コミカライズされ,さらにアニメ化もされた新感覚のミステリー「虚構推理」を紹介します。
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虚構推理(城平京・講談社文庫他)
虚構推理は,小説家・漫画原作者の城平京の小説です。第12回本格ミステリー大賞受賞作です。講談社ノベルスから刊行され,その後,講談社文庫,講談社タイガから文庫が刊行されています。
2015年にコミカライズ化され,さらに,2020年1月にアニメ化され,アニメ2期の制作も発表されている話題の(?)作品です。ここでは,漫画・アニメではなく,小説の方を紹介します。
主な登場人物
岩永琴子:本作の主人公,11歳の時,妖怪・あやかし・妖異・魔と呼ばれるものたちに2週間ほど,さらわれ,それらの知恵の神となる。知恵の神の証として,右眼をくりぬかれ,左足をひざ下から切断され,一眼一足の身となる。
桜川九郎:岩永の恋人。11歳の時,祖母に,未来を予言する「くだん」と不死身の肉体をもつ「人魚」の肉を食べさせられる。そのせいで,不死身の肉体と未来決定能力を持つ。妖怪たちからは,くだんと人魚と人間が混ざり合った恐ろしいものとして恐れられている。
弓原紗季:九郎の元婚約者。婚前旅行先で九郎の能力を知ってしまい破局に至る。現在は,真倉坂市の真倉坂署に配属されている警察官。
あらすじ
妖怪たちの知恵の神である岩永琴子の下に,妖怪たちから相談が持ち込まれる。それは,真倉坂市内で,鋼人七瀬と呼ばれる亡霊が暴れているので,何とかしてほしいというものだった。
岩永が真倉坂市に赴き,鋼人七瀬と対峙していると,偶然,通りかかった紗季に遭遇する。鋼人七瀬に対処するには,警察の情報が必要と考えた岩永は,渋々ながら,紗季に協力を要請する。
岩永が紗季と合流しようとしたところ,再び,鋼人七瀬が出現する。そこで岩永が目撃したのは,鋼人七瀬と格闘する九郎の姿だった。九郎は,独自に動き,真倉坂市に赴き,鋼人七瀬と遭遇したのだった。そこへ紗季も現れ,3人は合流し,鋼人七瀬に対処するための策を練る。
鋼人七瀬の正体
鋼人七瀬という亡霊は,アイドル衣装を着て,顔がつぶれたアイドルだった七瀬かりんが鉄骨を振り回すという姿をしていた。そのイメージや情報は,インターネット上の「鋼人七瀬まとめサイト」に詳細にまとめられていた。
実は,その「鋼人七瀬まとめサイト」がすべての元凶であった。亡霊がいたからまとめサイトができたのではなく,まとめサイトがあるから亡霊が生まれたのだという。鋼人七瀬は,想像上の怪物だったのだ。そして,この「鋼人七瀬まとめサイト」と運営していたのは,九郎の従姉妹の桜川六花だと判明する。九郎の従姉妹ということは,六花もまた,不死身の不死身の肉体と未来決定能力を持っている。六花は,未来決定能力を用いて,鋼人七瀬という亡霊が存在する未来を決定していたのだった。
虚構争奪戦
鋼人七瀬は,人の想像力によって生み出された亡霊なので,鋼人七瀬を消滅させるには,鋼人七瀬は存在しないという事実を人々に信じこませ,人の想像力を失わせるしかなかった。そこで,岩永は,鋼人七瀬は存在しないという虚構による仮説を組み立て,「鋼人七瀬まとめサイト」に展開することで,鋼人七瀬を消滅させようとする。一方,鋼人七瀬の消滅を阻止するため,立花は岩永の仮説を否定していく。ここに,岩永と立花による虚構争奪戦が始まる。六花は何のために想像上の怪物を生み出したのか?岩永は,いかなる虚構を築き上げるのか?
真実ではなく,虚構を信じさせる
ミステリーといえば,誰が犯人なのか?とか,どうやって犯行を行ったのか?といった真実を明らかにするのが通常です。しかし,この小説は,真実を明らかにする話しではありません。むしろ,真実とは異なる事実を真実として信じ込ませるという話しで,新感覚のミステリーです。妖怪や亡霊が出てきますが,おどろおどろしいわけではなく,世界観の一つ程度のオプションにとどまります。
コミカライズ,アニメ化も
冒頭でも触れましたが,小説を原作として,コミカライズ・アニメ化もされました。漫画版の方は,登場人物のキャラが小説よりも強調されていて,魅力的に書かれています。
♪Mr.Children「フェイク」(アルバム:HOME収録)