伊坂幸太郎の短編集ジャイロスコープを紹介します。
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ジャイロスコープ(伊坂幸太郎・新潮文庫)
「サンタクロースが煙突から入る理由を考えてみた」でサンタクロースが起こした奇跡の話しとしてジャイロスコープに収録されている「一人では無理がある」を紹介しました。なので,今回は,ジャイロスコープ全体を紹介しようと思います。
ジャイロスコープは,短編集で,以下の7つの短編と著者の伊坂幸太郎のちょっとしたインタビューが載っています。
①浜田少年ホントスカ
②ギア
③二月下旬から三月上旬
④if
⑤一人では無理がある
⑥彗星さんたち
⑦後ろの声がうるさい
浜田少年ホントスカ
蝦蟇倉市にやってきた浜田は,スーパーの駐車場のプレハブで相談屋を営む稲垣と出会う。浜田は,稲垣からアシスタントとにならないかと持ち掛けられ,アシスタントになる。アシスタントといっても仕事は,稲垣が客と応対している間,その様子を裏の部屋でモニターで監視するというもの。浜田が了承すると,稲垣は浜田に一週間後に相談にやってくる客の応対を助手としてではなく,自分の代役としてやってほしいと頼む。そして,1週間後,相談屋に訪れたのは,稲垣自身だった。
ギア
荒野の大地を走るワゴン,蓬田はそのワゴンに乗せられている。数か月で町が消えてしまい,五反田,品川,銀座と進んでその先は荒野が広がっている。ワゴンの車内には壊れた街を歩いている時に運転手に拾われた乗客が乗っている。
ワゴンの運転手が一匹見たら十匹いるというセミンゴの話しをし出す。昆虫ではないが節足動物で,光沢のあるメタリックの長細い球体(水の雫を逆さにした感じ)に足が生えている。体長は約3メートル,体重100キログラム前後。街が破壊されているのは,このセミンゴのせいだという。
二月下旬から三月上旬
慈郎には小学4年生の時,突如現れた坂本ジョンという友達がいる。坂本ジョンとの付き合いは慈郎が社会人になっても続いている。坂本ジョンは他人の干支に気にしていて,その年の干支を1年間妙に大事にしていた。
慈郎が車運転中,突然,坂本ジョンに声をかけられたり,いつの間にかいなくなったり,また,自宅で急に妻に声をかけられたり,姿が見えなくなったりといった描写がある。
慈郎と坂本ジョンの2月下旬から3月上旬にかけての出来事を描く,どこまでが現実でどこからが幻想なのか?2月下旬から3月上旬の一連の出来事に隠されたちょっとした仕掛けとは?
if
もしもあの時,ああしていたらと誰しも一度は思ったことがあるのではないでしょうか?主人公の山本ももちろんその一人。AとBの2つのパートから構成されている話し。
【A】山本は朝,通勤のためバス停に向かう。バス停の向かいで周囲をきょろきょろ見回す腰の曲がった老婆を見かける。声をかけようとしたところ,バスが来たのが目に入ったので,山本は老婆に声をかけずにバスに乗る。バス内の乗客の一人が女性の乗客に刃物を突き付け,前方へ移動していく。その男は,運転手にバスを止めさせ,男を全員バスから降りるように言う。山本をはじめとする男性乗客は周囲を見渡し,周りの反応をうかがうも結局,無抵抗にバスを降りる。
その後,山本に後悔が押し寄せる。どうして犯人に従ったのか?そもそも老婆に声をかけてれば,バスに乗り遅れたのでは?
【B】山本は朝,通勤のためバス停に向かう。バス停の向かいで周囲をきょろきょろ見回す腰の曲がった老婆を見かける。近づいてくるバスが目に入ったが,老婆に声をかけ,コンビニの場所を教える。バスはまだ止まったままで,山本が慌てて横断歩道を渡る。バスの運転手と目が合い,バスは停車したまま,山本がバスに乗った瞬間に扉が閉まった。バス内の乗客の一人が女性の乗客に刃物を突き付け,前方へ移動していく。その男は,運転手にバスを止めさせ,男を全員バスから降りるように言う…
果たして,山本の決断は?そして,この話しの結末は?
一人では無理がある
何らかの事情で親や親戚などからクリスマスプレゼントがもらえない子どもにプレゼントを配るというサンタクロースの会社の話し。
この会社は,①プレゼントを選んで届け先の情報を管理する部署,②プレゼントの手配を玩具メーカーと交渉する部署,③天候を分析する部署,④トナカイのコンディションを管理する部署,⑤トナカイの橇を操縦しプレゼントを届けるアンカーと呼ばれる部署など様々な部署が存在する。
松田陽一は,上記①の部署のエリアリーダーだが,ミスが多く,プレゼントの取り間違いが多く,そのミスは社内でも笑い話にされるほど。クリスマスプレゼントをめぐるクリスマスに起こった奇跡の物語。
彗星さんたち
新幹線の車内清掃員の人たちの話し。ある日,主任の鶴田さんが脳溢血で倒れてしまう。鶴田さん不在の日の車内清掃で,清掃員たちは各車両で,印象深い乗客を見かける。清掃後,それらの乗客の話しを聞いていた清掃員の市川君は,ある一人の女性の人生が各車両で展開されているのでは?と言い出して。
後ろの声がうるさい
鍋でいうと,最後の雑炊的なすべての短編を締めくくる話し。東北新幹線の車内で,後ろに座っている記者と名乗る若者と中年の男性2人の乗客の話しが気になり,ついつい聞いてしまう私。この人は,あぁと思う人たちが出てくる。そして,私の後ろに座っていた2人の乗客の正体は?
♪Mr.Children「箒星」(アルバム:HOME収録)