鈍器本が流行っているという記事で思い出したのが,東野圭吾の短編「超長編小説殺人事件」です
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超長編小説殺人事件
鈍器本が流行っているというニュース記事に触発されて,「鈍器本が流行っているので,法律書の鈍器本をいくつか挙げておく」を書きました。書いてて,ふと,思い出した小説があります。それは,東野圭吾の「超長編小説殺人事件」です。
「超長編小説殺人事件」は,東野圭吾の短編集「超・殺人事件」に収録されている短編です。「超・殺人事件」は,出版業界や読者を皮肉るブラックユーモアな作品です。
あらすじ
「超長編小説殺人事件」のあらすじを簡単に紹介します。「超長編小説殺人事件」というタイトルですが,誰か死ぬわけではありません。
主人公は,小説家の葛原万太郎です。葛原は,3年ぶりの書き下ろし小説「砂の焦点」を書き終えたところ,担当編集小木からページ数を増やせと言われる。小木が言うには,最近の話題作の傾向は,弁当箱みたいに分厚い本で,原稿用紙数千枚はザラだという。
そこで,小木は,現在の内容を少しずつ増やしてページ数を増やせと言う。葛原は間延びした小説になると心配する。しかし,小木は,読者は長ったらしい小説に慣れている,むしろ単価と分量を気にしていると押し切る。
その後,葛原は,何とかページ数を水増しし,原稿用紙1800枚超の「砂の焦点」を発売する。間延びした小説を前に,葛原は,小木に文句を言うが,読者にとって,内容は関係ない,とにかく枚数だと言い返される。
小木は,まだ,納得いっていない葛原を書店に連れていく。書店の新刊コーナーに並んだ本の帯には,「怒涛の2300枚」等こぞって枚数を競う文句であふれていた。さらに,書店の棚の分類も本のページ数ごとに分類されていた。
その後,葛原は小木と高校野球を舞台にした小説「曲球」の打合せをする。小木は,情報小説として業界の内実とかを織り込み3000枚を書けと葛原に言う。その後,葛原は,小木から送られた資料をもとに,甲子園や高校野球の説明,甲子園のマウンドがいかに暑いかといった情報を盛り込んだ3053枚の小説を書きあげた。
「曲球」を書き終えた葛原は,小木から同時期に油壷という作家が同じ題材の小説を発売すると聞かされる。小木は,インパクトを出すため,「曲球」をとにかく分厚い本にするという,小木の計算では,厚さ15センチの本になる予定だ。
その後,葛原の本と油壷の本で,厚さ勝負が始まる。小木から葛原に,紙を変えるだの,表紙を変えるだの連絡が数日おきにかかってきた。
「曲球」の発売日に,葛原は小木から出版界の原稿の分量の表記のルールが変わったと聞かされる。というのも,400字詰め原稿用紙〇枚という表記だと,最近の若い人は400字詰め原稿用紙を見たことがないので,すごさが伝わらないのだという。ただ,枚数に変わる表記はしてあるという。
葛原が書店で自分の本を確認すると,巨大なサイコロのような本を見つける。その帯には,「命がけの8.7キログラム!」と記載されていた。
まとめ的なもの
以上,ネタバレしちゃってる簡単なあらすじです。この小説は,読者に対する皮肉なんですネ。どうせ,お前ら,本の中身なんかどうでもいいんだろ的な。出版社の文句や書店のポップだったり,なんとか賞受賞とかに,すぐ飛びつくんだろみたいな。さて,みなさんは,笑い飛ばせるのか?それとも,思わずドキッとしてしまうのか?どっちですか?
♪Mr.Children「傘の下の君に告ぐ」(アルバム:BOLERO収録)