビー級の世界戦を観戦することになる。
③ドクメンタ
①アイネクライネで妻が娘と一緒に出ていってしまった藤間の話し。藤間の妻は,藤間がハサミをちゃんとしまわなかったことをきかっけに,娘と一緒に出ていき,その後,離婚が成立する。そんな藤間は,5年に一度の運転免許の更新時期を迎えていた。テーブルに置いた免許証を眺め,藤間はある女性のことを思い出していた。
藤間がその女性に出会ったのは,10年前,29歳の新婚の時だった。列に並んでいた藤間は,ブースから出てきた赤ん坊を抱いた女性に眼鏡を貸してほしいと,眼鏡をとられる。免許の更新期限が今日までなのだが,いつのまにか視力が落ちていて,眼鏡を作りに行く時間がないという。その後,藤間は,その女性と少し話しをする。すると,お互い,免許の更新期限の最後の日曜日だったということがわかる。
その5年後,藤間は,運転免許センターでその女性と再会する。女性は,夫に通帳の記帳をしないなど大雑把な性格に愛想をつかされ別居しているという。藤間は,他人事とは思えないと言ったものの,この時点では他人事であった。
さらに5年経ち,藤間は,今回も更新期限ぎりぎりの日曜日に免許センターに行こうと決める。そんな最中,娘から藤間に電話があり,通帳の記帳をちゃんとしてるか,何年も溜まってないかと言われる。
免許センターに行った藤間が,女性を探していると,その女性から声をかけられた。もっとも,女性はすでに免許の更新を済ませていて,アウトレットモールの帰りに通りかかったので,藤間が来てるかもと思い,立ち寄ったらしかった。女性は,藤間に報告があると言い,通帳の記帳の話しを始める。
女性の夫婦関係はどうなったのか?そして,記帳の話しとは?
④ルックスライク
高校の英語教師の深堀先生は,”He looks like his father.”と”He is just like his father.”の違いは何か?という授業をしていた。深堀先生は,生徒の久留米和人を指名する。
場面が変わって,ファミレスの店員の笹塚朱美は,客の高齢男性にクレームをつけられ,絡まれていた。店内の空気がどんどん悪くなっていく中,笹塚朱美と同年代の男性が高齢男性に話しかける。「こちらの方がどなたの娘さんかご存知の上で,そういう風に言ってらっしゃるんですか?」と。すると高齢男性がどんどんトーンダウンしていき,笹塚朱美に絡まなくなった。この出来事をきっかけに,笹塚朱美とその男性は交際することになる。
また,場面が変わって,久留米和人は,織田美緒に相談があると声をかけられる。織田美緒は,入学当初から美人だと評判になり,男子全員が,いつ誰が,彼女と仲良くなるのか?気にかけていた。織田美緒の相談とは,仙台駅の地下駐輪場に一緒に行ってほしいというもので,他人の駐輪チケットのシールを剥がして自分の自転車に貼る常習犯がいるらしかった。
二人が駐輪場で見張っていると,駐輪チケットを他人の自転車から剥がして,自分の自転車のサドルに貼った男が現れた。織田美緒は,その男の後と追い,「おじさん」と呼びかけた。他人の駐輪チケットを剥がしたと指摘するも,男は証拠があるのか?と開き直る。すると,そこへ深堀先生が通りかかり,その男に,「こちらがどなたの娘さんか,ご存知で喋っていらっしゃるんですか?」と話しかける。
そのセリフは,笹塚朱美が助けられた際のセリフで,深堀先生は,なぜ,そのセリフを知ってるのか?
⑤メイクアップ
化粧品会社に勤務する窪田結衣は,同期の佳織に,ひょんなきっかけから十代の頃はいじめられていたことを話す。結衣にとって,佳織は,夫と除き安心して話しができる数少ない存在だった。結衣は,佳織に高校の頃はクラスのカーストの最下層だったことや,発表会でパフォーマンスする楽曲を直前で変更になったことを知らされなかったことなどを話した。
その後,新商品の広告コンペに,急遽,別の大手広告会社も参入することになり,結衣は,上司の山田とともに,先方の担当者と打合せをする。先方の担当者の一人の小久保亜季は,結衣の高校時代にクラスの中心人物として君臨していた女性だった。結衣が佳織にそのことを話すと,復讐のチャンスが来たと活き活きした顔つきになっていたが,結衣は乗り気ではない。
会社の帰りに,結衣は小久保亜季と再会し,半ば強引に合コンに参加させられる。合コンで,小久保亜季は自分が気になる男性と言い感じになるため,偽情報を流す。この方法は,小久保亜季が高校時代に,野球部の男子と仲良くなるために取ったのと同じやり方だった。
小久保亜季は,その男性とうまくいくのか?結衣のことに気づくのか?そして,高校時代の野球部の男子との顛末は?
⑥ナハトムジーク
最後の物語であり,アイネクライネナハトムジーク全体のネタバレになります。この話しで,すべての物語が繋がっているのだということがわかります。
ナハトムジーク自体は,①現在,②19年前,③9年前の3つの時間軸で展開されています。美奈子の話し,学の話し,織田由美の話し,織田美緒の話し,佐藤の話し,藤間の話し,藤間の娘の話しが一つに繋がっていきます。ネタバレせずにあらすじを紹介するのは難しいので,これで終わります。
♪Mr.Children「one two three」(アルバム:IT’S A WONDERFUL WORLD収録)