東海道新幹線の運賃は取り過ぎ?国鉄を訴えたが…

国鉄時代に、東海道新幹線の運賃が実際の距離じゃなくて東海道本線の距離によって算定されてるのは不当だ!という訴訟が提起されたことがあります。

最高裁昭和61年3月28日判決

 東海道新幹線の乗客が、東海道新幹線の運賃が実際の距離ではなく、東海道本線の距離を元に計算されてるのは、おかしいじゃないかということで、国鉄に対して、東海道新幹線の運賃と実際の距離で計算した運賃の差額200円の返還を求めた訴訟です。

東海道新幹線は東海道本線

 JRの運賃は、営業キロに従って、計算するのが原則です(旅客営業規則77条)。この営業キロは、基本的には、実際の距離とイコールです(旅客営業規則14条)。

 ということは、東海道新幹線の運賃を計算する場合も営業キロ、つまり、実際の距離で計算することになりそうです。しかし、東海道新幹線の東京-新大阪間は、在来線の東海道本線と同じという扱いになっています(旅客営業規則3条)。

 しかし、東海道新幹線と東海道本線でまったく同じルートに線路があるわけではありません。後からできた東海道新幹線の方が、より直線的に線路が敷かれています。東海道新幹線の路線距離は、515.4kmです。東海道本線に比べて、距離が短くなっています。でも、営業キロは、東海道本線と同じ552.6kmです。つまり、東海道新幹線の運賃は、実際の距離に比べて若干、割高に設定されているわけです。

 この取扱いがおかしいじゃないか!?という訴訟が提起されました。判決文によると、実際の距離と営業キロはで計算した運賃の差額は200円だったみたいです。200円で最高裁か…ちなみに、東京-新大阪を東海道新幹線で何往復したから、合計で〇万円という請求じゃなくて、ホントに200円の請求でした。

国鉄の主張

 原告、つまり、乗客の主張は、単純で、東海道新幹線の実際の距離より営業キロが長く設定されているのは、おかしいという主張です。これに対する国鉄の主張は、以下のとおりです。

 ①新幹線は、在来線の線路増設として建設されたものであって、在来線と高度の代替性がある、つまり、新幹線と在来線は同じ路線だということ。

 ②運賃は、場所的移動の対価であるから、新幹線と在来線の同一区間の運賃は同一金額であるのが適当である。

 ③新幹線の営業キロと在来線の営業キロとを別立てにすると、普通乗車券の発売業務、乗り換え・変更手続が煩雑になり、人件費等のコストが増大する。

1審

 1審の東京地裁では、乗客である原告の勝訴でした。国鉄の主張を以下のように、退けています。

 ①新幹線と在来線は相互乗り入れはできず、完全に独立した路線となっている。東海道本線の長距離列車が廃止され、乗客は東海道新幹線に乗る以外の選択肢はなく、高度の代替性なんかない。

 ②新横浜、岐阜羽島は在来線と接続してないので、同一区間の場所的移動というのは存在しない。同一区間の運賃であっても経路が異なられば、運賃が違うのは当然(旅客営業規則67条)。

 ③発売業務、乗り換え・変更手続やコストの問題は新線が建設される度に常に生じる問題で、運賃収入の中でやりくりすればいい。できないのであれば、運賃法を改正して増額すればいいじゃない。

控訴審

 控訴審の東京高裁では、国鉄が逆転勝訴となりました。

 新幹線の実測キロによらず、在来線の営業キロを用いることにしたことは、なんだかんだで、国鉄の裁量の範囲内なのでOKという判断です。差額が200円なので、乗客に多大な負担をかけないということが、ポイントとなったと考えられます。

最高裁

 最高裁も東京高裁と同様、国鉄の裁量の範囲内という判断でした。

♪Mr.Children「fantasy」(アルバム:REFLECTION {Naked}収録)

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